「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第182回

燃料切れにならないうちに

落藤 伸夫 2021年10月25日
 



新型コロナウイルス感染症蔓延防止のために発令されていた緊急事態宣言が9月末で解除され、街の様子も以前の活気を徐々に取り戻してきている感じがします。飲食店への時短要請などはまだ続いているところがあり完全復調とはいきませんが、この調子が続くよう強く期待しています。一方で先日に帝国データバンクが発表した調査によると、コロナ関連の倒産が9月で176件と3月に並んで最多となり、今年の累計では2,218件となっています。このような状況を見るにつけ、中小企業経営者の皆さんに留意してもらいたいことをまとめてみます。



「燃料が切れそうだ」では資金調達できない

コロナ禍の影響で多くの飲食店や宿泊業など観光関連企業で売上低迷が続いています。このような企業の中には昨年にコロナ特別貸付・コロナ特別保証を利用して資金調達し、現状ではキャッシュがあるという企業があるでしょう。コロナ特別貸付・コロナ特別保証では最大2年の据置が認められたので、それもキャッシュに余裕がある一因のようです。「そうだ。返済は来年夏からなのでキャッシュが枯渇するのは来年の冬頃。まだまだ余裕がある」と考えている経営者も多いのではないでしょうか。しかし「まだ余裕がある」は、とても危険な考え方です。


その理由の一つは「そろそろ燃料が切れそうだ」という状況では、資金調達が非常に困難になることです。金融機関としては「このお金がなければ我が社は倒産してしまう」という企業には、融資が難しい場合があるのです。例えばこれまで事業が順調だった企業が多額の売掛金について取引先から突然「払えない、1ヶ月待ってくれ」と通告されたが、自社も多額の買掛金を決済する必要があり、滞らせると事業の継続に支障が生じてしまうとの場合には、金融機関は前向きに検討してくれる可能性があります。会社が常態としては健全に経営している中、資金不足は突発的理由で、借入が可能なら危機を乗り越え、従前通り事業を継続できると考えられるからです。


一方で、来年の冬に資金が枯渇することは分かっているのに手を打たず、来年の冬になって「貸してくれなければ倒産してしまう」と申し込んだのでは、応じることは難しいのです。今を起点にすると1年、コロナ特別貸付・コロナ特別保証を受けた時からだと2年の余裕があったにもかかわらず復活できなかった企業が、急に復活できる企業に変わるとも思えません。


金融機関は、申込みのあった金額を融資すれば企業が復活できるかを考えています。このような企業は「融資しても早晩、再び資金が枯渇するのは目に見えている」と考えられてしまう可能性があります。「神風が吹かない限り、この会社の倒産は避けられない。でも神風が吹くと考えられる状況ではない」と考え、融資できないのです。



「燃料が切れそうだ」では上昇気流に乗れない

もちろん飲食業や観光関連企業にとってはコロナの蔓延が落ち着くことが必要でしょう。しかしコロナ蔓延が止まれば以前の状況に戻れるのか?何も策を打たなければ、それは難しいでしょう。「そうかな?顧客はリベンジ消費やリベンジ旅行をしたくてうずうずしている。時が来れば自分の店・会社にきてくれるはずだ。」確かに多くの人がリベンジ消費やリベンジ旅行をしたがっています。しかし、その需要を無数の飲食店・観光関連企業が分け合うのです。自社の魅力を磨いておかなければ、神風が吹いたタイミングで見向きもされない可能性があります。吹いた時に確実に起死回生に繋げられるよう経営改善・事業改善を手掛けておく必要があります。


「では、神風が吹きそうになったら経営改善・事業改善を考えるよ。吹かないうちに取り組んで徒労に終わってもイヤだからな。」その考えは捨てて下さい。完全に捨て去る必要があります。経営改善には様々な形があります。経費削減など、それを行えばキャッシュが増える取り組みは、早く手がければ手掛けるほど、受けられるメリットが増えます。


もう一方で、成果を得るために時間がかかる取組みがあります。「コロナで萎んでしまった需要が復活するまで待っていたのでは会社が持たない。ウイズコロナでもビジネスが成立する新業態に乗り込もう」などの事業再構築の取組は、その典型例です。そのような取組みを開始するのに早過ぎることはありません。というか、キャッシュが枯渇しかけたタイミングでは絶対に遅いのです。「自己資金が足りなくなったら借りれば良いさ。」いえ、そのタイミングでは金融機関が貸してくれない可能性の方が高いことは、先にご説明した通りです。


長い人類の歴史から、コロナとて、いつかは収束すると確信できます。しかしそのタイミングで燃料が切れていたら上昇気流にも乗れません。キャッシュの流出を止める経営改善や、新事業に着手する事業改善・再構築を始めるにあたって早すぎることはないのです。「何か手を打たなければならないのだろうか」と感じたら今すぐ、行動を起こして下さい。




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本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。

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なお、冒頭の写真は 写真AC から實悠希さん ご提供によるものです。實悠希さん、どうもありがとうございました。







 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


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