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「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第55回

ものづくり補助金を活用する

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 

 2月28日(水)満を持して平成29年度補正「ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金)」の公募が開始されました。生産性の向上に資する革新的サービス開発や試作品開発、生産プロセスの改善を行うための設備投資等を行う中小企業・小規模事業者を支援する補助金です。


 筆者は、もともと「補助金をもらいたいから補助事業を検討する」との考え方には賛成していませんが、ものづくり補助金に関しては顧問先に「活用を考えてみましょう」と提案しています。なぜなら「ものづくり補助金を支給してもらえるような題材が自社にないか」と探すことで、自社をしっかりと見据えることができるからです。そこで見えてくることは、資金調達ばかりでなく、自社の事業を発展させていく上でも重要であることが少なくありません。



自社を分析する

 ものづくり補助金の活用を考える一番のメリットは「自社の強み・弱みをしっかりと分析し、儲かる体質への変革をしっかりと意識するよう促される」ことです。ものづくり補助金受給を目指して「生産性の向上に資する革新的サービス開発や試作品開発、生産プロセスの改善」のネタがないかを探していく過程で、企業は、自社の強みや弱みをしっかりと分析するよう促されるでしょう。新製品や新サービスは、多くの場合、企業の強みがベースになっています。一方で、その試作や量産にあたって自社の弱みが浮き彫りとなることが少なくありません。


 強みを活かしたり弱みに対処したりする取組みは、平時だと、意外と後回しにされるものです。しかし「新製品・新サービスを生み出したい。それで儲かる体質に変わりたい」という目標があると、しっかりと取り組めるようになります。是非、この効果を享受して頂きたいと思います。



事業環境を分析する

 ものづくり補助金の活用を考える2番のメリットは「機会や脅威など、事業環境をしっかりと分析して対応するよう促される」ことです。新製品や新サービスの開発や量産・提供を検討する場合には、せっかくの投資が無駄になっては困りますから「新規投入する新製品・サービスの需要はあるだろうか?トレンドの変化でいっぺんに古臭くなったり、技術革新などで簡単に追随者が現れたりしないだろうか」等について、しっかりと検討することでしょう。

 

 潜在需要の存在や新技術の活用よる製造可能性等の事業機会があるかの分析や、顧客嗜好の変化による需要減退や模倣者の出現等の脅威がないかについての検討は、多くの場合、平時にはあまり顧みられることはありません。しかし新製品・新サービスの開発では、それらの分析・検討が死活を分けることになります。勢い、身の回りのチャンスを探したり、潜んでいるリスクに注意深くあるように促されることになります。 



経営改善に取り組む


 ものづくり補助金の活用を考える第3番のメリットは「経営改善するきっかけになる」ことです。新製品や新サービスを開発するとは、今までとは違った取り組みを実行することです。今までより時間や努力、資源や資金が必要になります。そして多くの場合、その時間や努力、資源、時間が十分にある訳ではありません。  「この無駄にしっかりと取り組めば大きな成果があがるはずなのに」と思うことであっても、普段だと、なかなか取り組むことができません。きっかけが掴めないのです。しかし新製品・新サービスを開発する時なら、本腰を入れて取り組むことができるようになります。


 ものづくり補助金を受給している企業は、経営改善にもしっかりと取り組んでいるという印象があります。「経営改善しているから、補助金が受給できる」という構図もあると思いますが、逆の「補助金を申請したから、受給できたから、経営改善に真剣になった」という構図もあります。是非、その効果を狙ってみてください。 



会社を強くするきっかけとして補助金に挑戦する


 「補助金は、受給できないリスクを考えると前向きに取り組めない」と言われる社長さんもおられます。しかし、以上のように考えると、ものづくり補助金に応募するため「補助金を支給してもらえる題材が自社にないか」と検討してみることには大きなメリットがあります。このメリットは、補助金を受給できなくても、応募した企業は必ず享受できるメリットです。


 そして、ものづくり補助金の応募書類(事業計画書)を作成したら、取引のある金融機関(地元密着型のメイン金融機関)に相談してみることをお勧めします。補助金は、補助対象事業にかかる経費を先に自己負担する必要があるため「つなぎ融資(自己負担してから補助金を受け取るまでの資金負担に関する融資)」が必要になる場合が多いからです。また、ものづくり補助金の申請を検討している中小企業を支援する地元密着型の金融機関(地方銀行・第二地銀・信用金庫など)は少なくありません。


 そして最大のメリットは、金融機関に「ものづくり補助金の受給申請を真剣に考え取り組んでいる企業だ」と認識してもらえることにあります。それは「貰えるものは何でも貰いたいと考える企業」という意味ではありません。「自社と事業環境をしっかりと分析し、経営改善に積極的な企業」として認知されるという意味です。「事業性評価融資」が広まりつつある今、金融機関は目を皿のようにして、そのような中小企業を探しています。が、自らがそのような企業であると名乗り出るチャンスはあまりありません。ものづくり補助金に取り組み、その旨を金融機関に伝えることは、その名乗りを行う数少ないチャンスとなるのです。是非、そのチャンスを活用してください。




<本コラムの印刷版を用意しています>

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙1枚のボリュームなのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達できる企業になるための方法をしっかりと学んでみてください。



印刷版のダウンロードはこちらから

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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