「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第86回

「我が身を助ける」事業承継計画と「助けない」計画

落藤 伸夫 2019年7月22日
 



 「○○は2種類に分けられる。△△な○○と、××な○○だ」という表現を耳にすることがあります。単純な2分法がいつも正しいとは言えませんが、ものごとを簡単に理解させてくれる場合もあります。事業承継の場合にも、この表現が成り立つ場合があるようです。「事業承継計画は2種類に分けられる。我が身を助ける事業計画と、役に立ちそうにない事業計画だ」です。


「計画通りいった試しがない」は正当か?

 この表現は、派生してもう一つバージョンが作れそうです。「人間は2種類に分けられる。計画が好きな人間と、計画が嫌いな人間だ」です。計画が嫌いな人が真っ先に挙げる理由は「計画通りにものごとが進展した試しがない」でしょう。その通りに実行できない、もしくは目指した効果が得られない可能性があるなら、計画を立てる意味はないという主張です。


 ある意味、理屈が通っていそうなこの主張ですが、ビジネスの世界では「計画を立てる」のが正解です。「なぜだ?計画通りにいかない計画を立てるのは無駄だろう」という声が聞こえてきそうですが「計画を立てないで行動する方が無駄」と反論できます。求める成果を実現させる因果関係が希薄な行動をとったり、効果が現れるまで時間がかかる取組について「効果が出ない」と諦めてしまうなどの可能性があるからです。取組みを試行錯誤しながら改善していくPDCAサイクルも回っていきません(当該サイクルの最初“P”とは「計画(Plan)」なので当然です)。


 また計画には「必要な行動をとらなかったり、予定した成果が得られなかったら気が付く」というアラーム機能や、「計画として示した以上は実行しなければならない」というモチベーションアップ機能、「それを見ている相手に『お、頑張っているな』と認めてもえる」という告知機能などがあります。告知機能については、先週に「事業承継計画は金融機関に対して『この企業はリスク・コントロールができている会社だ』と思ってもらうきっかけになる」とご説明しました。



「役に立ちそうにない計画」がある

 「分かった。では手っ取り早く計画を策定して金融機関に提出すれば良いのだな。」計画を立てようというお気持ちになったのは素晴らしいことですが、「手っ取り早く」という言葉が気になります。それがもし「形式だけを整えた内実のない計画」だったら、金融機関はそれを見抜くことでしょう。貴社にとっても「我が身を助ける計画」にはなりません。


 「そんな、事業承継は画一的ではなく、各社さまざまだ。他の会社と異なるからといって文句を言われる筋合いはない。計画の妥当性なんて、他人に評価できないのだ。」おっしゃる通りです。事業承継計画の出来栄えを評価することはできません。しかし「あなたの会社を助けることは難しそうな計画」というのは案外、しっかりと見抜くことができます。



「役に立ちそうにない計画」を見抜く方法

 見ただけで「役に立ちそうにない」と気が付く計画書があります。事業承継する場合にほとんどの企業が直面しそうな課題・問題に触れていない、触れていても形式だけの計画書です。「自社株の譲渡と相続税・贈与税対策だけではダメなのか?」実は、事業承継において大切なことは他にたくさんあります。事業承継とは「頭脳と心臓を兼ねた臓器」の移植手術に例えられます。相続税・贈与税は手術料の支払いに関することですね。移植しようとする「頭脳と心臓を兼ねた臓器」が適切に機能できるかや、迎え入れる人体と調和できるかの方がもっと大切です。事業承継は人体と違い「生理的な相性」はありませんが、後継者育成や企業の受け入れ態勢をしっかり対応しなければなりません。


 また、外形的には見抜けなくても関係者と話をすれば分かる場合があります。例えば「経営者としての資質を身に付けるべく後継者に経験を積んでもらう」と記載されている時に、「経営者の資質とは、貴社の場合には何ですか」、「どのような経験が必要なのですか」、「その経験を得させるために、どんな仕掛けを作りましたか」とお聞きした時、先代社長が答えられないようなら、役に立つ計画とは言えないでしょう。



「なるほど。手っ取り早い計画書はダメな訳か。しかし、自分にそれが作れるかな。」その悩みが、事業承継が進まない理由の主要な要因の一つと言って良いほどです。「存続・活躍してほしい企業に、事業承継がうまくいかないからといって退出して欲しくない。」この想いに突き動かされた弁護士、事業承継コンサルタント、そして中小企業診断士が、取組をうまく開始する方法をお伝えするセミナーを実施します(8/17)。興味ある先代社長・後継者の皆さん、ぜひご参加ください。 

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[冒頭の写真は写真ACからacworksさんご提供によるものです。acworksさん、どうもありがとうございました。]


 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


HP:StrateCutions

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