「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第180回

財務基盤の強化とは

落藤 伸夫 2021年10月11日
 



コロナ禍に対応するため資金調達したが行動制限等がなかなか解除されなかったことなどから財務状況が悪化してしまった企業が少なくありません。この改善には長期的な取組みが必要で、早めの対応を打たなければ事業承継にも影を落とす可能性があります。今回はミニシリーズとして、経営者保証を外してもらうための取組みについて、お伝えしています。

経営者保証ガイドラインには、経営者保証を外せるかどうかの判断には以下がポイントだと示されています。


① 法人と経営者との関係の明確な区分・分離

② 財務基盤の強化

③ 財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保


今回は「財務基盤の強化」を、少し詳しく検討します。



Q&Aに示される3つの状況

財務基盤の強化については経営者保証ガイドラインに「財務状況及び経営成績の改善を通じた返済能力の向上等により信用力を強化」と記載されており、会社に蓄積された現預金を中心としたストックと、経営成績によるキャッシュフローの両面で検討がなされることが示唆されています。この部分についてQ&Aを見ると(経営者保証ガイドラインにはQ&Aが設けられ、ガイドラインに即して具体的な実務を行う上で留意すべきポイントが示されています)、そこでは以下のように示されています。


① 業績が堅調で十分な利益(キャッシュフロー)を確保しており、内部留保も十分であること

② 業績はやや不安定ではあるものの、業況の下振れリスクを勘案しても、内部留保が潤沢で借入金全額の返済が可能と判断し得ること

③ 内部留保は潤沢とは言えないものの、好業績が続いており、今後も借入を順調に返済し得るだけの利益(キャッシュフロー)を確保する可能性が高いこと


これらを見ると「財務基盤」として求められるレベルは借入金の全額が返済できることで、ストックとフローの両面で心配ないことが理想ながら、そこまでには至らない場合にはストックあるいはフローを重視して判断することも可能だと示されています。



フリー・キャッシュフローの計算方法

コロナ禍で苦しんだ中小企業が少し先のこととはいえ円滑な事業承継を目指して今後の取組を考える場合にヒントになるのは、先の3つの中だと「キャッシュフロー」に重きを置いた判断だと考えられます。つまり、どの程度のキャッシュフローが必要を知る必要があるのです。中小企業の場合にはキャッシュフロー表を作成していない場合が多いと思われます。以下の方法で、損益計算書から簡易フリー・キャッシュフローを算出しましょう。


営業利益+減価償却費

ー設備投資による支出

ー運転資本(売上債権+棚卸資産ー仕入債務) 増加額


フリー・キャッシュフロー(FC)が、借入金元本返済額と利息支払額の原資となります。決算書から導き出したFC(つまり一年分)が借入金全額(本件だけのではない)についての元本返済額と利息支払額の合計額よりも余裕をもって大きく、かつ景気変動に伴った売上の増減等があったとしてもなお同様と考えられるなら、今後も借入を順調に返済し得るだけのキャッシュフローが確保できると判断される可能性があるでしょう。



内部留保に関する注意点

 ここで内部留保についても確認しておきましょう。内部留保とは過去の利益の累積額です。多くの場合、貸借対照表の純資産の部に計上される利益剰余金を意味しています。ここで注意が必要なのは、決算書上は内部留保が潤沢にあるように見えても、経営者の保証を外せるかの判断を行う場合にはもっと深い見方がされることです。経営者保証を外せるかの判断は借入金返済能力の見地から行われますから、内部留保の反対科目が不動産や、事業を行う限りは継続して発生する売掛債権等のように換金性がない、あるいは大きく制約がある場合には、カウントされません。借入金の返済財源とカウントされるのは現預金や換金性の高い資産に限られるのです。


 財務基盤強化の考え方を知ることで、必要な取組が見えてきます。「いつかは使うかも」と思っていた遊休不動産がそのままでは金融機関は首を縦に振ってくれないが、売却して現金や換金性の高い資産に置き換えると前向きになってもらえる可能性があります。時間をかけて戦略的に取り組んでまいりましょう。




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なお、冒頭の写真は 写真AC からfujiwaraさん ご提供によるものです。fujiwaraさん、どうもありがとうございました。


 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


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