「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第100回

決算書を見直す

落藤 伸夫 2020年2月3日
 


早いもので令和2年もいつの間にか2月、3月決算の企業は着地点を模索する時期ではないかと思います。「決算で気にすることといえば節税対策ではないか。他にあるのか?」はい、事業性評価が進展するにつれて、決算書の意味合いは低下するどころか高まると考えられます。適切な決算書作りが必要なのです。


決算書と事業性評価

金融検査マニュアルが廃止されたことにより企業の事業継続可能性や発展可能性に着目した事業性評価融資が進展するのではないかと思われます。「今まで決算書を見て企業を機械的に格付けし、その結果で業績のあまり芳しくない企業には担保や保証人を求めていたのを改めるようにという話だろう。決算書はもう関係がないのではないか?」はい、事業性評価は仰る通りの仕組みです。しかし、だからと言って決算書の意味合いが消えてなくなる訳ではありません。


第1に「金融機関は、プロパー貸付が可能かどうかを判断する場面では決算書をもとに判断する」という今までのやり方を変えないと考えられるからです。プロパー貸付とは信用保証協会の保証を必要としない、金融機関がリスクを覚悟しながら行う貸付のことです。プロパー貸付は当然のことながら信用保証料が不要で、企業にとって有利な資金調達方法です。これを受けるには、これからも決算書がポイントです。


第2に「金融機関が事業性評価を行い『この企業には事業継続可能性がある』と判断するにあたっては、決算が適切に行われていることが前提になる」と考えられるからです。事業性評価を行うのは、プロパー融資は行えない先、つまり決算書に現れている業績は今までなら信用保証がなければ融資ができなかった先です。このような先に事業性評価を行っているうちに「この企業は、そもそも決算書をあまり信用できない(この状況については次にご説明します)」という状況になってしまうと、融資を受けるのは難しいでしょう。


第3に「事業性評価対応というだけでなく、自社の存続・繁栄を目指すなら信頼できる決算書が必要」だからです。事業環境が急速に変化しつつある中、今年は景気も不透明だといいます。そのような環境下で自社を存続させ、今以上の発展を目指すなら、自社を正しく把握することが出発点です。改善に取り組むにあたっての最善の指標は決算書に現れる数字です。



金融機関が疑念を抱く決算書

では、どのような決算書に金融機関は疑念を抱くのでしょうか?赤字を黒字に見せかける、債務超過を資産超過に見せかける粉飾決算は、その最右翼です。


悪意な操作でなくても、適切な処理がなされていない決算書は金融機関の疑念を招きます。筆者は以前「前期の現金期末残高」と「今期の現金期初繰越金額」が一致しない決算書に出会ったことがあります。社長に話を聞くと、顧問先を格安の税理士に変えたのが原因とのこと。現金残高がマイナスだった決算書もありました。起業家の社長に聞くと、決算書は自分で作成しているとのこと。資源の乏しい中小企業が専門家への費用を削減したい気持ちはわかりますが、これでは金融機関の信頼を失うコストの方が大きいと言えます。


また、別途もらった「毎月売上推移表」に計上されていた売上が計上されていない決算書もありました。社長に話を聞くと「このままだと利益が出て税金を払わなければならない」と税理士から警告を受け、「どうにかなりませんか」と依頼したら、このような処理がなされたとのこと。以前は売上に計上していた掛売りを、相談した時以降は含めない処理としたそうで、会計知識のない社長は「税金が抑えられるならありがたい」と喜んだそうです。無邪気に金融機関に伝えたら「この会社は信頼が置けない」と断罪されたことでしょう。


加えて、減価償却を行っていない決算書にも警戒心を抱く場合があります。減価償却は現金の流出を伴わず決算で費用計上するものなので「十分な利益がない時は減価償却しなくても仕方ない」と考えがちですが、それは次の設備更新費用を準備していないという意味です。製造業や運輸業、冷蔵・冷蔵設備が必要な販売業など適切な設備が事業継続の要件となる業種では、減価償却をしていないと「事業継続可能性が必ずしも十分でない」と判断されてしまう可能性があります。



適切な決算書を作ってくれる税理士と付き合う

「適切な決算書を作れと言われても自分には難しい。」確かにそうだと思います。税理士に依頼しましょう。「いろいろ障害はあるが、しっかり対策を打っていきましょう」と提案する税理士と付き合ってください。言葉を濁す税理士だったら他を探した方が賢明です。決算書は企業の状況を表明する「自己申告書」です。税理士とのしがらみを優先して会社の信頼を落とすようなことを、決して行ってはなりません。




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なお、冒頭の写真は写真ACからuopictureさんご提供によるものです。uopictureさん、どうもありがとうございました。





 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


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