「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第101回

税理士と決算を整える

落藤 伸夫 2020年2月10日
 


前回、金融機関が疑問ひいては疑念を抱きやすい決算について考えてみました。「問題は分かった。どうすれば良いのだろう?」という疑問を多く頂いたので、今回は考えてみたいと思います。 



形式的におかしな決算とその対策

前回に、適切な処理がなされていない、つまり形式的におかしな決算が少なくないとご説明しました。筆者が以前に遭遇した「前期の現金期末残高」と「今期の現金期初繰越金額」が一致しない決算は、その典型例です。その理由は顧問税理士を変えたことだと社長が教えてくれたことも、お伝えしました。


その事情をもう少し詳細にご説明しましょう。その社長さんは起業に当たって、以前に勤めていた企業(中小企業)の顧問税理士(個人事務所)に相談したそうです。個人的によく知っている人だったので信頼が置けたし、「君が創業するなら料金は安くて良いよ」と言って、本当に安い金額で引き受けてくれたとのことです。しかし、融資の申し込みをするに当たって問題が明らかになりました。その税理士は、年に一度の税務申告を行うだけのつもりだったようです。しかし融資に当たって金融機関は合計残高試算表の提出を依頼してきたのです。それを税理士に依頼すると、今の価格では無理だとの話で、別の税理士を探したのです。


次の税理士は、起業仲間に紹介してもらいました。起業家の支援を得意としているとのことで、価格も安く抑えながらも残高試算表の提出などにも対応しています。前の税理士が担当したデータを活用することで、年度当初ではなく切替期からの顧問料金で対応してくれることになり、「料金を安く抑えられる」と大変、喜んでいました。新しい税理士は、前の税理士の処理について精査はしなかったのでしょう。このような次第で、前税理士の期末残高と新税理士の期初残高が一致しない残高試算表が出来上がったのです。


このような事象は、どうしたら防止できるか?「税理士の料金を出し惜しみしない」が、教訓の一つだと思います。相場より割高な税理士を避けるのは問題ありませんが、安すぎるとトラブルに陥りがちです。また経営者に、会計の基礎知識を身に付けてもらいたいところです。「前期末残高と今期初残高が一致しない、現金残高がマイナスになるなどの処理は不適切」との知識があれば、これらの問題は避けられたでしょう。



もう一歩先の会計知識を!

会計知識については、先ほど述べた基礎から一歩進んで、初級レベルまで身に付けると経営にもメリットがあり、落とし穴にはまることも避けられます。


前回、売上が好調だったので税金支払いが予想される場面で、ある税理士が「節税のため」掛売りを売上から除外したお話をしました。個人事業で白色申告の飲食店や小売店なら、この処理も看過されるかもしれません。しかし法人・青色申告では問題です。税品回避のため期の途中で処理を変えたことが分かれば、金融機関としても「うまい節税方法を見付けましたね」で済ましてはくれません。自分への信頼を落としかねない処理を「問題だ」と分かる会計知識が望まれます。


経営者の皆さんにもう一つ、是非とも身に付けてもらいたいのは減価償却に関する会計知識です。減価償却は現金の流出を伴わず決算で費用計上するので税理士に任せてしまい、決算期に「今期も十分な利益が出なかったので収支トントンになるよう調整しました」と言われ、「ありがとう」と答えて終わらせている例が少なくないと思われます。しかし、これでは次の設備更新費用を準備することができません。製造業や運輸業、冷蔵・冷蔵設備など高価な機材が必要となる販売業等では、次期に設備更新ができず事業継続が難しいと判断される可能性があります。税務署は税金を多く払う方向での決算操作には無頓着ですが、そのツケは自分に返ってきます。そうならないよう、どんな会計処理が適正なのか見極めが付く会計知識が望まれるのです。



税理士との共同作業

「よし分かった。これからは決算を適切に行おう!」その心意気です。しかし、会社という「複雑・精巧な生き物」の活動記録というべき会計処理は、経営者の決心だけでは対処できません。税理士の協力が必要です。特に、減価償却など処理が長年に積み重なってきた事項については、税理士と相談しながら、息の長い対処をしていく必要があります。


では、適切な決算は諦めるしかないのか?前回記事でお伝えした通り、事業性評価が進展する中、適正な決算はポイントになります。これが資金調達の糸口になるかもしれません。是非、税理士と取り組みを始めてください。StrateCutionsでは、適切な会計を指導してくれる税理士をご紹介することもできます(首都圏)。是非、ここで検討してみるのはいかがでしょうか?




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なお、冒頭の写真は写真ACからuopictureさんご提供によるものです。uopictureさん、どうもありがとうございました。




 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


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