「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第220回

企業立て直しのゴールを描く(財務側面)

落藤 伸夫 2022年8月8日
 



今、コロナ禍やその影響にプラスしてロシア・ウクライナ情勢などを原因とする世界的な減産・流通の停滞等により値上げラッシュとなっており、今分かっているだけで年内1万点以上の生活物資が値上がりすると報道されています。一方でオミクロン新型株の影響かコロナ感染が拡大しており、行動制限を勧める自治体などもあって経済活動に暗い影を落としています。


この状況を打開するため、既存事業を盛り立てる事業改善、あるいは新しい取組を始める事業再構築に取り組むよう勧められます。今日は、事業計画において何をゴールとするか、考えていきます。



資金調達を目指した事業計画とは

「事業計画のゴールとして何を描くかは、各企業が勝手に決めれば良いのではないか?」と思われる方も多いでしょう。ある意味、それは正解です。現実を踏まえ、今の状況が続けば今後はどうなるかについて淡々と描写する計画を立てることも、それを見た人100人が100人とも「壮大な夢だな」と感想を漏らすような計画を立てるのも、企業の自由意志です。


一方で、事業計画を書く目的、あるいは事業計画の提出先を考えると、自由度は狭まると考えられます。例えば「コロナ特別貸付などで資金調達したため今はキャッシュが十分あるが、業績が十分に回復しておらず、固定費や借入金返済によりキャッシュが不足すると見込まれる。そのタイミングで資金調達できるよう、計画を立てて取り組みたい」という趣旨で、金融機関に提出する前提で計画を立てる場合は、目的に適った計画の策定を意識する必要があります。


これを金融機関の立場で考えてみましょう。「今はキャッシュがあるが、業績回復が不十分で、固定費や借入金返済により近々キャッシュが不足する」という企業は、2年以上も続いたコロナ禍のため減収減益となっているでしょう。赤字あるいは2期連続赤字となっている企業もあるでしょう。債務超過に陥っていると金融機関としては、追加支援は原則、不可能です。


そのような企業は、どうしたら将来に資金調達できるか?融資のタイミングで「この企業には事業の継続性も借入金の返済能力も認められる」という企業になっていることが必要です。それを目指す事業計画を策定するのです。



金融機関が期待するゴール

減収減益で赤字あるいは2期連続赤字で債務超過に陥る可能性がある企業が近い将来に「この企業には事業の継続性も借入金の返済能力も認められる」とは、事業を巻き返して黒字化してそれを継続、できれば拡大していけるという意味です。また、利益を積み重ねて財務にも反映されているという意味です。


金融機関の専門用語でいうと「債務者区分が、要管理先から要注意先へ上位遷移できている。正常先への展望も見えている」という状況です。それと比べると、事業環境に変化がなければ収益不足が継続する、「だから来年の春頃にはキャッシュが不足するので融資を受ける必要がある」とのメッセージだけを発する計画も、読み手のほとんどが「壮大な夢だな(実現性はゼロだな)」と感想を漏らすような計画も、目的に適っていないことが理解できるでしょう。


しかし実は後者のような計画は決して少なくありません。コロナ禍が始まる前に金融機関から「金融円滑化法に基づいて事業計画を立てた企業にリスケジュールしたが、その実施が上手くいっていない。実効が上がっていない」と相談された企業に係る計画の多くが、現状を淡々と説明する一方で改善に向けた努力が伺えない計画か、威勢の良い掛け声にしか聞こえない計画でした。今、同様の計画を立てたのでは会社の立て直しは期待薄です。



金融機関向けを意識してバランスが取れた計画を立てる

「どんな会社に立て直すか、他人に口出しされるとは片腹痛い」とのお気持ち、分かります。この状況について「金融機関は、生活習慣病で苦しむ患者を思う医者のように、企業を見ている」と考えるのは如何でしょうか?


医者は「脂肪やコレステロール、尿酸値や血圧などを標準値に収めないと長生きできませんよ」と忠告してくれますが、「仕事に生きる」、「趣味に生きる」、「家族を大切にする」等の姿勢に口出しすることはありません。金融機関が「売上を取戻しましょう、利益を出して財務体質を改善しましょう」というのも同じ意味合いです。もし社長が「地域で大切にされる」、「従業員も満足している」あるいは「新製品で名を売る」会社になりたいとの願望があるなら是非、目指してください。


人間と同じく会社でも健康と願望の両立が、少し遠回りでも、長い目で見れば持続的にメリットを享受できる道です。




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なお、冒頭の写真は 写真AC から mybears さんご提供によるものです。mybears さん、どうもありがとうございました。




 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


HP:StrateCutions

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