「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第183回

何時まで大丈夫か?実は今です!

落藤 伸夫 2021年11月1日
 



緊急事態宣言が解除され今のところリバウンドもなく、街もだんだんと活気を取り戻してきたような感じです。コロナ禍が、このまましっかりと終息してくれると良いですね。しかし、それだけを気にかけていたのでは経営者としては失格です。会社を守るため資金繰りには細心の注意を払ってください。先週から「燃料が切れそうだ」とのタイミングまで対策を引き伸ばしてしまう危険性についてご説明しました。今週は何時まで大丈夫かについて考えてみます。



デッドエンドは「債務超過」

多くの経営者の皆さんが資金調達のデッドエンドについて、固定費や買掛金の支払いや、毎月の借入金返済が難しくなったタイミングを考えておられます。「来月の支払いは大丈夫だが、再来月は難しそうだ」と言って資金調達を始める経営者もおられるようです。しかしそれは、金融機関にとっては遅すぎるタイミングです。特に、コロナ禍に対応するためコロナ特別貸付やコロナ特別保証を利用して資金調達した後、売上・利益が回復しないので資金流出が止まらず、既に借りたお金がだんだんと減っている状況では、資金が手元にあっても最悪のタイミングに足を踏み入れている場合も少なくありません。


なぜ、そう言えるのか?その状況まで進んでしまうと、企業の財務は債務超過の状況になっており、金融機関が融資による支援をしたくてもできない状況になっていることが多いからです。債務超過とは、企業の負債総額が資産総額を上回っている状態のことを指します。資産の全てを簿価通りの値段で売却できたとしても、借入金などの債務を返済しきれない状況のことです。


健全な企業だと、資産総額が負債総額を上回っており、それが純資産の部に計上されています。資本金などの株主から出資してもらった資金と、過去から蓄積された利益のうち内部留保(配当などにより社外流出していない)資金です。誰かに返済等する必要がないので「自己資本」とも呼ばれています。


債務超過とは、赤字が続いて自己資本を食い潰し、遂にマイナスになった状況です。大きな借入をして建築した建物が災害で焼失等した場合にも債務超過になります。このため先にご説明した通り、資産の全てを簿価通りの値段で売却できても借入金などの債務を返済しきれないので、新たな借入を行うことは到底できないのです。



債務超過は「燃料が切れそうだ」よりずっと早い

ここで注意が必要なのは、現預金残高から「燃料が切れそうだ」と感じるより前に債務超過に陥る可能性があることです。例えば年商が1億円で収支トントン、純資産の部が1,000万円の企業があったとします。コロナ禍で事業がままならないので昨年秋に3,000万円を借り入れたとします。2年据置を利用したので元本返済はありませんが、毎月100万円ずつ固定費等で資金が流出したとします。すると(他要因がないとして)10ヶ月目で自己資本がゼロになり、11ヶ月目に債務超過に陥ります。預金口座には調達したお金がまだ1,900万円も残っており「来年の夏までは資金流出が100万円、秋からは返済が始まるので150万円なので、資金調達は来年の冬で良いだろう」と考えているかもしれませんが、実は今、債務超過に陥るかどうかの瀬戸際なのです。



資金調達と経営改善をセットで考える

債務超過とは全資産を売却しても債務を返済しきれない状況なので、金融機関が新たな貸付を借入を行うことは稀です。大きな借入をして建築した建物が災害で焼失等した場合であれば、「もう一度、借入させてもらって建物を再建できれば以前の業況に戻れる。返済は確実である」と説明できれば、債務超過でも借入ができるかもしれません。しかし、赤字が続いて自己資本を食い潰し、遂にマイナスになった企業だと、それは難しいでしょう。


では、どうすれば良いか?資金がまだ十分にあり、債務超過になっていないタイミングで資金調達することが大切です。ただ単に借り入れるだけでなく「このままではジリ貧が続いてしまう。新事業を手がけるなど起死回生の取組を今、始める」と事業再構築を決意する、ベストなタイミングといえるでしょう。政府は今年度、「事業再構築補助金」制度を設けて、コロナ禍が予想以上に引き続く中で、思い切った経営改善策を講じる中小企業の後押しをしているので、利用を検討できるかもしれません。


資金調達では自社の状況を的確に見極めることが大切です。「来月、資金が枯渇しそうだ」という企業に、金融機関は支援し難いのです。一方で、支援する相手の考えを知る必要もあります。金融機関は債務超過企業には原則、融資しないので、その前に調達を考えるべきです。「このチャンスに資金流出を止める。儲かる企業になる」との決意を固めて実行できる企業が、金融機関から支援を受けられ、自助により生き残っていける企業になれます。




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なお、冒頭の写真は 写真AC からmybears さん ご提供によるものです。mybears さん、どうもありがとうございました。


 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


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