「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第150回

「地域で顧客を創造する」構図を考える

落藤 伸夫 2021年2月22日
 


先回の記事で、事業性を高めるアクションプランを立てる時に参考にできる例として、東京新宿の早稲田商店会及び大隈通り商店会で行われている独自のデリバリーサービス「わせくまデリ」について、お話ししました。この取組みをご紹介したのは、中小企業がこれからを考える上で、とても参考になると思ったからです。今回は、その点について考えてみましょう。



地域の「志の環」で顧客を創造する

行動制限や自粛ムードが1年近く続くという(それも、3月初頭にはまる1年になっていまいます!)予想外の展開となったコロナ禍を生き残るべく、日本中の大半の企業が、大企業も中小企業も必死に模索する中、政府も、中小企業に対して今までなかった資金調達支援策で支えています。今春からは「民間金融機関を通じた資金繰り支援(実質無利子融資の年度内実施、新保証制度保証料補助)」が予定されていると、成立した第3次補正予算に関する資料に掲げられていました(以下資料のP.17)。

https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2020/hosei/pdf/hosei3_yosan_pr.pdf


新制度ではアクションプラン策定が前提になる方向性です。但し「日頃、改善が必要と感じる課題にPDCAサイクルを回して取り組んでいけば良いのだな」と考えると、落とし穴にはまってしまうかもしれません。ここで求められるのは事業性を高めるアクションプラン、端的に言えば売上や利益の拡大に繋がるアクションプランです。


「今の世の中、そう簡単に売上・利益が増えるとも思えないが。」ドラッカーの言葉が参考になると思います。ドラッカーは「企業の目的は顧客の創造だ」と言っています。これまでお客様でなかった人々をお客様にできれば売上・利益が増大し、事業性が高まります。今まで他のことをしていた人に行動を変えてもらい、お客様として創造する方法として「意味を教える」方法があります。例えば今まであまり弁当を買わず、自分で食事を作っていた人には「料理時間をたまには、何か新しい試みをする時間に変えませんか」と提案できるでしょう。


その中で早稲田商店会及び大隈通り商店会の「わせくまデリ」では、弁当を食べることの意味合いに「学生への支援」そして「地域振興」を加えました。行動を変える理由に「自分のメリット」だけでなく「他人のメリットに貢献する志」を加えたことで、「学生や地域に貢献できるチャンスを生かせるのは、嬉しい」と地元の人々も喜んでいると報道されていました。



同業者が集まると「競争」か、「相乗効果」か

「しかし、同業者が集まると競争になってしまうのではないか?顧客を創造するとはいえ、そんなに多くない顧客を同業者と分け合う競争は、辛い立場にある企業としては避けたい。自分単独で行動した方が良いのではないか」という考えもあると思います。否定はしません。一方で、同業者が1つに集まり、ひいては競争することで相乗効果が生まれる現象にも注目できます。デパートや商業集積にあるフードコートは、まさにその構図です。ラーメンやたこ焼き、寿司など同一メニューの店舗が集まったフード・テーマパークさえ存在するほどです。


一面からすると血で血を洗う熾烈な「競争」なのに、実は「相乗効果」が働いているという構図は、どうして生まれるのでしょうか?その要因を分析すると、理論的には「差別化が働いている」、そして心理的には「頑張るぞというメンタリティーが働いている」と言えると思います。自店の向かいに競合店があるという状況を、共倒れの構図にも、共存共栄の構図にもできます。どちらになるのかは「偶然」の働きではないでしょう。両者の心持ちだと思います。「競合店も、我が店と似たようなメニューか。がっぷり四つに組むと底無しの価格競争になってしまうので、差別化して我が店の魅力を打ち出そう。競合先を目指してやってきたお客様に『おや、ここにはこんな店があったのか。だったら次は、こちらに入ってみよう』と思ってもらえるようにしよう」と考えて、戦略的に行動することが相乗効果につながるのです。



多層化した社会の中で共存共栄の構図を作る

このように考えてみると、地域は実は、ずっと昔の楽市楽座時代、いやその前から、「差別化と『頑張るぞ!』を原動力に、集積を両者疲弊ではなく相乗効果の仕組み、舞台」として機能してきたと思います。これを生かさない手はありません。また最近は、インターネットという仮想空間が「地域」のように機能する姿がうかがえます。インターネット空間は「田舎に住んでいても大都市の顧客を狙える」というチャンスを生み出しましたが、見方を変えると「競争相手が増えた」熾烈な競争の舞台です。こちらでも生き生きと商売をしているのは、特に中小企業は、差別化と「頑張るぞ!」を原動力に相乗効果を作り上げ、顧客を創造して自社に呼び込んだ企業だと感じています。


待望のワクチン接種が2月17日から始まり明るい兆しが見えてきました。その中で会社を持続させ将来に繋げていけるよう、是非、「顧客の創造」を目指してください。




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なお、冒頭の写真は写真ACから はるやんパパ@Tokyo さんご提供によるものです。はるやんパパ@Tokyo さん、どうもありがとうございました。



 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


HP:StrateCutions

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