「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第114回

次に来るかもしれない試練に備える

落藤 伸夫 2020年5月25日
 


新型コロナウイルス感染症の蔓延を防ぐため発令されていた緊急事態宣言が5月14日に一部地域で解除されました。宣言が継続されている地域でも感染者の減少を確認できるところもあり、終息に向けてあともう一歩という状況でしょうか。「よし、今まで以上に仕事を頑張るぞ!事業を盛り上げていくぞ!」その意気です!

「コロナが終息したらダメージを取り返してやる、今まで以上に効率化を図って収益のあがる体質に変わっていく」という気持ちを盛り上げていくことは、実はとても大切なことです。そういう気持ちになり、キープし、実績をあげることが会社を守ることに繋がるからです。


リーマンショック後に起きた次なる試練

コロナ禍での金融支援について「リーマンショック時と同様の金融支援」とか「超える支援」等の表現を耳にします。日本政策金融公庫等による特別貸付や信用保証協会による特別保証がリーマンショック時と同様に企業の資金繰りを支えました。今回は、民間金融機関をワンストップ窓口とする制度が準備されたり、金融機関が独自に支店の決裁権限を拡張し迅速に対応するなどリーマンショック時にはなかった工夫もなされました。

もう一つ、リーマンショック後に起きたことにも注意を向けることが大切です。未曾有の事態を乗り越えるべく資金調達したり返済猶予(リスケジュール:リスケ)を受けた企業について、金融機関は企業ができるだけ早く「平常に回復」することを期待しています。回復とは、売上や利益など事業面だけでなく、リスケの解消や借入金額・借入比率の減少なども意味しています。

「分かってはいるけどな、そう簡単に業績は回復しないんだよ。デフレなど厳しい景気状況だし。ましてリスケの解消や借入金額の減少など、もっと先の話だ。」その事情とお気持ちは、とても分かります。一方、金融機関の気持ちも理解できるので、その間にいる者として胸を痛めています。

金融機関が企業に対し「コロナが終息して平時に移行したら、売上・利益などの事業側面での回復に努力して、借入金額や借入比率などの財務側面でも改善に向かってもらいたい」と考えるのは、次なる支援を考えてのことです。多くの企業は増えてしまった毎月の返済を自力では行えないでしょう。資金繰り資金を借り入れる必要があります。しかし、財務面での回復(その兆し)がなければ、金融機関は新たな支援はできません。それは企業にとって新たな、そして大きな試練です。


リーマンショック後にあった「出口戦略」

「そんなことを言わず、永遠にリスケを続けてくれれば良いではないか。そして返済資金も特別措置として貸し付けてくれれば良いではないか!」そのお気持ちは分かりますが、金融機関には応じにくい事情があります。

コロナ禍で事業がままならない、業種によっては店舗を開けることさえできない企業も生き残って欲しいとの願いで貸出やリスケに応じると、それは決算書をはじめとして金融機関の経営に影響を及ぼします。リスケした貸金について、回収できない可能性に応じて引当金を積まなければなりません。資金繰り資金の貸出に応じたことで企業が借入過多となり、企業ランク(格付け)が低下してしまう可能性があります。「いや、今は自らを顧みず企業を支えよう」と金融機関が考えたとしても、限界があるのです。

人や企業、社会全体からお金を預かり運用や送金を行う金融機関は、健全に事業を行う責務が課されています。自己資本比率などの指標が基準以下だと、銀行業務そのものができなくなってしまうのです。

では、どうすれば良いのか?貸出先である企業が売上を増やし利益を向上させることでリスケを解消してくれれば、借入金を減らして健全な企業体質に変わっていく途上にあれば、金融機関は支援を行えるようになります。

実際、政府は2012年4月に「中小企業金融円滑化法の最終延長を踏まえた中小企業の経営支援のための政策パッケージ」を打ち出し、金融機関がコンサルティング機能を一層発揮するなどの対応策を示しました。リーマンショック以降、政府は金融機関に「緊急時であることを鑑みて、企業からのリスケ要望等には応じてもらいたい」と声掛けしていましたが、今度は企業にも事業改善を期待していることを(間接的ながら)示したのです。企業の頑張りを事業改善計画書などで目に見えるように示し、地道に取り組んで成果の兆しが見えてきた企業等に「この企業は頑張っている。我々も頑張って支援しよう!」と判断するよう金融機関に期待したものと考えられます。

コロナ禍が落ち着きを見せて事業再開への取組みを始める時点で、今後の展開を織り込んでおくことは大変に重要です。「成り行き任せで回復を待とう」ではなく、「早くリスケを解消できるよう、利益で返済できるよう」を目標に取り組むのです。目標と取組みをはっきりと見える化すると、自社での取組みを推進できるだけでなく、支援する金融機関にとっても前向きになる題材になります。事業改善の取組みそのものを支援してくれるかもしれません。是非、念頭に置いて頂ければと考えています。



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なお、冒頭の写真は写真ACからbBearさんご提供によるものです。bBearさん、どうもありがとうございました。



 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


HP:StrateCutions

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