「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第132回

地方銀行は多すぎるか(3)事業性評価できることが存在意義になる

落藤 伸夫 2020年10月5日
 



「地方銀行の数が多すぎるのではないか」との問題意識について、中小企業の目線から3回にわたって考えているところです。もともと地域に必要な資金をキープするために設立された地域金融機関は、ITの発達などで存在意義を失ったかに見えましたが、今、ポンプ機能を果たす存在として見直されるべき時期にあると思います。ポンプ機能とは、日銀の超緩和措置により金融経済世界に溢れているお金を、企業が活躍し人々が生活する実体経済世界に汲み上げる役割のことをいいます。3回目では、融資における事業性評価の重要性について考えます。



融資をすることで果たされるポンプ機能

金融経済世界のお金を実体経済世界に流す方法の一つが、金融機関が企業に融資することです。ある企業が新規事業のため借入を起こすと金融経済世界にあるお金が実体経済世界にお金がシフトします。機材の購入や働く人の給料などにお金が使われることで回っていくのです。逆に言うと、融資などで金融経済世界のお金が実体経済世界にシフトしないと、本当の意味での景気高揚はありません。財やサービスが生産されて消費者に買われる、つまり事業者の所得が増え、それが従業員の給料となり、生産された財やサービスを買う原資となるという、私たちが学生の時に習った経済活動につながらないのです。


一方で、実体経済が潤わないのになぜ、日銀は金融緩和措置で満足しているのか?実体経済世界にシフトしなくても、お金が金融経済世界に存在することでGDPが上昇するからです。金融経済世界にはお金が溢れており、金融商品を買う気が満々のプレイヤーが山ほどいます。そこで「○○という金融商品は価格が上昇するらしい」という噂が流れれば、その商品は買われ、実際に価格が上昇します。新しい金融商品(例えばビットコイン)が買われて価格が付き、人気が出れば価格が上がります。これらはGDPの押し上げる要因なので、政策効果として、これで十分と考えているのかもしれません。


話が外れました。元に戻すと、金融機関が融資することで、お金が実体経済世界にシフトされます。つまり、ポンプとして上手く機能する金融機関がある地域では経済が潤い、ない地域では停滞するという状況が生じ得るのです。今や(明治・大正時代と同じように)上手く機能する金融機関の有無が、地域の命運を左右します。



単純ではなくなったポンプ機能

ここで、金融機関が果たすべきポンプ機能が、昔ほど単純ではなくなったことに注意が必要です。例えば高度成長期では日本経済全体が上昇機運にあったので、貸し出す先の選択は今よりも簡単でした。衰退産業だったり海外との激しい競争にさらされる一部業種を避けていれば、「日本経済と足並みを揃えて成長していくだろう」と考えても大きな判断ミスはなかったのです。一方で今や、長いデフレスパイラルの末に米中経済摩擦の煽りを受け、2020年春からは新型コロナウイルス感染症の影響で戦後最大となる景気の後退に見舞われてしまう状況です。


このような時期、金融経済世界でお金が溢れているからといって、リスクの高い企業に積極的に融資できる訳ではありません。逆に、お金が溢れているので金利は安くなっており、金融機関は収益力が低下して財務体質も弱体化していますから、貸し倒れた場合のダメージは以前より大きいのです。今まで以上に慎重に判断しなければ、金融機関は自分の身を危うくする可能性があります。ポンプ機能を果たすことが、難しくなっているのです。



事業性評価できることが金融機関の存在意義

このような難しい環境下、どうやったら地域金融機関は存在意義を高めていけるのでしょうか?答えは2つあります。1つはポンプ以外の機能を果たすことで存在意義を確立すること、例えば送金や保険の紹介などの手数料で利益を出すビジネスモデルにシフトすることです。



しかし手数料ビジネを選べるのは、都会型のごく一部の金融機関に限られるでしょう。ほとんどの金融機関は、地域でお金を集め、地域の企業等に融資して支えていくビジネスモデルを選ぶことになります。それを成立させるためには、難しい環境下にありながらも審査能力を高めていくしかありません。担保や保証ではなく、企業の事業性をみて判断する事業性評価の使い手となるのです。



デフレスパイラル・米中摩擦・新型コロナウイルス感染症と3重苦にありながらも、創意工夫と粘り強さを発揮して事業基盤を固め、顧客・地域と共存共栄を実現できる企業を探して、支援していく「事業性評価」できる金融機関になること。それはとりも直さず、その共存共栄の輪の中で、お金を回していくポンプ機能を果たしていくことを意味しています。そのような金融機関だけが、これからの時代に生き残っていけると断言できます。




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なお、冒頭の写真は写真ACからphotoBさんご提供によるものです。photoBさん、どうもありがとうございました。



 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


HP:StrateCutions

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