「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第209回

決算発表時に事業改善・再構築を宣言する

落藤 伸夫 2022年5月23日
 



5月も半ばを過ぎ、3月決算の中小企業は決算内容について会計士・税理士と詰めの協議を行なっているところではないかと思います。コロナ禍が2年以上も続いたため不調な企業が多いでしょう。この春からウイズコロナが浸透・外食の制限が解かれた飲食店をはじめとして回復基調にある企業もあると思いますが、他方で、世界的な半導体不足やウクライナ戦争などによる景気の翳りの影響を受け、厳しい状況が続いている企業も多いのではないかと思います。今回は、このような企業がどのように振る舞うことができるかについて、考えてみます。



金融機関が固唾を飲んで見守っている

最初に、今回の決算について、中小企業に貸出している金融機関が固唾を飲んで見守っていることを、認識していただきたいと思います。中小企業・経営者は「コロナ禍が2年も引き続き、世界的な半導体不足にも発展、加えてウクライナ戦争が始まるなど事業環境は混乱を極めている。我が社が満足な事業活動を行えないことは分かりきっている。金融機関がジタバタしても仕方ない」と考えるかもしれませんが、それは間違っています。


金融機関が中小企業に貸出すると、それは金融機関の決算書で「資産」として計上されます。貸出先が儲かっていて返済に不安があるなら問題ありませんが、売上が減少して赤字が発生すると「正常資産」とは言えなくなるかもしれません。大きな赤字が続いて債務超過になると「不良資産」となります。中小企業の決算状況は金融機関の決算と直結しており、実は運命共同体なのです。


この状況は、中小企業の皆さんにとって、掛け売りで多額の取引をしている先のことを考えると、お分かり頂けると思います。この会社の事業が順調なら売掛金は正常資産です。しかしその会社あるいは属する業種について「事業環境が深刻だそうだ。売上が低迷、赤字かもしれない」との噂があれば、心穏やかではいられません。信用調査会社の格付が下がり不良債権となれば貸倒引当金を積まなければならなくなり、影響は大きいのです。


金融機関も同じ状況にあります。企業が開示した決算が芳しくなければ、貸倒引当金を積まなければなりません。自己資本が減少して決められたレベルを下回ると国際決済への参加資格を失うなど、影響は甚大なのです。



事業改善・再構築を宣言する

このような状況下、中小企業はどう対応すれば良いのでしょうか。「自社の事業が不調だと金融機関が不安になり迷惑をかけるなら、大丈夫に見せかける『化粧』をすれば良い」それは絶対に行なってはなりません。金融機関を欺くと大きなペナルティーが課される他、自分自身も欺いて現状を打破するきっかけを失い、破滅への道にはまって抜け出せなくなる可能性があるのです。


では、どうすれば良いのか。「この決算で腹を括った。事業改善あるいは事業再構築に取り組んで必ずやり遂げる」と決心することをお勧めします。なお、ここでいう事業改善とは「従前の事業を特段変更することなく売上・利益を増やしていくアプローチ」を指し、事業再構築とは「新製品の開発や新市場開拓、あるいは業種・業態変更などの新しい事業を始めることで、会社の立て直しを図っていくアプローチ(事業再構築補助金の定義と同じ)」です。


ウイズコロナが定着すれば需要が回復して業績も元に戻ると期待できる事業の場合には事業改善で良いかもしれませんが、この間に事業環境が大きく変化したため回復が期待できなければ、事業再構築を検討せざるを得ないでしょう。果敢に取り組んでください。


一方で、経営者が決心を固め、口頭で話すだけでは金融機関には伝わりません。書面で提出する必要があります。それは「事業改善・事業再構築に取り組むと決心した」旨の宣誓書ではありません。現状分析と、これから行う事業改善・事業再構築について戦略・アクションプラン・数値計画を含んだ事業計画を策定するのです。このような計画を示されることで金融機関は、企業・経営者の本気を理解することができるでしょう。


政府は今、立ち直りを誓って事業計画を策定する中小企業への支援策として「早期経営改善計画策定支援」を行なっています。これは、中小企業が認定支援機関の支援により「早期の経営改善計画」を策定、金融機関(メイン行又は準メイン行)に提出する場合に、策定にかかる費用等の一部が補助される制度です。

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/04.html


「是非策定したいが、どうすれば良いのか分からない。」それなら是非、地域の「よろず支援拠点」などにご相談ください。StrateCutionsでもご相談に乗っています。




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なお、冒頭の写真は 写真AC から fujiwara さんご提供によるものです。fujiwara さん、どうもありがとうございました。




 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


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