「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第256回

「平時」は以前とは同じではない?!

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



最近の中小企業向け金融環境について「平時に戻った」という言い方を多く耳にすることについて、先週から考えています。前回は2020年からのコロナ対応時期を「特異期」として、その比較で考えましたが、今回は「戻った」と言うけれど実は新境地であることを考えてみます。



信用保証制度(信用補完制度)見直し

2020年からの新型コロナウイルス感染症蔓延の影響を受けて中小企業が摩擦的に倒産等しないようコロナ特別貸付・コロナ特別保証が設けられました。未曽有の緩和措置のおかげで倒産が回避できた企業も多かったことでしょう。しかしコロナ禍は予想を超えて3年以上も続き、売上・利益を戻せない企業が少なくありません。「据置期間を再び設定してもらえる借換ができたら持続できる」と申し込んでも、今度は承認が出ない場合もあるようです。これが「平時に戻った」と表現される理由です。


その意味を正確に探ると「ゾンビ化した企業の延命には積極的でない。慎重に行う」との意向が見えてきます。このため企業は「例え今、財務数値・指標ではゾンビ企業に見えても、我が社は断じてそれに甘んじない。正常化に向けて合理的な計画を立て、実行・実現に尽力している」と主張・証明しなければなりません。それが2022年から実施されているコロナ借換保証で経営行動計画書が求められている理由と言えます。


ここにもう一つ、現況を明らかにしたいと思います。「戻る『平時』が多くの人が想定する『以前の姿』ではないかもしれない」ことです。それは、平成30年に信用補完制度が見直されたことに起因しています。中小企業庁の概要資料には、成長発展する中小企業への支援について、以下のように説明されています。(以下、引用)


【保証協会と金融機関の連携(リスク分担)を通じた中小企業の経営改善・生産性向上】金融機関が、保証を通じて必要十分な信用供与を行いつつ、事業を評価した融資を行い、(中略)保証協会が、金融機関のプロパー融資の方針等に着眼し「保証付き融資」とプロパー融資を適切に組み合わせるリスク分担を行う。(引用終わり)

https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/shikinguri/hokan/index.htm


この意味を踏み込んで考えてみましょう。例えば民間金融機関が「申込企業はコロナ禍の影響を受けて連続赤字・借入過多・債務超過に陥り、財務数字・指標だけを見るとゾンビ企業と言わざるを得ないが、実際は地域(サプライチェーン)にとってなくてはならない、ダイヤモンド原石企業ともいうべき企業だ。だから支援したい。但し民間金融機関では対応できないので信用保証協会の信用保証を得たい」と考えたとしましょう。


このような案件は、改革前までは「申込企業はダイヤモンド原石と思われるが、民間金融機関には審査できないので信用保証協会に任せる」と依頼、信用保証協会が「隠れた持続可能企業」だと認めたら承諾が出る仕組みでした。しかし改革後は「このダイヤモンド原石企業は『隠れた持続可能企業』と判断したので信用保証協会と協力して支援したい」と民間金融機関が協調融資を提案した事例について、承諾が出る仕組みに変わったのです。



事実上「事業性評価」が求められている

「指摘通りなら民間金融機関は今後、成長発展する企業(長年、小零細規模に留まる企業ではない企業。一般の中小企業)について信用保証を利用したい場合には、依頼前に『事業性評価』が必要となる。本当に、それが求められているのだろうか?」との疑問があるでしょう。政策の狙いはまさにそこにあると、筆者は考えています。


コロナ借換保証では中小企業に経営行動計画書が求められていますが、金融機関はただの窓口ではありません。まずそれを受け取り「伴走支援」をするか否かを決定、する場合に限って信用保証を委託申込みできることになっています。つまり、コロナ特別保証の返済に窮する企業に支援を続けるか否か、先ず金融機関が主体的に決める必要がある訳で、それはまさに事業性評価です。


一連の事情は企業にとっても意味するところ重大です。考え抜いた経営行動計画書を作成するだけでなく、金融機関に納得してもらうために追加資料があった方が良いと思われるなら、自発的に提出しましょう。金融機関が事業性評価に対応しなければならないとは、実は中小企業にも丁寧な説明が求められていると理解することが、資金調達のカギになると言えそうです。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


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なお、冒頭の写真は 写真AC から てふてふ さんご提供によるものです。てふてふ さん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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