「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第316回

自己資本造成共済を提案します

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤伸夫

 

変化の激しい時代、同業種でも発展する企業と苦境から抜け出せない企業とに分かれてしまう「K字回復」の時代、経営を人任せにしない「経営の内製化」がポイントで、そのためには主語を自社に戻す必要があるとお伝えしたところです。今回はこの小シリーズの最後として、財務的に「主語を自分にする」方法を考えます。



経営の内製化としての「経営力強化」

先ほど、同業種でも発展する企業と苦境から抜け出せない企業とに分かれるK字回復現象が見られるとお話しました。なぜ、この状況になってしまうのか?

もちろん原因は1つではなく、逆に多くの要因が関係していますが、1つ言えるのは「自ら考えて経営する」ことが重要である、ということです。2025年中小企業白書・小規模企業白書の第2部タイトルは「新たな時代に挑む中小企業の経営力と成長戦略」、難しい経営環境下で成長を目指すには経営力がカギとなると示唆しています。


白書が指摘する経営力は経営戦略、経営の透明性・開放性、ガバナンス体制、人材戦略、経営者の成長意欲でした。これらは、前回までお伝えした「経営の内製化」を総論とすると、各論に相当すると考えられます。

もちろん「経営力」は白書が指摘する範囲にとどまらず、例えば製造や販売など本業について的確にマネジメントすることや、現状を把握する会計や投資を可能にしてキャッシュを回していく財務なども含まれます。一方で白書の作成では数多くの中小企業の現状を観察・分析したケーススタディをベースにしており、最大公約数として上に挙げた項目が挙げられたのだと考えられます。


白書で注目されるのは「経営者の成長意欲」です。経営力と言うとリーダーシップや経営の仕組み構築などに目が向きますが、白書はその源泉に着目しています。

現実の経営現場でも「良い会社にしたい、儲かる会社になって成長し、社員や顧客だけでなく取引先や地域社会にまで繁栄の環を広げていきたい」との経営者の意欲が、理想を目指して進み、到達できるか否かに大きくかかわっていると感じられます。その意味では経営の開放性やガバナンス体制なども、経営者の想いを実現する道筋形成という趣旨もあるのではないかと感じられます。



自己資本造成により「経営の主語を自分にする」

このように考えると、経営力には実際に発揮される力だけでなく、その源泉が必要だし、源泉のエネルギーを伝えて現実化する経路も必要だと気が付きます。


ここで指摘したいのが、企業の財務体質です。成長を目指すにあたり多くの企業は投資を必要とします。新たな機械設備やM&Aなどに投資した上で準備期間や助走期間も経て収益に繋げていくには、日常業務を回していく運転資金をはるかに上回る金額が必要になります。

自社で準備する他、金融機関などからの調達も必要でしょう。いずれの場合でもポイントになるのは自己資本です。今まで以上に自己資本を厚くしていく必要があるのです。


一方で中小企業は過小資本であると指摘されています。小規模ゆえに大企業のような生産性を実現できないことも原因の一つですが、自己資本造成への動機付けも問題だと感じられます。

自己資本の造成には最終利益を出し、税金を払った上で積み増す必要がありますが、少なからぬ企業・経営者が自己資本ではなく税金の方に目を向けてしまい、結果的に自己資本造成が実現しないのです。


これには啓蒙活動など根本的な取組みが必要ですが、昨年から100億円宣言政策が推進され、今後に拡張して10億宣言政策が予定されているなら、それを目指す新たな政策を準備する道も考えられます。

例えば「自己資本造成共済」です。現在運用されている「経営セーフティ共済(倒産防止共済)」と同様に共済掛金は経費処理できることとして現在の税負担を軽減する一方で、将来の自己資本造成の約束・実施を促す制度設計とします。対象企業を10億宣言企業に限定、自己資本造成も計画に盛り込み、メインバンクによる伴走支援を制度化すれば、着実に財務体質強化に繋がると考えられます。


国税庁「会社標本調査」によると全企業約300万社のうち資本金1,000万円以下は262万者、一方で10億宣言の対象企業は約60万者とされており、少なからぬ企業が財務面での制約により10億企業への挑戦が難しくなっていると考えられます。

本来ならば経営者の意識改革を優先すべきと考えられますが、一方で日本を成長の軌道に乗せるため、中小企業の発展を政策的に促すことも重要です。是非、政策に取り入れてもらいたいと考えます。

(会社標本調査概要)https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/kaishahyohon2024/pdf/kekka.pdf




本コラムの印刷版を用意しています


本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>

https://www.innovations-i.com/shien/id/panf_id/?id=868



【筆者へのご相談等はこちらから】

https://stratecutions.jp/contacts/



<日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル>

https://www.amazon.co.jp/dp/B0DYDL46H6/




なお、冒頭の写真はChatGPTにより作成したものです。

 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

『日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル』

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

あわせて読みたい

御社の情報も、このように発信しませんか? 掲載をご希望の方はこちら

「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

同じカテゴリのコラム

おすすめコンテンツ

商品・サービスのビジネスデータベース

bizDB

あなたのビジネスを「円滑にする・強化する・飛躍させる」商品・サービスが見つかるコンテンツ

新聞社が教える

プレスリリースの書き方

記者はどのような視点でプレスリリースに目を通し、新聞に掲載するまでに至るのでしょうか? 新聞社の目線で、プレスリリースの書き方をお教えします。

広報機能を強化しませんか?

広報(Public Relations)とは?

広報は、企業と社会の良好な関係を築くための継続的なコミュニケーション活動です。広報の役割や位置づけ、広報部門の設置から強化まで、幅広く解説します。