「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第189回

上手くいかない時の対処方針案

落藤 伸夫 2021年12月13日
 



前回、ストレッチした目標を立てる意義について考えました。昨年春からのコロナ禍の影響で思う事業活動ができなかったことが原因で大きくパフォーマンスを落としてしまった令和2年及び3年を乗り越えて回復基調にある令和4年の計画をどのように練るかについてです。


ある企業はコロナの影響を受けなかった令和元年の水準に速やかに戻る計画を立てました。社員からは落ち込んでしまった令和3年を発射台に穏当な成長率を掛けた計画とすべきだとの要望がありましたが、早期の回復を目指してストレッチした目標を立てることにしたのです。一方で、ストレッチした目標を立てても上手くいかない場合も考えられます。今回は、それを前提に、どのような方針で臨むことができるか、考えてみます。



売上が減少した2つの理由

コロナ禍に悩まされた2年間、売上が減少した理由として、大きく2つが考えられます。1つ目はコロナの蔓延を防ぐため休業や行動抑制に向けた要請等に応じて行動量が減少したこと、2つ目はコロナ禍によって事業環境が大きく変化し、自社製品・サービスへの需要が減少してしまったことです。多くの場合、理由はこの両方だと考えられますが、どちらが主なのか、的確に把握したいところです。両者の対応は全く異なっているためです。


企業によってはどちらがメインか、はっきりと分かっている場合があります。例えば駅前にある飲食店等の場合、コロナ禍によりテレワークが進み、当該駅の近くに立地していた大規模事業所が地方に移転して人流が極端に減ってしまった場合には、事業環境の変化が主な原因です。このような状況であれば、コロナ禍が収束に向かっているからと言って以前と同じ活動をすれば状況が回復する可能性は少ないので、事業活動を抜本的に変える必要があると考えられます。中小企業なら「事業再構築補助金」の活用が検討できるかもしれません。



行動量をキープして事態を正確に把握する

一方で、「我が社では行動量の減少と事業環境の変化の両方が売上減少の理由だと考えられる。但し、どちらが主なのか、わからない。だから対策が打てずに困っているのだ。」この状況への対処方針として筆者は原則、行動量の回復を先にするよう勧めています。


なぜか?行動量は一度低下すると、それを回復するのが難しく、その影響は多大だからです。筆者が社会人になってからバブル崩壊や金融危機、リーマンショックなど急激な景気の悪化が幾つかありました。その状況を筆者は日本政策金融公庫(現名称)で、信用保証における倒産処理(代位弁済に対する保険金支払い)現場で見てきました。


景気の急激な悪化で多数の企業が倒産しますが、実は景気が回復基調になっても倒産は続きます(総量としては回復後の方が多いかもしれません)。なぜか?「多くの従業員は行動量の低下に驚くほど早く順応し、その状態が続けば続くほど元に戻すのが難しくなるから」です。工場は需要が戻っても以前の生産性があげられず、運送業者は以前のような効率的な配車ができません。営業パーソンも、以前のような営業ができなくなります。


「しかし事業環境も変化しているから行動量回復だけでは売上は回復しない。無駄骨を折らせるのは忍びない。」もっともな考えだと思えますが、行動量の回復を第一にする原則を撤回する気にはなれません。理由の1つ目は、一定水準の行動量をキープしながらある行動から別の行動に変えるのは比較的容易だが、行動量が減った状況に慣れると再び戻すのは大変だから」です。スポーツをしっかりやった人は、実感できると思います。


理由の2つ目は、事業環境変化の察知にも行動が必要だからです。事業環境の把握には「座学」と「フィールドワーク」の両方が必要です。座学にはインターネットや書籍等による勉強の他、現場の情報を元にした分析も含まれます。一方で顧客の新たな行動や思考は、座学だけでは分かりません。顧客を直接に観察し、話を聞くことが必要です。時には顧客を取り巻く環境(サプライチェーンや周辺地域など)も観察等する必要もあるでしょう。積極的に行動して得た情報を分析に繋げます。


ここの分析は「顧客は、今はどこで何を手に入れているか?(行動)」や、「顧客は、今は何を基準に意思決定しているか?(思考)」などがメインです。頭で考えるだけでなく言語化・図式化しましょう。仲間と意見交換して精度を高めることも大切です。営業と座学・フィールドワークの全体で、以前に見合った行動量とします。


「大変そうだな。」しかし、これをやり切れた企業の多くが生き残り、できなかった企業の多くが衰退した姿が多く観察されました。皆さんは、どちらになりたいでしょうか。




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なお、冒頭の写真は 写真AC から きなこもち さん ご提供によるものです。きなこもち さん、どうもありがとうございました。


 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


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