「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第90回

景気低迷前に資金調達準備する!

落藤 伸夫 2019年9月24日
 



 前2回にわたって景気が悪化した場合の対処法について考えてきました。実際に景気悪化により売上が減る事態となった場合には、思ったよりも資金が急速に失われますから、早めの資金調達が肝要になります。今回は、資金調達準備について検討します。


多めの資金調達

 筆者は、普段は「借入金をできるだけ減らしましょう」とアドバイスしています。この理由は、一つは資金調達コスト(支払利息)を減らしたいとの意味もありますが、それよりも「しっかり財務管理して事業改善に繋げましょう」という意味合いがあります。筆者は以前に「豊富な資金は7難隠す」という言葉を聞いたことがあります。「売上が下がろうとも、売掛金が円滑にできなくても、思わぬ経費がかかっても、・・・などなど7つの災厄があっても、資金が潤沢にあればトラブルに巻き込まれることはない」という趣旨です。資金を無駄に失うことがないよう戒める教訓で、筆者も強く共感しています。


 一方で、この言葉が逆に作用している会社を時として見かけることは、大変残念です。戦後最長の好景気が続いた期間、それなりのパフォーマンスをあげてきた中小企業に対して金融機関は積極的に融資してきました。潤沢に資金をキープできた企業の中には、これをチャンスと積極投資して有効利用した企業もありましたが、残念ながら、そうではない企業もあったようです。現金が十分あることに幻惑され、売上の低下や売掛金回収の滞り、慎重な判断なく行われた冗費の支出などなど、経営上の問題を意識することなく放置してしまった企業があったのです。この状況で従業員の怪我などで売上が下がり赤字に陥ってしまうと、金融機関は途端に慎重な態度に切り替わってしまい、資金調達に窮するようになります。このため筆者は今まで一般的に、資金調達額を抑えて経営改善に動機付ける方向性でいました。


 しかし今や筆者も、潤沢に資金をキープできることを目指した方向性にあります。これはもちろん、今後に金融機関の貸出態度が硬化しても、支援企業が資金繰りに窮することがないようにするためです。不景気になると、自社の業況が悪化して借入しにくくなるという要因以外に、金融機関の業績が悪化して中小企業、特に業況が芳しいとは言えない企業への姿勢が厳しくなり、これまで応じてくれた折り返し融資にも応じてくれないという事態に陥りかねません。そうなる前に、借りられる金額は借りておくというリスク管理策を採るのです。


金融機関開拓

 景気の陰りが明白化していない時期にやっておきたいことのもう一つとして、新たに借入ができる金融機関を探しておくことが挙げられます。自社所在地から近い金融機関がターゲットです。


 金融機関は、顧客毎に取引可能な融資額を決めている一方で、限度額内であっても比較的シンプルな審査で済む範囲と、しっかりとした審査をする範囲を分けているからです。例えば、融資金額3,000万円未満は支店長決裁、それ以上は本部融資部長決裁というようにです。本部融資部長決裁案件には支店長決裁の案件より多くの審査マンが関わり、慎重に審査します。筆者は、普段では、今までの借入実績を超えて資金調達しようとする場合、「これまで付き合ってくれた金融機関に申し込みましょう」とアドバイスしています。当然、従前以上に詳しい資料や説明が求められ、面倒臭いと思われるかもしれませんが、今まで以上に資金が必要な理由を説明したり、今後の売上や収益の目標をしっかりと説明することで、自らの目標・計画をブラッシュアップしたり、その達成に向けた熱意を強めるチャンスとなります。


 しかし、景気が悪くなって金融機関の貸出姿勢が硬化すると予想される場合には、この方針だとうまく回らない可能性があります。厳しい審査を受けた末に融資を受けられないリスクも、織り込んでおく方が良いでしょう。万が一、そうなった時に困らないようにするため、新たな金融機関との取引を始めておくのです。


 「今までの金融機関から借入ができなくなってからで、良いのではないか。」もし、そうなった場合でも半年や一年は資金繰りに問題がないなら、それでも良いでしょう。金融機関は、自らが営業で飛び込んだ先以外の企業に対して、あまり取引実績のない中で融資することに消極的だからです。普通預金口座を開設するだけでなく、日常取引で活用してもらうなり、定期積金口座を開設して定期的に金融機関を訪れている姿を見るなどして「信頼できる相手だ」と納得し、その上で融資したいと考えています。そのために必要な期間を、予め織り込んでおきましょうという趣旨です。



 企業経営者としては、景気が悪化しても会社を守る対策を施しておきたいものです。その中に資金調達への備えも、是非、含めておいてください。上でもご説明した通り、相手に一定の安心材料が必要となるので、時間をかけて準備しておくのです。「理屈は分かったが、具体的にどうすれば良いのだろうか?」そのような中小企業への無料相談も行なっています。是非、お声がけください。



<本コラムの印刷版を用意しています>

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


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なお、冒頭の写真は写真ACからbBearさんご提供によるものです。bBearさん、どうもありがとうございました。


 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


HP:StrateCutions

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