「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第81回

税理士ができる支援

落藤 伸夫 2019年4月22日
 

 先週、3月決算企業の中に金融円滑化法利用企業があった場合、事業計画書の策定・実施などがポイントになる可能性をご説明しました。「とは言っても、事業計画書は簡単に策定できるものではないからな」とお考えの税理士もおられるでしょう。それはとても健全なお考えです。何度か実績を積まれた方以外が「事業計画書策定は簡単だ」と言われると、筆者もひるんでしまいます。時には企業現場に踏み込んで分析・指導できる中小企業診断士に依頼しなければならない場合もあるでしょう。一方で税理士ならではの支援も可能です。今日は、そのような支援方法をご説明します。



意外と難しい財務諸表の読み方

 税理士の仕事の一つに財務諸表の作成があります。税理士にとっては税務申告の基礎資料に過ぎないかもしれませんが、企業を知ろうとする者にとって最重要な資料です。それは、企業の活動や状態を『お金』という尺度で表現したもの、人の体で例えると血液検査結果とも言えるものだからです。健康状態を知り、改善したい時に血液検査をないがしろにするのはあり得ないのと同様、企業を知ろうとする時に財務諸表をないがしろにすることはあり得ません。


 では、財務諸表はポンと渡されて事業性を正確・的確に読み解けるかといえば「そうとは言えない」が答えです。もちろん「ピカピカの企業」は決算書を見ただけで理解できる場合があります。「同業者平均の数倍の売上があり、利益率も高くて多額の納税をしており、借入金はほとんどなくて社内留保は社員一人当たり数千万円もある」企業は、決算書だけを見て「月商3ヶ月分の運転資金を融資しても大丈夫」と判断できるでしょう。しかし、融資を申し込んでくる企業のほとんどは、そのような企業ではありません。財務諸表を読んだだけでは、事業性評価に結び付けにくいのです。



財務諸表を解説する

 金融円滑化法を利用した、ある建設業者を想定してみましょう。平成31年3月決算は、売上減少しながら、かろうじて利益が計上されていました。一方で、以前に提出された計画書では売上は上昇し、もっと大きな利益が計上できるはずでした。当該計画書、そして去年までの決算書から導出される利益率からすると、今年の売上では利益は出ることなく赤字のはずです。


 一方でこの企業が「計画期間の冒頭3年は売上増加による利益拡大を目指したが、今のご時世ではうまくいかず逆にコスト倒れの受注に繋がったので、平成31年3月を期末とする今年度は利益率改善を目指した。コスト倒れの受注はお断りしたので売上が減少したが、利益を出せた」という事情だったらどうでしょう。「営業マンも利益が出せる見積もりで受注に繋げるノウハウを身に付けてきたので、来年度はもっと利益を出せる」という実感を、社長が持っていたとします。


 そういう状況が背後にあったとしても、金融機関は平成31年3月期の決算書をただ手渡されただけならば、「この企業はまた売上目標が達成できなかった。しかし利益は計上してある。今までの実績や計画で示された利益率からすると不自然な利益だ。さては経費の一部を計上せず利益を水増ししたな」と考えても仕方ありません。これでは、事業性を評価してもらって融資を得ることは不可能でしょう。


 一方で「経営改善努力の一環として不採算工事の受注を回避した結果、売上は減少したが利益は確保できた」との説明があれば、金融機関担当者としては「当社の事業性は向上したな。これを評価して融資できるかもしれない」と感じるかもしれません。社長からの聞き書きではなく、税理士による「平成31年3月決算に関する所見」メモを添付できれば、金融機関内の意思決定(りん議)も円滑に進むと期待できます。



作業代行者から「企業のスポークスマン」へ

 「なるほど。確かに財務諸表を受け取っただけでは企業の正確な状況は分からない。その説明を、事情を一番知っている税理士が行えば良いのだな。」その通りです。金融機関が適切に事業性評価できるかどうか、その説明があるかないかにかかっていると言っても過言ではありません。金融機関が「事業性を評価したい」と思うだけでは実現せず、中小企業側の協力が必要なのです。一方で、金融機関が納得できる説明ができる中小企業社長はあまり多くありません。だからこそ、税理士の皆さんのサポートが必要です。


  これまで税理士の皆さんと企業経営者との関係は「税務申告書作成代行者」という関係だったかもしれません。しかしこれからはもう一歩踏み込んで「中小企業のスポークスマンとして、金融機関が必要としている説明を行う」という役割を果たすことができます。これを必要としている企業・金融機関は少なくありません。是非、前向きに取り組んでみてください。 





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プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


HP:StrateCutions

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