「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第97回

新時代を迎え、対応する(新年ご挨拶)

落藤 伸夫 2020年1月14日
 


2020年の幕が開けて1週間、皆さま良いスタートを切られたと思います。今年は特別な年となりそうですね。夏には東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。一方で、不況の足音が聞こえてきました。もともとオリンピックが終わった後には不況になる場合が多いと言われていますが、今回はそれよりも前に強い気配を感じます。マダラ模様の新時代に突入するスタートラインに私たちは今、立っていると感じられます。 

一方で筆者としては、金融検査マニュアル廃止による影響についても、企業経営者の皆さんに関心を持って頂きたいと考えています。金融庁は昨年12月18日、金融監督庁時代の1999年7月に制定して約20年にわたって金融検査の拠り所としていた金融検査マニュアルを廃止したと発表しました。これにより中小企業の資金調達環境が新時代に突入することに間違いありません。今回は、この展望について考えてみたいと思います。

<金融庁による発表>

https://www.fsa.go.jp/common/law/manualLink.html


金融検査マニュアル廃止の意図

金融検査マニュアル廃止が廃止されたのは、それが存続していると「日本型金融排除」を克服することはできないとの危惧感によるものと推察されます。日本型金融排除とは、本来なら金融機関のサービス(融資を含む)を受けられるはずの企業(個人事業主を含む)が、担保や保証による保全に過度に依存する金融機関の姿勢が理由で、サービスを受けられない現象のことを指しています。

金融機関がこのような姿勢になった理由の一つとして、金融検査マニュアルが不良債権の排除を目的としてスコアリング・信用格付けによる審査プロセスを求めたことが挙げられます。実際、このやり方では中小企業への金融支援が手薄になるとの声があがったことを受けて金融庁は、幾度も緩和措置を講じてきました。しかし「金融検査マニュアルを裏付けとしたスコアリング・信用格付けの枠組みが形式的に残っている限り金融機関はそこから抜け出ようとはしない、日本型金融排除を排除することはできない」と、金融庁は考えたようです。それで「おおもとを絶つ」決断に至ったと推察されます。


事業性評価の二面性

金融検査マニュアル廃止後に来る世界は何か?「事業性評価」であることが、既に発表されています。金融庁は「平成 26 事務年度 金融モニタリング基本方針 (監督・検査基本方針)」を発表、金融検査に「企業の事業性を評価する取組み(事業性評価)を行なっているかについて検証すると表明しました。

事業性評価には、中小小企業の目線で「担保・保証を十分に提供できなくても、事業性が認められて融資が受けられる」との意味合いがありますが、実はもう一つの意味合いがあります。「金融機関が存続するには、事業性評価を行うしかない」という意味合いです。新聞の報道等でご存知の方も多いかと思いますが、金融機関は低金利や設備投資の低迷等による借入需要の低下などの理由から収益状況が悪化しています。本業である「皆さんから預金してもらい、それを原資に融資する」という事業で赤字となっている金融機関も少なくありません。これは金融機関の屋台骨を揺るがすような事態です。

なぜ、このような状況になってしまったのか?直接の原因は低金利と借入意欲の低下ですが、一方で中小企業の「資金調達したいのにできない」という状況はあまり改善されていません。それがもし金融機関の「借入申込みがあっても、少なからぬ企業について『十分な担保や保証などの保全策がない』ので貸せない。自分たちが貸せると考える先からの申し込みが少ない」という理由なら姿勢を改めてはどうか、というのが金融庁の考え方です。


金融機関の状況と中小企業の対応

以上のように、中小企業と金融機関の両方の事情を踏まえて推進されている事業性評価ですが、金融機関の対応状況は芳しいとは言えないようです。企業の事業性を鑑みる融資は、以前は特に地域金融機関の多くにとってお手のものだったはずですが、約20年にわたって行なわなかったためにノウハウが失われてしまった金融機関が少なくありません。「起死回生策は事業性評価なのに、それができない」という切迫した状況にあるのです。

一方で事業性評価が「会社を良くしたい。もっと儲かる会社に生まれ変わりたい」と考えている中小企業にとって追い風であることは間違いありません。これを有効利用しなければ、中小企業も金融機関も、明日は見えてこないという状況に陥ってしまう可能性があります。

この場面で中小企業と金融機関を結ぶ架け橋となり、中小企業と金融機関ひいては地域の活性化に貢献することがStrateCutionsのミッションです。本シリーズコラムの発信や、個別案件で事業性評価に向けた説明書類・事業計画書の策定支援などを行なっています。しっかりと取り組んでいく所存ですので、今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。



<本コラムの印刷版を用意しています>

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。

<印刷版のダウンロードはこちらから>



なお、冒頭の写真は写真ACからfujiwaraさんご提供によるものです。fujiwaraさん、どうもありがとうございました。


 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


HP:StrateCutions

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