「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第192回

まず何を考えると事態の好転に繋がるのか

落藤 伸夫 2022年1月17日
 



令和4年の成人の日も過ぎたことで正月気分も完全に吹き飛び、仕事も本稼働してきたという状況ではないでしょうか。しかし、一度は抑え込まれていたと感じられたコロナ禍が昨年12月から急速に振り返してしまい、「やっと一昨年の状況に戻れる」という楽観論に水を差す形となりました。もはや、以前に戻るという考え方では今後を乗り切っていけないのかもしれません。


このため前号では「2022年を輝かしい年にするために」と題して変革を、それも「脱皮」と表現できるほど大幅な変化を起こすことをご提案しました。さなぎが蝶に変化するほどの大きな・抜本的な変化です。


こういうと「そうか、今までの事業には将来性がないと感じ、見切った方が良いかと思っていた。今こそ乗り出そう」とお考えの経営者もいるかもしれません。一方で、あまりに性急に変革を計画し実行すると思わぬ罠にはまって大きな痛手を被る可能性があります。今回はそのような事態に陥らないよう、最初に何を考えるのが適切なのかについて、考えてみます。



変化を起こす場合の2つのアプローチ

企業が変革を起こそうとする時、何を指針とすれば良いか?実は、このテーマは「戦略論」の分野で検討されています。その中で中小企業に関係しそうなのは「ポジショニング理論」と「リソース・ベースト・ビュー理論」でしょう。ポジショニング理論はアメリカの経営学者であるポーターが提唱、「最も有望な市場(広大な市場の中の特定ポジション)を目指すべき」という考え方で、リソース・ベースト・ビュー理論は、同じくアメリカの経営学者バーニーが提唱、「自社の資源(リソース)を生かせる事業とすべき」という考え方です。学会では両者が凌ぎを削る論戦を張っていますが、我々中小企業の実務家は、両者の良いところ取りをしましょう。つまり「いくつかある有望な市場の中から、自社資源を最も有効活用できる市場・事業を選ぶ」という考え方です。



よくある罠

中小企業が変革を目指す時にどんな罠に陥りがちか、「ポジショニング理論」と「リソース・ベースド・ビュー理論」から理解することができます。いずれか、もしくは両方を無視してしまう間違いです。


少なからぬ企業は、現在の事業が上手くいかないので事業再構築を考える時に「市場」を突き詰めていないようです。例えばコロナ禍にあって来店客の減少に苦しめられている日本そば店が「もう少し手軽に利用できるラーメン店に転業・店舗改装しよう」と考えたとして、事態は改善するでしょうか。この店はビジネス街の駅前に立地する中、これまでは近辺で働く多数のビジネスパーソンに利用してもらっていたが、コロナ禍のためテレワークが進んだだけでなく、主要企業が地方移転した・事業所を大幅縮小した等の事情があるなら、ラーメン店でも事態を打開できない可能性があります。飲食店での事業継続を目指すなら(労働)人口が減っていない、できれば増えている地域に移転するのが適切でしょう。


また少なからぬ企業は事業再構築を考える時に、自社の資源を突き詰めて考えていません。ここで資源という場合、従業員(人的資源)や店舗・工場・事務所(物的資源)だけでなく、我が社に積み上がったノウハウ(無形資源)、ひいては知名度やファンになってくれている顧客、安くあるいはユニークな商品を仕入れられる取引先との関係などまで広く考えることができます。珍しい海外の雑貨を扱うことで知られていた店舗が「コロナ不況のため人々は不要不急の贅沢品に消費しなくなった。必ず買い求めるしかない日用食品を扱おう」と転業すると、事態は改善するでしょうか?新しい業種・業態に係る知識・ノウハウもない状況で、仕入れ先との関係も構築できていないのでありきたりの商品を優位性のない価格で販売するしかないのなら、新事業で成功できる可能性は限りなく低いと言わざるを得ないでしょう。


以上から、2022年を輝かしい年にするため変革を目指すなら、まず自社と自社の事業環境(市場)を熟知することから始めるのが良いと分かります。「これまで数年〜十数年、業績はぱっとしなかった。これから生まれ変わろうとする時、それも『脱皮』と言えるほど革新的な変化を遂げようとする時、今の会社を考える必要はない」という声を聞くことがありますが(最近、その声が増えてきた気がしますが)、自社資源の強みを捨て、自社が土地勘を持たない市場に新天地を求めたのでは、成功の可能性は限りなく低いと言わざるを得ません。もし今まで行ってこなかったのなら是非、自社と自社の事業環境(市場)を熟知するようトライしてみてください。




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なお、冒頭の写真は 写真AC から かさこ@背景資料写真家 さん ご提供によるものです。かさこ@背景資料写真家 さん、どうもありがとうございました。


 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


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