「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第115回

事業改善の意味するもの・異なるもの

落藤 伸夫 2020年6月1日
 


新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言が5月25日に全国で解除されたことを受けて、飲食業などこれまで活動停止を余儀なくされていた業種でも徐々に再開が始まってきました。テレビ報道などから「すぐには以前の活気は戻ってこないと思うが、この状況を耐えながら回復を期したい」という企業からの声が聞こえてきます。

とても素晴らしいと思います。ぜひその意気で事業改善に向けて努力して頂きたいと思います。今回は、大変な状況を経験した後の事業改善が「今までの強化・増強」とは異なることについて考えていきたいと思います。



当面の資金調達以外に行うべきこと

筆者が事業改善に向けた努力の必要性を強調するのには理由があります。中小企業信用保険公庫(何回かの統合を受け、現在は日本政策金融公庫)に昭和60年入庫し、それから一貫して中小企業信用保険(信用保証協会が運営する信用保証制度のバックアップ)に携わってきた筆者は、地価が大暴落したバブル崩壊、いくつもの金融機関が破綻した金融危機、IT業界を中心としたITバブル崩壊、アメリカ金融システムの破綻が全世界で恐慌を引き起こしたリーマンショックなどに遭遇しました。阪神淡路大震災、東日本大震災、最近の大規模な台風など自然災害も、企業活動に甚大な影響を受けています。


いずれの場面でも、生き残って今でも元気な、いや以前に増して飛躍している企業もあれば、努力の甲斐なく退場を余儀なくされた企業もあります。筆者は公庫で主に中小企業信用保険の審査を担当していました。信用保証した中小企業が倒産等して信用保証協会が代位弁済すると共に、公庫に保険金を請求します。その審査を、行っていたのです。例えばバブル崩壊後は、労働環境が整備された今では考えられませんが、保証協会からの保険金請求書が普段の数倍に増え、毎月200時間にも及ぶ残業をしていました。月曜日に出勤して通常業務と深夜に及ぶ残業をこなし、会社で仮眠して翌朝から通常業務と深夜に及ぶ残業をこなす、そうやって土曜日の夜に帰宅するような生活を約1年、続けたこともあります。


そうやって遭遇した倒産企業(1万8,000は下らないと思います)には、ある共通点がありました。資金調達ではありません(これら企業は資金調達に成功していました)。しかし数ヶ月~数年後に倒産してしまった企業は、本当の意味での事業改善を行なっていなかったのです。



事業改善は「強化・増強」とは異なる

倒産企業を詳しく見ると、もう一つポイントが見えてきました。これらの企業も、バブル崩壊等のインシデントが過ぎ去った後から経営努力しています。但し「試してみて、うまくいかなくても、それを継続している」ことが多いのです。例えばある飲食店を見ると、インシデントが起きた時点で「チラシ配布など近隣への営業活動を強化する」としていました。その後、数年にわたって追加で運転資金を融資した時もインターネット活用なども追加しながら取り組んだのは「営業活動の強化」が中心だったようです。そして遂に代位弁済に至るのですが、そこにも「景気低迷等が原因で、長年にわたる営業努力が実らなかった」と説明されていました。


一方で生き残って今でも元気な、以前に増して飛躍している企業は、「うまくいかない」と思えば柔軟にアプローチを変えています。ある飲食店は、当初は近隣世帯をターゲットとしていましたが、不況で財布の紐が固くなると「お昼に必ず外食しなければならない近隣の会社をターゲットにしよう」と切り替え、メニューを工夫したりお弁当のテイクアウトにも対応しました。そして今回のコロナ禍で出社停止・テレワークが浸透すると「近隣世帯をターゲットにしないと生き残れない。ソーシャルディスタンスへの対応で店舗を改装しなければならないし、少人数でも利益を出せるようメニューやサービスも変えなければならない」と考え、当面の運転資金に加えてこれら対策に係る設備資金等も調達したのです。



「自社の経営資源をどう活かせるか」の視点を!

失敗しても同じ取組みを続けてしまう企業と、時には自社のあり方まで柔軟に再構築する企業に、どんな違いがあるのか?2つの飲食店の例から「この地で○年にわたり○○を提供して固定客も確保してきた飲食店という経営資源を、今後はどのように活かすべきか」という視点の有無が結果を左右したと理解できます。その視点があった店舗は「今は働く人が昼食に困っている」、「今は巣篭もりしている家族が変化を求めている」と気付き、自らを変えていく事業改善を行っています。一方で、その視点がないと「離れたお客を取り戻すには、営業活動しかない」と考え、同じ試みを続けてしまうのです。


新しい試みの心理的ハードルは時として高いのですが「会社の存続に何が必要か?」を突き詰めると答えが出てきます。それを行う勇気が、今、求められています。




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なお、冒頭の写真は写真ACからfujiwaraさんご提供によるものです。fujiwaraさん、どうもありがとうございました。



 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


HP:StrateCutions

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