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第259回

「自己診断の罠」とは何か

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



最近「資金繰りが厳しいので折返しの融資を日本政策金融公庫あるいは民間金融機関(信用保証付き)に申し込んだが承諾を得られなかった」という声を聞くことがあります。その理由について前回4回にわたって、中小企業支援の重点が「コロナ時の売上・利益の急激な減少によるショック倒産を防止する金融支援」から、今は「回復できた企業には平時の支援。回復できなかった企業には経営改善支援あるいは再生支援等」にシフトしていることを確認しました。このことからすると、今でも売上・利益が戻らず資金繰りが苦しい企業は「政府が特別融資で支援してくれるだろう」と考えるのではなく、「自助努力で経営改善していこう。その努力と出始めた成果を見て支援してもらえるようにしよう」と考える方が確実であると思われます。


しかし少なからぬ企業が、そのようにお考えになっていない状況です。それは何故か?「自己診断の罠」に嵌っている可能性があると考えられます。今回は「自己診断」とは何かと、代表的な罠について考えてみます。



自己診断とは何か

自己診断とは、病状等について専門家ではなく自分で診断することを表現する言葉です。これは特段、異常なことでなく誰もが行っていることです。寒気がしたり熱が出たりした場合に「病院に行った方が良い」と考える、あるいは「この程度なら病院に行く必要はない。家で静養していれば良い」と判断するのが自己診断です。このように自分の体については自己診断を普通に行っており、特段問題にならないことが多いのですが、時として重大な病気の兆候を見過ごしてしまい、気が付いた時には手遅れという状況が生じる可能性も秘めています。


企業についても自己診断が同様に行なわれています。日常業務を行う資金が不足するとは、人体で言えば寒気がするとか熱がある等の何らかの不具合の兆候です。しばらく様子を見ても大丈夫な場合もあれば、すぐに治療を行わなければ不払い、ひいては倒産等の重大な事態に陥る可能性があります。しかし企業の場合でも、最初は専門家と相談せず自己診断するのが普通となっています。



「まだ大丈夫」という自己診断が罠となる場合

自己診断としてよく耳にするのは「まだ大丈夫」という言葉です。資金繰りできず借入により補充しなければならない現象は、先ほども言ったように特段に問題視しなくても良い場合があります。例えばリーマンショック時に売上・利益が激減したので多額の借入をした企業は、業績を持ち直してリーマン以前を上回る売上・利益をあげたとしても、全額を自己資金で返済することは難しいでしょう。このためタイミングを見計らって折返しの借入を行う現象は普通に行なわれています。


一方で別の事態も生じている可能性があります。今回のコロナ禍では、かつてない規模の資金支援が行われました。日本政策金融公庫等の政府系金融機関が実施したコロナ特別貸付と信用保証を利用して実施された民間金融機関のいわゆるゼロゼロ融資等により、今までになかった金額を借り入れることができ、豊富な現預金をキープできた企業があるのです。


「お金は7難隠す」と言われており、これは大概の危機でも現預金さえあれば倒産に至ることがないことを指していますが、今回の場合には逆に作用したケースがあります。企業の売上力・収益力が著しく低下して対策が必要なのに、豊富な現預金を見て経営者が『我が社は大丈夫』と自己診断してしまい、破たんへの道を脱する努力をしなかった場合もあったと考えられるのです。この問題が危機感をもって検討されるのは「現預金が資金繰りに汲々としながら日々を過ごしたコロナ前レベルに減った時」だと考えられます。ただ、その日が来たら全てが終る壁に激突するまで間はありません。その前に気が付く必要があります。


2020年春にコロナ禍が始まって約3年間続いた後、新型コロナウイルス感染症が第5類に分類されて半年経過した今、「お金を借りないと資金繰りが回らない」という企業のうち少なからぬ割合は、「まだ大丈夫」という自己診断を続けていると重大な事態に陥る必要があります。自社がどのような状況にあるのかについて是非、顧問税理士などの意見を聞いて下さい。顧問税理士に聞くことができない場合やセカンドオピニオンが必要な場合にはStrateCutionsでもご相談に応じています。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>




なお、冒頭の写真は 写真AC から ヒラリーマン さんご提供によるものです。ヒラリーマン さん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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