「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第179回

事業承継できる財務基盤

落藤 伸夫 2021年9月27日
 


新型コロナウイルス感染症の新規感染者数が減少しており、9月末で緊急事態宣言も解除できるかとの議論も活発化しているようです。フライングして第6波を招来するのは御免ですが、事業活動の制限が緩和するのは喜ばしいことです。今後もウイズコロナが続くと見込まれていますから是非、新しい事業環境でも通用するビジネスを構築して、再起を図っていきたいものです。


長く続くコロナ禍の中、持続を期するため借入過多となった企業が事業承継を目指す場合、代表者による債務保証がなくても済む会社にしておくことが望まれます。「経営者保証ガイドライン」に基づくポイントのうち、今回は「財務基盤の強化」について考えていきます。



経営者保証ガイドライン

事業は人のなせる業(わざ)なので、その主体はもともと個人とされていました。しかし事業主体を個人にだけ留めると永続性がないなどの弊害が生じることから、株式会社などの「法人(会社)」が事業主体となることが認められています。会社が事業主体となることで、個人では難しい大規模な事業展開も可能になりました。


一方で、会社が事業資金の調達を借入に頼る時、債務者は会社になるにしても、保証人に人(法人ではない自然人)が全く含まれなくても良いのかが問題になります。貸し手である金融機関としては、代表者が保証しなくても良いことを口実にずさんな経営をしてしまう可能性があるなら、保証人になるよう求めることになるでしょう。


では、その可能性がないなら、代表者保証を求めなくても良いのか?金融機関としては返済の確実性を確保することが至上命題なので、この側面についても検討しなければなりません。法人の借入において代表者保証を外すことができるかについて検討を行うにあたってのガイドライン(法律ではないけれど、当事者が則るよう期待されている基準等:準則)として経営者保証ガイドラインが定められました。金融機関は、債務者・保証人から「代表者保証を外して欲しい」などの要望があった場合には、このガイドラインをもとに判断することとなります。先週は「法人と経営者との関係の明確な区分・分離」を考えました。今週は、第2番目の「財務基盤の強化」を考えます。



財務基盤の強化

金融機関にとっては貸出金の回収が第1の命題だと申しました。では、どんな時に「あの会社への貸付は、代表者を保証人として求めなくても回収は確実だ」と考えられるでしょうか。財務基盤の強化が挙げられます。


財務基盤には2つの側面があります。第1は、会社が社内に十分な資産(ストック)を有していることです。例えば借入金はあるが、それを全部返済しても余るほどの資産があれば、その会社の財務基盤は十分と言えるでしょう。第2は、会社に十分な儲け(フロー)があることです。月々に順調な売上があり、そこから原価(材料費や製造に従事する従業員給与など)や経費(売上に係る費用や給与、間接部門の費用や給与等)を差し引いたとしても返済するに十分なお金がいつもキープできているなら、その会社の財務基盤は十分と言えます。



現在の財務基盤だけでなく将来を評価することも

上の説明から「十分なストックがある、あるいは十分なフローがある優秀企業だけが代表者保証を外せるのだな」と感じられたかもしれませんが、実はもっと他の視点で評価してもらえる可能性があります。経営者保証ガイドラインは「準則」であって「必ず守らなければならないルール」ではないので、弾力的な取扱いも可能なのです。金融庁は「『事業性経営者保証に関するガイドライン』の活用に係る参考事例集」を発行しています。

(上記の参考事例集)

https://www.fsa.go.jp/status/hoshou_jirei.pdf


当該事例集のⅠ.事例1には「事業計画の実現可能性等を考慮して、経営者保証を求めなかった事例」が挙げられています。宿泊業者が新事業計画に基づく取組みを行うため10億円の運転資金を調達しようとした時、事業計画の実現可能性が高いと評価、事業計画の達成には運転資金の貸出支援が不可欠と判断されたことなどから、代表者保証の免除が認められました。この金融機関は財務基盤を現状に限らず、将来の財務基盤を鑑みて代表者保証を外したと解釈できるでしょう。


この事例は、コロナ禍対応のため借入金が過大となった企業でも、財務基盤強化も視野に入れた事業計画を策定して取り組むことで、金融機関に代表者保証の免除を検討してもらえる可能性があることを示唆しています。




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なお、冒頭の写真は 写真AC から beauty-box ご提供によるものです。beauty-box さん、どうもありがとうございました。


 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


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