中小企業経営者の、いや中小企業に限らず企業経営者のほとんど全てにとって、売上と人材教育、そして資金繰りが課題となっていると言われています。実際、多くの経営者の皆さんとお話をしていて、問題のほとんどはこの3点に集約されると感じられます。そしてこれらの問題は、アベノミクスによる好景気の影響を受けにくい中小企業にとって、次第に深刻になっています。
StrateCutionsの新しい連載は、今あげた3つの課題のうちの資金繰り、特に「資金調達」にスポットライトを当ててお送りします。中小企業の資金調達を巡る環境が、今とても大きく変わって来ているからです。
今起きている環境変化
みなさんの中には、橋本卓典さんの『捨てられる銀行』をお読みになった方もおられることでしょう。真剣に中小企業支援に取り組まない金融機関は(それ以外のビジネスモデルを確立できたものを除いて)捨てられてしまう、生き残ってはいけなくなるという趣旨が展開されていました。
日本政策金融公庫職員、そして今は中小企業をご支援するコンサルタントとして長年、中小企業政策をウオッチして来た者として、この指摘はまさに的を射ていると感じられます。お金を貸すという行為は、システマチックに行うビジネスという側面と、血の通った支援という側面の2つがあるはずでしたが、今までは支援側面にあまり目が向けられてきませんでした。しかしこれからは、支援側面にも注目すべきだという趣旨だと思われます。
環境変化に応じた対応の変化
では、資金調達を巡る環境が大きく変わっている中、中小企業はそれにどのように対応すれば良いのでしょうか?環境変化に対応しなければ廃れてしまうというのは、自然の摂理です。資金調達でも同じ。環境が変わっているのに、今までと同じ対応をしていたら、得られるはずの資金も得られなくなってしまいます。では、どのように変わっていけば良いのでしょうか?
答えは先にも述べた『捨てられる銀行』からも、得ることができます。そこでは、真剣に中小企業支援に取り組まない金融機関は生き残れないと指摘されていました。逆読みすれば、中小企業の方も、金融機関に支援してもらえるようにしなければ、資金調達できないということです。
今までは、特段に支援を必要としていない企業を選んで融資するのが金融機関の役割でした。これから裏を返して中小企業の対応方針を考えてみると、多少問題を抱えている中小企業であっても「私は大丈夫ですよ。お金さえ貸してもらえれば、うまくいくはずなんです。お手間はかけさせませんよ」とアピールすることが融資に繋がったということです。
一方でこれからは、支援が必要ながらもやる気のある企業を選び出して融資することが金融機関の役割になります。中小企業にとっては「確かに私には問題がありました。だからこれからはそれへの取組みを行なっていきます。取組みを行うための原資として、そしてそれを行う時間を確保するためにお金を貸して支援してください。私はその支援に精一杯に応えますよ。何しろ自分自身のためですから」と伝えることが融資に繋がるということです。
本コラムの目的
とすると、今後は、金融機関から支援してもらえる企業になることが、支援に相応しい企業であると納得してもらうことが、資金調達する上での大きなポイントになります。では、どうすれば、そのような企業になれるのでしょうか?それを紐解いていくのが、このコラムの目的です。
このコラムでは、金融機関から支援を受けられる企業になるための心構えやハウツーを縦糸に、そして、何故そういえるのかの根拠となる金融政策の変遷を横糸に、ご説明します。
今までとは全く異なる考え方も含まれていますから、最初は驚かれるかもしれません。しかし、現在の中小企業政策が目指しているところを知れば知るほど、それをきちんと理解して活用することが中小企業にとっても役に立つことがお分かりなると思います。政策は、中小企業に「儲ける力」を身に付けてもらうことを目的としているからです。
みなさんもぜひ、新しい環境下で資金調達できる企業になりましょう。それは同時に「儲ける力」も身に付けることを意味しています。一石二鳥、一挙両得ですね。このコラムは、儲ける力を身に付けて資金調達し、力強く成長していく中小企業を力強く応援します。
(注)本コラム記事は、資金調達に係る一般的知識やノウハウをお伝えすることを目的としています。ご参考としてご活用ください。