
最近、”FinTech(フィンテック)”という言葉をよく聞きます。デジタル化や人工知能を金融の世界に活用したもので、今後、どんどんと台頭していくと考えられています。
コンピューターOSを提供するWindowsマイクロソフト社創始者のビルゲイツはすでに1994年に「金融サービスは必要であり続けるが、金融機関は必要なくなる(Banking is necessary, but banks are not.)」と予言したと言われています。これは、主体者(金融機関)にもしっかりと考えてもらわなければならない命題ですが、利用者も無頓着でいられる訳ではありません。今後、FinTechが進展していった場合に、事業資金調達はどうなるか?それを見越して企業はどのように考え行動したら良いのか?今回は、それについて考えてみましょう。
FinTechとは
FinTechとは、金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語です。金融サービスと情報技術を結びつけることで、これまでのサービスが高速・省力化されるばかりでなく、今までなかったサービスが可能になることを指しています。資金調達の分野では「指定された会計ソフトを利用し、必要な要件を満たしていれば翌日など今までは考えられなかった期間内に融資の決定が下され実際の送金が受けられる」というサービスがあることを耳にされた読者も多いことでしょう。今後はインターネットやスマートフォンを使いながらより高速に、またAI(Artificial Intelligence、人工知能)、ビッグデータなどを活用してユニークで精緻なサービスが提供されると考えられます。金融機関を介さずに資金の貸し手と借り手を直接つなぐサービスなども台頭しています。
FinTechにできること・できないこと
FinTechを活用した事業資金調達が今後、どう展開していくのか?それを考えるにあたって「FinTechにできることと、できないこと」について考えてみたいと思います。特にAIを活用した融資審査がどのようになるか、一部将来に想定されることも含めながらまとめてみました。
<できること>
・顧客企業からの決算書データを迅速・緻密に分析する。
・口座履歴等から事業活発度や今後の趨勢等を分析する
・口履歴にある取引先の業況や将来性を参照、好調先・不調先の取引状況等から当該企業の事業性を推計する
・ネット上の露出や趨勢等から事業活発度等を分析する
・ネット上にある評判等をピックアップして集計する
・以上を総合して企業の現状や将来性を推測する
<できないこと>
・集めた情報の事情を問う(業績の低下があったとき、外部要因か、当社に理由があるのか、判断できない)
・集めた情報の戦略性を問う(業績の低下があったとき、戦略意図があるのか、ないのか、判断できない)
・集めた情報の真偽を問う(悪い評判が立ったとき、それが真実なのか、デマなのか、判断できない)
・集めた情報の意味付けをする(悪い評判があったとき、それが致命的なのか、軽微なのか、判断できない)
・定性情報でもって判断する(将来の地歩固めのため、今は下地作りしているとの事業計画書を評価できない)
FinTechがもたらす「事業改善」の価値
以上、FinTechができること、できないことを挙げてみました。この分析から「優良企業は、FinTechは適切に判断できそうだ。その場合のメリットは現状と比較して絶大と言える」と読み取れます。決算書や調査会社、インターネット上の情報にネガティブ要因がなく、決算書を見れば「この会社は素晴らしい会社だ」と言える企業は、FinTechを使うことで「融資申込が簡便で、審査が迅速」などの大きなメリットを受け取れそうです。
筆者は、このメリットに与れるよう目標にしてもらいたいと考えています。「このところずっと少額の赤字だ。黒字化を目標にしているが達成、税金を考えると『これでも良いか』と考えてしまうからだ」という企業があったとしましょう。人が判断する場合、その事情は斟酌してもらえるかもしれません。しかし、FinTechは事情がわかりません。「どんなに頑張っても黒字化できなかった。今後の将来性は暗い」と判断される可能性があります。そうならないためは?是非、事業改善に邁進して下さい。
平均的な企業は?
「事業改善に邁進しろという話、よく分かったが、当社の場合は『頑張っているけれど、目を見張る成果は出ない』というのが等身大なのだ。でも、だからといって我が社が倒産寸前という訳ではない。その逆だ。金融機関が手を引いてしまうことさえなければ、我が社は地元でしっかりと事業を継続し、貢献し続けることができる。」実際、そのような企業がほとんどではないかと思います。しかし、そのような企業がFinTechから適切に評価されることは(今のところ)少ないでしょう。では、どうすれば良いか?FinTechではなく、今まで通りのきめの細かい会話をしっかり行ってくれる地域金融機関と付き合うことがポイントになりそうです。この意味でも「金融機関を選ぶ時代」になってきたと言えます。
<本コラムの印刷版を用意しています>
本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。
なお、冒頭の写真は写真ACからacworksさんご提供によるものです。acworksさん、どうもありがとうございました。