「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第311回

金利上昇が中小企業金融に及ぼす影響

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤伸夫

 

昨年秋に本コラムを終刊として約9カ月たちました。その間に今までになかったほどの大幅な中小企業金融の変更が起きています。その中には金融環境の変化によるものもあれば、政策的な変更もあります。これを整理して念頭に置くことがとても重要なので、今回から数回にわたり、最近の中小企業金融の変更点(変わってきた点、変更された点)をまとめます。



金利ある世界へのシフトと預貸率の上昇

中小企業金融のみならず金融において最大の話題は「金利ある世界」へのシフトです。日本銀行は6月15~16日の金融政策決定会合で政策金利を31年ぶりに1%に引き上げました。変動金利型の借入金がある中小企業や住宅ローンがある個人は借入金利の上昇、借入がない個人・会社は預金金利の引き上げで実感しているでしょう。


「金利の上昇で借入のある者は苦労するが、預金は増えるだろう。金融機関は預かったお金を運用つまり貸出しなければならないので、資金調達は容易になるのではないか?」その逆の現象が見られています。一部の金融機関で預貸率(貸付金/預金)が上昇しているからです。

「高金利だから利息を求めて預金が増えるのでは?」確かにその動機は強まるでしょう。しかし問題は他要素とのバランスです。日本銀行が金利引上げを決めた理由の一つはインフレ防止、電子部品や建設資材、石油製品等の価格が大幅に上昇、企業・人々は預金するより物資確保(現在の必要量に加えて将来に備えた量も)に使っているようです。不足分補充のため借入を起こす場合さえあり、預貸率上昇の一因になっています。

加えて以前よりはるかに投資が身近になり、株など金融商品の価格も魅力的になっているため預金に回らないという事情もあります。更には、物価高対応・人手不足対応に向けた手元資金確保や、効率化のための設備投資への需要、激動の時代を乗り切るための事業承継やM&Aに向けた需要も増えているとみられています。


以上のようなメカニズムが働いているので金融機関は、金利が上昇する環境ながら貸出金に見合う預金を確保できていない場合が少なくなく、このため期待されたほど貸出は拡大できていない金融機関もあるようです。



誰への貸出が増えるかの観点

「預貸率の問題がある金融機関があることは分かった。しかしそうでない金融機関は貸出に積極姿勢だろう。苦境にありこれまで資金調達できなかった中小企業でも資金繰り資金を確保しやすくなるのではないか。」もしそれが「事業改善して儲かる企業になる努力をせずとも、延命に必要な資金を借りることができる」という期待なら、油断しない方が良いでしょう。


金利(借入コスト)上昇下で貸出しが増えるとは需要が多いということ。手元資金に必ずしも余裕がない状況では、なけなしの資金は条件の有利な先に回したいとの思惑に繋がるからです。

有利な先とは財務内容が良い、業容が安定もしくは成長しており今後も継続すると考えられる、あるいは将来性があり今後に高い成長性が見込める先です。加えて財務状況が開示されて透明性がある、メイン取引なのでビジネス資金の動きを的確に把握できるなども含まれます。


逆に不調な企業や、財務状況等に大きな問題はなくても財務状況の開示がない企業、資金移動の全容を把握できないサブ取引以下の場合には、金融機関によっては「推進対象から外れる」と考えるかもしれません。



企業として可能な対応策

では苦境にあり、資金調達が容易ではなかった企業はどう対応すれば良いのか?今こそ事業改善に本腰を入れましょう。赤字企業は黒字化を目指す、債務超過企業はその解消を目指すのです。「一朝一夕には無理だ!」ではまず黒字化・債務超過解消を目標とする計画を策定しましょう。

黒字化は計画策定後3年以内、債務超過解消は5年以内の実現が目安です。策定してすぐに金融機関に提出するよりも、実行して成果が出ていることを残高試算表で確認できるようにするのが効果的です。資金繰り表を作成して取組みの効果を見える化するのも良いでしょう。加えて毎月・毎四半期の試算表を早めに作成、 経営計画を見せながら経営・事業状況を報告します。


こうすれば確実に資金調達できるとお約束できるものではありませんが、経営改善努力を継続する以外に不調企業が資金調達の道を切り開くのは困難です。今こそ正念場と考えて事業改善に取り組みましょう。「誰かと相談できれば良いのだが。」地域のよろず支援拠点などにご相談下さい。Stratecutionsでもご相談に応じています。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>

https://www.innovations-i.com/shien/id/panf_id/?id=858



【筆者へのご相談等はこちらから】

https://stratecutions.jp/index.php/contacts/



<日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル>

https://www.amazon.co.jp/dp/B0DYDL46H6/




なお、冒頭の写真はChatGPTにより作成したものです。

 

プロフィール

落藤伸夫(おちふじ のぶお)

中小企業診断士事務所StrateCutions代表
合同会社StrateCutionsHRD代表
事業性評価支援士協会代表
中小企業診断士、MBA

日本政策金融公庫(中小企業金融公庫~中小企業信用保険公庫)に約30年勤務、金融機関として中小企業を支えた後、事業改善手法を身に付け業務・経営側面から支える専門家となる。現在は顧問として継続的に企業・経営者の伴走支援を行っている。顧問企業には財務改善・資金調達も支援する。

平成27年に「事業性評価」が金融庁により提唱されて以来、企業にも「事業を評価してもらいたい。現在の状況のみならず将来の可能性も見越して支援してもらいたい」との意識を持ち、アピールしてもらいたいと考えて『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?』コラムを連載(2017年1月スタート)。当初は読者として企業経営者・支援者を対象していたが、金融機関担当者にも中小企業の事業性評価を支援してもらいたいと考え、2024年1月からは『「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus』として連載を再スタートさせた。

現在は金融機関職員研修も行うなど、事業改善と金融システム整備の両面からの中小企業支援態勢作りに尽力している。

【落藤伸夫 著書】

日常営業や事業性評価でやりがいを感じる!企業支援のバイブル

さまざまな融資制度や金融商品等や金融ルール、コンプライアンス、営業方法など多岐にわたって学びを続けながらノルマを達成するよう求められる地域金融機関渉外担当者が、仕事に意義を感じながら楽しく、自信とプライドを持って仕事ができることを目指した本。渉外担当者の成長を「日常営業」、「元気な企業への対応」、「不調な企業への対応(事業性評価)」、「伴走支援・経営支援」の5段階に分ける「渉外成熟度モデル」を縦軸に、各々の段階を前向きに捉え、成果を出せる考え方やノウハウを説明する。

Webサイト:StrateCutions

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