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「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第265回

中小企業政策転換の波に乗れる会社になる

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



能登半島地震や羽田空港での日航機・海上保安庁機事故など波乱で明けた2024年も既に半月以上が過ぎました。一日で言えば1時間が過ぎたことを意味しており、時の流れる早さを感じます。


当コラムでは昨年、中小企業の金融環境が大きく変化していることを再三、お伝えしました。金融支援と経営支援の2つの柱を掲げる「中小企業活性化パッケージ」が既に2022年春に発表され、9月には改訂版となる「中小企業活性化パッケージNEXT」が発表されていたところ、昨年は経営支援(中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジの総合的支援)に軸足が移りつつあることが肌で感じられたからです。加えて11月に金融庁も金融機関向け監督指針を2024年春に改正すると発表、中小企業への支援が金融支援から経営支援に変化する大きなうねりを実感しています。



プログラムされていた経営支援へのシフトは

政府がこのように政策を変更したのは、企業倒産の増加が原因だと思われます。2020年から発生したコロナ禍等により多くの中小企業が売上・利益を激減させてしまいましたが、手厚い金融支援措置が功を奏して倒産が顕著に抑えられていました。それが今だんだんと増えてきたことにより「金融支援というセーフティネットでは企業倒産が避けられない状況に至った。経営支援が必要だ」と判断されたのです。


但し金融支援から経営支援への軸足シフトは今回が初めてではなく先例があります。2008年9月にリーマン・ショックが発生、翌10月には「原材料価格高騰対応等緊急保証制度」が創設、2009年11月に「中小企業金融円滑化法」が成立して手厚い金融支援が用意されました。金融円滑化法は2回延長されましたが3回目の延長は行われず、2012年4月に「中小企業金融円滑化法の最終延長を踏まえた中小企業の経営支援のための政策パッケージ」が発表されました。そこで今回の活性化パッケージと同様、金融支援から経営支援へ軸足のシフトが謳われていたのです。今回もこの流れを汲んでプログラムされた動きだと考えられます。



実は中小企業政策と協調した動き

「中小企業支援が金融支援から経営支援にシフトしたというが、実感できない。」仰る通りと思います。変化の可能性を予め知った上で状況を観察する専門家にははっきり見える現象も、普通に事業を行ない資金調達に取り組んでいる中小企業には分かりにくいでしょう。この典型例は「ゼロゼロ融資の据置期間が経過して返済すべきタイミングとなったが資金繰りが回らない。借換して据置期間をもう一度設定したい」との声が多く上がっている中、政府は2020年当時のような容易さで応じるのではなく、経営改善を呼びかけていることから見て取れます。


変化の一因として、金融支援が企業に届き難いことが挙げられます。据置期間の再設定が必要な企業もコロナ禍当初は財務状況が健全で、金融機関も融資に応じやすかったのです。しかし3年が経過した今、ずいぶん悪化してしまったと考えられ、新規の融資が難しい状況です。このような企業に金融原則を曲げて新規融資して据置期間を再設定するのが良いのか、これを機会に経営改善に取り組んでもらい、それを支援した方が良いのか。


約10年前の経験から後者取組の方が成果が上がる、つまりマクロ的視点では倒産が減少する、ミクロ的視点では元気を再び取り戻して会社としても経営者・従業員としても、顧客・地域社会や取引先・サプライチェーンに望ましい状況を取り戻せる企業が増えるとの判断と考えられます。


コロナ禍が始まる前、筆者は金融安定化法の適用を受けてリスケジュールを受けながら10年近くも回復を遂げられない企業の経営改善を支援する取組に参加していました。この段階だと「リスケジュールして資金繰りは楽になったでしょう。あとは頑張ってね」という姿勢では企業の回復は難しく、伴走支援によるアドバイスや励ましなどが成果に繋がるのです。このため該当する企業・経営者には是非、この支援を受けて事業改善に取り組んでもらいたいと考えています。


また、支援の取組を行えるベストポジションにいるのは金融機関担当者の皆さんです。このため本コラムも読者層を、今までの企業経営者そして税理士などの支援者から、金融機関担当者まで広げて(plus)再スタートします。今年こそ再起を目指して、手を取り合って頑張っていきましょう!




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>





なお、冒頭の写真は 写真AC から c_fish さんご提供によるものです。c_fish さん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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