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第60回

信用保証制度見直しによる予想される影響と対策(2)

落藤 伸夫 2018年5月28日
 

 本年4月実施されている信用保証制度(信用補完制度)見直しによる影響は今のところ耳にしていませんが、金融機関には動きが見られています。東京信用保証協会の保証付き融資の利用状況を金融機関別に見ると、メガバンクの割合が大幅に減少し、代わりに信用金庫などの地域金融機関が増加したそうです。見直し骨子として「信用保証協会と金融機関の連携」が示されたことを鑑み、金融機関が「保証協会と連携して中小企業を支えていく」もしくは「別の顧客・ビジネスを目指す」を選択しているようです。 


予想される影響

 先週、保証制度見直しの影響として以下を挙げました。 ・提供を求められる資料が増える ・返事が遅い ・消極的な返事が増える(信用保証付融資のみの金融機関) その理由は、見直しにおいて「信用保証協会と金融機関とが連携した支援」というタイトルで、「信用保証協会と金融機関との連携を法律上に位置づけ・・・プロパー融資(信用保証なしの融資)と信用保証付き融資を適切に組み合わせ、信用保証協会と金融機関が柔軟にリスク分担を行っていくべく・・・連携を図る」とあるからです。

 金融機関は、これまでは「この企業は債務者格付けではプロパー対応ができないので、信用保証協会が保証承諾した場合は対応しよう」と考えたら、信用保証書を待っていれば良かったのかもしれません。しかし、今後はこうはいかないでしょう。「この企業は、現状は決して楽ではないが、企業努力を重ねることにより事業継続が可能と考えられる。申込金額の満額は難しいが、一部をプロパー融資で対応しよう。残りは事情を説明して保証協会に応援を要請しよう」と連携を求めなければならなくなるのです。

 このため金融機関は、今まで求めなかった資料の提出を求める可能性があります。その審査は「受け取った資料を添付すれば終わり」という簡単なものではありません。チェックし、どんな示唆が得られるか、それでどう判断するか、意見を付さなければなりません。融資課長や支店長からの意見も取り入れてブラッシュアップします。つまり、時間がかかるのです。その結果、全案件で前向きの判断を下せるとは限りません。「一度は『支援しながら融資しようと考えたが、少しリスクが大きすぎる』と考えて消極的な判断に至る可能性も、少なくないでしょう。 


中小企業として、どんな対策が打てるか?

 このような状況に「金融機関や保証協会の都合で中小企業にしわ寄せが来るのは許せない。断固撤回すべきだ」という意見もあるでしょう(私の周囲にも、現実に存在します)。しかし、この見直しは「金融機関に、中小企業にもっと親身に対応し、信用保証に頼り切るのではなく、自らプロパー融資で支援できるようになって欲しい」との意図に基づいています。軌道に乗ると、やる気のある中小企業へのメリットは測り知れません。先ほど挙げた影響は過度期の現象として、対策を取るのが賢明だと考えられます。 


必要とされる資料を提供する

 金融機関から資料を求められると不快な思いをされる経営者が少なくありませんが、金融機関勤務経験者として、私は「金融機関が資料を求めるのは『それでもって融資が可能になるかもしれない』と考えているからだ。快く応じた方が良い」とアドバイスしています。


我が社を「事業計画書」で説明する

 一方で「金融機関からの返事が遅い」とか「消極的な返事が増える」という現象には、中小企業の側からできることは少ないような気もします。しかし私は、それでも中小企業ができることはあると考えています。事業計画書を作成して、我が社について積極的に説明するのです。

 先ほどもご説明したように金融機関は、中小企業が提出した資料をただ添付するだけの審査はしていません。記載内容や数字をチェックし、経営者の方針や、決算書等には現れてこない隠れた強み、最新の動向などを汲み取った上で融資審査基準と照らし合わせ、「このような状況なら、我が金融機関の支援があれば当該企業は事業をもっと発展させられる」と判断して融資を決めているのです。

 そのような中、金融機関が求めた資料よりも、もっと貴社の隠れた強みや経営方針の妥当性を示せる資料があるかも知れません。金融機関は「当社は上向きトレンドである」ことを確認したくて試算表を求めるかも知れませんが、実は、現在は業績にはあまり反映できていない。でも「これまでは小売が中心だったが、今後は卸売業者への大口販売を拡大して売上と利益を改善したい。今は、その営業活動中で、卸売業者の取引先が増えてきた」という状況なら、それを示すことで納得を引き出せるかも知れません。

 隠れた強みや計画など、企業の全容を理解しているのは企業経営者です。「今後に向けて新たな戦略を練っている」等の事情について、経営者から説明されなければ金融機関としては知りようがありません(これを「情報の非対称性」と言います)。情報の非対称性が原因で、金融機関は、審査に時間がかかっています。いろいろな情報を仕入れたとしても、前向きな判断を下せない場合も出てきます。

 このように考えると「金融機関からの返事が遅い」とか「消極的な返事が増える」という現象にも中小企業としてできることがあります。貴社の現状や今後について情報の非対称性がないようにする、つまり情報開示をするのです。その方法としてベストなのが、現況分析した上で今後の計画を明らかにする「事業計画書」です。事業計画書を作成して我が社をしっかりと説明することで、予想される影響に対処することができるでしょう。それは一過性ではなく、持続的な企業の繁栄に繋がる可能性さえ、あるのです。 



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プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。

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