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「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第258回

「コロナ後」を生き抜くために

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



前月から、「平時に戻った」との言葉をきっかけに最近の中小企業向け金融環境を子細に検討しています。初回は2020年以降のコロナ対応時期が「特異期」だったこと、そして「それ以前」に戻ることの意味を確認(ゾンビ企業は積極的に支援しない)、2回目は「信用補完制度見直し」の意味(金融機関が信用保証を利用しようとする時、予め事業性評価が必要になる場合がある)、3回目は2022年3月発表「中小企業活性化パッケージ」、及び9月発表「中小企業活性化パッケージNEXT(以下「活性化パッケージ」と言います)」の意義(金融支援から経営支援へ軸足を移行)を検討しました。今回は以上の動きをもとにした、中小企業の対応について考えます。



セーフティネットの概念が変わった

活性化パッケージは、新型コロナウイルス感染症蔓延の影響による未曽有の経済インシデント(需要の収縮、供給活動の制限、仕入れ価格等の暴騰)に見舞われた中小企業への支援の軸足が、金融支援から経営支援に移行しつつあると示唆していると思われます。経営支援も「収益力改善フェーズ」、「事業再生フェーズ」及び「再チャレンジフェーズ」に細分化されました。これは、セーフティネットが3層に設けられたと解釈できます。金融支援を入れると4層が準備されているのです。


こう考えると、セーフティネットとしての金融支援の位置付けや役割が大きく変化することが理解できます。経営支援がない(あるいは、あってもあまり重きを置かれていない)場合は、金融支援は「万能薬」の位置付け・役割を期待されるでしょう。それで効果がなければ、もっと多く投与されるという構図になると考えられます。


しかし二の矢三の矢(第2の網、第3の網)があるなら、その構図は成り立ちません。もともと金融支援は速効性はあるが究極目標「企業の立ち直り」への影響度は未知数です(プラス効果がある場合もあれば、お金があると安心・油断するネガティブな効果がある場合もある)。第1の網で掬えなかったら次の網に期待するという構図になるでしょう。セーフティネットの概念が変わったと言えるかも知れません。



セーフティネット多層化時代の泳ぎ方

セーフティネットの多層化は、これまで長年に渡って中小企業支援、それも主に金融支援のフィールドで働いてきた筆者にとっては納得感があります。リーマンショック時に手厚い金融支援を受けた後、多くの企業は立ち直りましたが、少なからぬ企業は窮状から抜け出ることができませんでした。コロナ前に筆者は、このような企業への計画再策定支援(多くの場合、費用負担は公的負担あるいは金融機関負担)に携わっていましたが、そこで感じたのは「借入時に改善の方向性からアクションプランまでしっかりと計画し、実行を心に決めていたら状況は違っていただろうに。ここまで会社がシビアな状況に陥ってしまうと、できることは少ない」ということです。


同じように感じてか、リーマンショック時には特異時としての金融支援スタートから約3年半後に「中小企業金融円滑化法の最終延長を踏まえた中小企業の経営支援のための政策パッケージ」が公表されましたが、今回は2年で活性化パッケージが公表されました。企業がまだ元気なうちに是非、経営改善に本腰を入れて欲しいとの思いからだと感じています。


以上から、今の時代の泳ぎ方を考えてみましょう。コロナ禍から完全には脱することができず、連続赤字で自己資本過少あるいは債務超過に陥った状況にもかかわらず、親身に支援してくれる金融機関があって資金調達できた企業は是非、この幸運を無駄にしないように、事業改善に取り組んで頂きたいと思います。それをするか否かで、たぶん数年後に訪れる再度の資金調達(資金繰り返済資金の再調達)に大きな影響が出ます。


もし資金調達できなかった場合には是非、経営支援を申し込んで下さい。金融機関への相談が難しいようなら、地域の活性化協議会が親身に相談に乗ってくれます。「それは従業員等の手前、恰好悪い」そのお気持ちも分かりますが、たぶん従業員等も会社の状況を分かっているでしょうから、何もしない方がもっと大きな失望を生みます。経営支援が政策的に推進されているのは、必要とする企業が多いからです。恥ずかしがる必要はありません。ご希望であればStrateCutionsでもご相談に応じます。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>




なお、冒頭の写真は 写真AC から KI-TSU さんご提供によるものです。KI-TSU さん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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