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「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第164回

融資審査「枠組み」の意義

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 


新型コロナウイルス感染症の蔓延が続いて疲弊する中小企業に金融支援するためには、事業性評価が切り札になると考えられます。しかし事業性評価は、それを行うために莫大な手間と時間を必要とするので支援者が必要と考え、StrateCutionsは「事業性評価支援士®︎養成講座(初級養成コース)」を開設しました。一方で、4月から始まった「伴走支援型特別保証」が上手く機能するためには、金融機関が事業性評価でもって融資審査を行う枠組みが必要と考えられます。これについても前述講座でご提案しており、前回コラムで簡単にご説明しました。今回は、この提案の意義についてご説明します。



事業性評価できない理由:必要な情報が得られない

前回、StrateCutionsが考える事業性評価による融資審査枠組みをご説明しました。事業性評価を「隠れた事業性の評価」、「秘めた事業性の評価」、「事業性強化の評価」そして「事業性実現の評価」の4階層に分類する枠組みです。事業性評価が必要な企業について、まず、これらのうちいずれで評価できるのかを見定めることで、金融機関は、事業性評価を実践しやすくなると考えられます。


この類型を考えたのは、これまで事業性評価支援する中で融資が得られなかったケースがあり、それを解決したかったからです。特に金融機関から「御社について事業性評価したいので情報提供して欲しい」と申し出があった案件に、結果的に事業性評価では融資が得られないケースが少なくありませんでした。最初は「この企業を事業性評価するには、金融機関から依頼された情報量は少な過ぎる。だから融資判断が下せなかったのだろう」と考える程度でした。これを突き詰めて4類型を考えると、例えば、ある企業は「秘めた事業性の評価」が必要なレベルなのに、金融機関から依頼されたのは「隠れた事業性の評価」に対応できる程度(多くの場合、金融機関が「事業性評価シート」で収集しようとする情報量)だったという齟齬が原因のようだと気が付いたのです。


企業側から依頼する場合は、筆者が企業の状況を鑑みて情報提供するので事業性評価による融資が得られない事例は今までありませんでしたが、金融機関から申し出があった場合は、担当者が「この情報で十分」と考えても、りん議書を作成、役席や支店長、本部審査部などを経るうちに情報不足と判断されたのだと考えられます。事業性評価の場合、必要な情報は一律に決められるものではなく、企業にマッチした量・質が必要なのです。



必要な情報が集められない理由:審査の枠組みがない

昨年、コロナ特別貸付・特別保証により資金調達できたが、コロナ禍が予想外に続いてしまったので事業継続のため再び資金調達しなければならないという企業は、少なくないと思われます。「伴走支援型特別保証制度」はこれに応じるためが創設されたと考えられますが、しかし筆者は、制度が準備されただけで上述企業が円滑に資金調達できるだろうと楽観視していません。金融機関が事業性評価できることが必要です。


一方で金融機関は「事業性評価する手間と時間が不足する」だけでなく、「事業性評価する枠組みも持っていない」問題も抱えています。後者には多面的な意味があり、一つに「申込み案件・企業について事業性評価が可能か否か、入口時点で判断できない。そもそも、審査に必要な情報がどの程度かについて、目安を持っていない」ことが挙げられます。コロナ禍が始まる以前、平成の最後3年程度、多くの金融機関が事業性評価に取り組みましたが、そこで「自行庫なりの事業性評価審査枠組み」を確立できた金融機関は、あまり多くないというのが筆者の感想です。少なからぬ金融機関は事業性評価にトライしたものの、入口時点でどれくらいの情報を集めれば良いのかすらも経験値が得られず、結果として審査できなかった。それで顧客企業に迷惑をかけてしまったので今は消極的である、というのが実情と感じられます。



「4類型枠組み」で支援者が活用できるようになる

「では、審査に当たって最大限、支援者を使えば良いのではないか?」筆者もそう考えます。一方で、それは枠組み無くしては不可能でしょう。金融機関と支援者が、最初に「この企業には○○という方針で臨みたいので、支援して欲しい」と合意しなければ、支援を始められないのです。StrateCutionsが提案する「隠れた事業性の評価」、「秘めた事業性の評価」、「事業性強化の評価」あるいは「事業性実現の評価」という4階層を使えば、支援者と最初に合意して、有効活用できると考えられます。


今、数多くの企業が瀕死の状況にあります。これら企業に、資金調達を目指した正当な取組みチャンスが与えられなければなりません。そのためのミッシングリンクの一つが「事業性評価融資審査の枠組み」です。StrateCutionsが開始した「事業性評価支援士養成講座(初級養成コース)」で、この枠組みについてもご説明しています。金融機関の審査・企画担当の方々でご興味があれば、ご遠慮なく、StrateCutionsまでご照会ください。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。

<印刷版のダウンロードはこちらから>




なお、冒頭の写真は写真ACから fujiwara さんご提供によるものです。fujiwara さん、どうもありがとうございました。




 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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