「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第121回

コロナ対策資金を再度、申し込む場合

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



7月第1週末から第2週にかけて梅雨前線が活発化、全国で大雨が降りました。第1週の週末には九州の一部地域で山崩れや河川の氾濫などが発生、泥水が介護施設に流れ込んで多くの人々が生命の危険にさらされたとの話も聞いています。皆さんは、また皆さんのご家族やご関係者は大丈夫だったでしょうか? 

一方で、コロナ禍の影響もしぶとく残っています。この疫病が冬の寒い、乾燥した季節に発生したことから「高温多湿の梅雨時期になれば下火になるに違いない」と予想する向きもあったようですが、実際には第2波に怯える状況です。消失した需要のせいで大企業も中小企業も軒並み売上低下に苦しんでおり、夏のボーナスも抑えられていると聞きました。春に調達した資金も心許なくなって、再度の申し込みを検討しておられる企業も少なくないでしょう。今回は、コロナ対策融資(政府系金融機関による特別貸付と、信用保証協会の特別保証を利用する民間貸付の両方を指しています)を再度申し込む場合について、考えてみたいと思います。


「2回目」に説明すべきこと

コロナ特別融資を利用した企業が再度申し込もうとする場合に筆者は「初回以上にしっかりとした説明をしましょう」と言っています。具体的には以下についてです。

・前回に借り入れた金額の資金使途と効果

・前回借入時から今まで行なった経営改善と、その効果(その裏腹にある、今、新たに資金を必要とする理由)

・今後のコロナの影響と対応策(事業改善)、その効果


「2回目」の意味

「それほど大袈裟に考える必要があるのだろうか?申込者に『コロナ禍が続いてビジネスが回らず、手元資金が不足した』という事情は明確だし、金融機関として融資できる相手かどうかは前回に審査してパスしている。リピーターは簡単に資金調達できるはずだ。」そう考えるのは、少し甘いと言わざるを得ません。

資金が必要になった事情や、支援したい先であることは以前に審査済みであることも、おっしゃる通りです。一方で「2度目だから簡単に審査できる」というのは間違いです。逆に、2度目だからこそ慎重にならざるを得ない事情があります。バランスシート(貸借対照表)に、影響が出ているからです。

バランスシートは大きく2つ、事業のため使った金額の明細(資産の部)と、資金調達した金額の明細(負債及び純資産の部)で構成され、両者は必ず一致しています。「負債及び純資産の部」も、返済等が必要となる「負債」と返済の必要のない「純資産」に分けられます。事業に必要な資金を全て返済の必要のない資金(自己資本)で調達するのが無借金経営です。しかし多くの企業は借入しています。借入金が膨らんで「負債」が「資産の部」を超えるようになると、純資産はマイナスになっています。これを「債務超過」といって、この状況に陥った企業への貸付に金融機関は非常に慎重になります。

資金調達した瞬間は、「借入金」と「現金・預金」が両方増えてバランスは保たれています。しかし日が経つにつれ固定費の支払いなどで現金・預金が減少すると、このバランスが崩れてきます。例えば6000万円を5年返済で借り、半年後までに固定費等の支払いで5000万円使ったとします。一方で借入金は5400万円(100万円の6ヶ月分をマイナス)となっており、バランスシート上は純資産に4400万円食い込みます。もし、当初借入時に純資産が3000万円だった企業なら、売上を回復してキャッシュをキープしないと債務超過になってしまいます。

今、極端な例として債務超過に陥った企業の例をあげました。そこまでいかなくても、借入をし、借り入れたお金で固定費等を支払っていると、借入比率が高まり、自己資本比率が低下します。金融機関にとっては、融資しにくい状況に企業が変わってしまっているのです。


生き残りに向けて「懸命に」なっているか?

「初めて借りた時よりも二度目には会社の数値は見劣りするのだな。しかし、会社が生き残れるかは数値だけでは表せない。『この会社を潰さないぞ!』と経営者・従業員が決意している企業は大丈夫だ。」はい、その決意が一番大切です。それを是非、金融機関に伝えてください。但し、それを金融機関担当者に連呼しても伝わりません。「この経営者には『会社を潰さない!との決意がありそうだ。期待して良さそうだ』と判断するのは、目の前にいる担当者ではなく、担当者が書いたりん議書で決裁している役席や決済者だからです。その人たちにあなたの決意を最も効果的に伝えるのは、事業計画書です。是非「この計画書のもとで頑張ろう!」という気持ちになれる事業計画書を作成してください。




<本コラムの印刷版を用意しています>

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。

<印刷版のダウンロードはこちらから>


なお、冒頭の写真は写真ACからcoji_coji_acさんご提供によるものです。coji_coji_acさん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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