「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第160回

K字型回復時代のマネジメント

落藤 伸夫 2021年5月10日
 



2週にわたって経済・個別企業の回復が「K字」を描いていること、その要因としては業種や業態・地域などもあるが、企業による違いも発生していることについてお話ししました。同じ業種・業態・地域にあっても企業により業績回復に差があることから、自主的な努力の重要性を思い知らされます。先週は、原因分析と現状把握を適切に行うと共に、マインドシフトがポイントになるとお伝えしました。改善提案に「それは不可能」と拒絶してしまうと、存在するかもしれない活路を自ら潰す可能性があります。この点を掘り下げて考えてみましょう。



倒産企業の「あるある」

政府系金融機関で約30年にわたり中小企業の倒産案件を審査し、中小企業診断士として独立して約6年経つ中で感じることの一つに、「問題に真っ向から取り組むことは、企業人にとって意外と難しいようだ」があります。


企業は突然に倒産する訳ではありません。景気の悪化や取引先の不調などで売上・利益が減少して積み上げたお金が流出するようになり、しばらく経って資金が尽きた時に倒産します。その間、経営者も従業員も窮地から脱すべく努力しています。時には数年あるいはそれ以上にわたって努力する姿には頭が下がる思いです。しかし少なからぬケースで(その会社が倒産した後、審査として書面を熟読していると)「どうしてこの会社は、窮地を脱し、会社を再び盛り立てるために必要な、直接に効果があがる方法を採らなかったのだろう」と感じています。


例えば、限られた、成長も見込めない市場で活動している企業が、主要な顧客が消滅したり競合企業が参入したりしたため売上が減少して損益分岐点を割り込んだ場合を考えてみましょう。対処策として「経費等を節減して損益分岐点を引き下げる」ほか、「これまでの商品を別な市場で売る」「これまでの顧客に別の商品を売る」、あるいは「これまでの商品をこれまでの市場で売りながらも、利益率を上げる」ことがロジカルに考えた有効策です。しかし、閉塞的な市場で倒産した企業を精査すると、ほとんどの企業は経費節減は行っていますが、市場開拓や新製品の投入、利益率向上にしっかりと取り組んでいる企業は意外と少ないとの印象です。こう言うと「そんなことはない、ある企業は広告宣伝したし、別の企業は営業強化した。事業改善にしっかり取り組んだが力尽きたのだ」と反論されますが、そうでしょうか?その会社が以前から飽和状態にある市場で活動していたなら、従来の市場・顧客に、従来の商品を、従来と同じ価格で提供している限り、広告宣伝しようが営業強化しようが、売上・利益の増大にはほとんど繋がりません。


新市場開拓や新商品投入、利益増大などに向けた取組みがなぜ行われないのか?少なからぬ企業は、それらに何度か、取り組んだことでしょう。それで成果が出なかったので「それらの取組みは難しい。成果が出ない」という意識が根付いたと考えられます。一方で何もしない訳にはいかないので「広告宣伝は続けよう。営業強化しよう」と判断されたと考えられます。



「やってみよう」を伸ばすマネジメント

その後、支援者として企業と直接にお付き合いする中で気が付いたことがあります。「現場は意外と、新市場開拓や新製品投入、利益増大などの取り組みを嫌っていない」ということです。それには様々な意味合いがあるようです。「今までいくら宣伝広告・営業強化しても成果が出なかった。他のことにチャレンジしたい」との思いの場合もあれば、「新しいことを考えるのって、ワクワクするね」という場合もあります。現実逃避や遊び、気晴らしの意味合いが強いと感じられる場合もあります。


「そうだろう。だから従業員を巻き込むのはイヤなんだ」と考える経営者、マネジャーも多いでしょう。確かに、現実逃避や面白半分で取り組まれたのではたまったものではありません。一方で、今まで取り組んでも成果が出なかった広告宣伝や営業強化が、振り返りもなく従前通りに継続されていることも、問題と感じられます。「会社の方針なので取り組むしかない。熱意が足りないと言われたら、込めるしかない」という意識で取組みが続けられた、というのが、筆者が倒産審査の場面で垣間見た実態ではないかと考えられます。


では、どうすれば良いのか?筆者は「今は、マネジメントを切り替えるべき時なのではないか」と感じています。コロナ禍が1年続いて業績が悪化した中で行った取組みを見直して、効果が劣るものは新しい取組みに切り替えるのです。現場が「新しい取組みにトライしてみたい。自分たちの力を試してみたい」というモチベーションを持っているなら、「それは無理だ」と押さえ込んでしまうのは、とても勿体ないことではないかと感じています。マネジメントを改めて、「このままでは会社が大変なことになる。それを回避できるよう、社内一丸となって難しいと思われる新しい取組みにトライしてみる」という方向性を取り込む時が、来ていると感じています。




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なお、冒頭の写真は写真ACから fujiwara さんご提供によるものです。fujiwara さん、どうもありがとうございました。


 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


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