「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第188回

ストレッチした目標を立てる意義

落藤 伸夫 2021年12月6日
 



令和3年も12月に突入しました。昨年春からコロナ禍で思う事業活動ができず1年半以上を経過してしまった企業も、10月からの緊急事態宣言解除を受けてネジを巻き直しているところではないでしょうか。年末が近付き、12月決算企業では来年度の計画を立てているところだと思います。1年半強の逆風がここにきて順風に変わったので、来年に向けて強気の計画を立てている企業が多いようです。ある会社では、部店から本年度をベースに例年の成長率を乗じた数字が提示されたところ、それでは十分な黒字幅が確保できないと、経営陣から計画のストレッチが求められました。「部店で合意した数字がなぜ認められず、上から押し付けられた数字に落ち着くのか」との不満がくすぶったとのこと。別の会社では、この不満を恐れて目標のストレッチを止めたという話も聞いています。今日は、この問題について考えてみましょう。



ストレッチ目標が必要な理由

冒頭の会社社長に事情を聞いたところ、ストレッチを求めた理由の第1は、現場からあがってきた数字では黒字が確保できないと予想されたからです。コロナ禍で経済活動が大きく影響を受けた時期に赤字になってしまうことは結果論として100歩譲って仕方ないと考えるにしても、状況が改善しつつある状況下で赤字を前提とした目標は立てることは許されないとのお話でした。


これは経営者として正しい判断です。例えば研究型ベンチャー企業が製品を実現できるまで資本金を食い潰しながら全力で開発を続ける場合は別として、赤字を前提とした計画を立てることはありません。ましてそれまで黒字だった企業がコロナ禍で売上を大きく下げたからといって、現水準を発射台に以前の成長率を掛け算して「残念ながら来年も赤字だ」と、前の年から考えていたのでは、できる成長もできなくなって今います。



現状を発射台にする不合理性

「その逆ではないか。例えば過剰なプレッシャーをかけると萎縮してしまい、発揮できる才能も発揮できなくなるという。現水準を発射台にして穏当な成長を求めるのが妥当だ」との意見があるかもしれません。ある時、ある人、ある場面では、それは真実だと思います。しかし今、話題にしているのは、コロナ禍前は黒字を出していた企業(損益分岐点を超える売上をあげていた企業)がいち早く以前の仕事振りを回復しようとする場面です。1年半以上も満足な仕事ができなかったので感覚を取り戻すのに一苦労するという事情はわかります。しかし経験が全くなかった時代に逆戻りして、順次ノウハウを積んで成長したのと同じ率で移調する予定する計画は妥当とは言えません。迅速に以前の水準の活動を取り戻し、以前の成果を回復する目標の方が理に適っています。



「以前のようにやっても成果が出ない」を気付く

「そうは言っても、ウイズコロナやアフターコロナは以前とは異なるという。以前と同じ活動を行なっても、以前のような成果が出ないのではないか。」その意見には賛成します。業種・業態によってはコロナ前後で事業環境が大きく変化したので、以前のやり方では効果が出ないことも、あるでしょう。「では以前と同じことをしても無駄なのではないか?何か、新しい取組をしなければ。」


新しくどんな取組を行うべきか、どうやって知るのでしょうか?「いろいろ試行錯誤するしかないだろう。」今までやったことのない試行錯誤は得てして、正解を偶然に探り出すアプローチになりがちです。「これをすれば、本来ならこんな成果が得られるはず」という基準がないので、改善の手掛かりが得られないからです。まず以前と同じ活動を以前と同じほどの勢いで行ってこそ、「昔だったら反応してくれた言葉に反応してくれない。重視していた条件を、今は重視していない」と分かるのです。


もし、以前の活動を以前の水準で回復したのに以前のような成果が出ない場合にはどうするか?ストレッチした目標値を基準線として「以前と同じ活動水準に戻ったのに成果が出ないぞ。何が違うんだ?どのように違うんだ?」と検証しましょう。営業マンから積極的に情報収集し、分析するのです。「今まで喜んでくれた提案を、今では受け入れてくれない」との声があがったら、何だったら関心を示してくれるのか、提案内容を変化させて様子伺いしたり、相手が断る理由や状況について仮説を立て、それに対応した策を試してみるのも良いでしょう。


世の中が変わったことは、一度は自分が不変の軸を持って対峙するからこそ分かります。目標のストレッチを恐れていると、それを知ることは困難でしょう。是非、勇気を持ってストレッチした目標に立ち向かって下さい。




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なお、冒頭の写真は 写真AC から tomasa さん ご提供によるものです。tomasa さん、どうもありがとうございました。


 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


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