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第59回

信用保証制度見直しによる予想される影響と対策(1)

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 

 信用保証制度(信用補完制度)が見直され本年4月から実施されることになったことは、これまでお話ししてきた通りです。今のところ、この見直しによって金融機関の取り扱いや保証協会の対応が大きく変わったという話は(少なくとも筆者の)耳には入ってきていません。しかし、だからといってこの見直しによる影響がないと考えるのは早計だと思います。今日は、予想される影響と、その理由についてご説明します。



見直しのあらまし

 今回の見直しには2本柱で構成されています。第1の柱は「中小企業の多様な資金需要に対するきめ細かな対応」と銘打たれ、「危機関連保証」の創設や、「特別小口保険に係る保証」の限度額が引上げなどの制度拡充です。一方で第2の柱は「信用保証協会と金融機関とが連携した支援」というタイトルで、「信用保証協会と金融機関との連携を法律上に位置づけ・・・プロパー融資(信用保証なしの融資)と信用保証付き融資を適切に組み合わせ、信用保証協会と金融機関が柔軟にリスク分担を行っていくべく・・・連携を図る」とされました。この改正がなされたきっかけは、民間融資が全て信用保証付でメインバンク不在の状況など「信用保証に過度に依存している例」があるからだと指摘されています。



影響を受ける企業

 この改正からすると、信用保証の見直しで影響を受ける場合と受けない場合があることが分かります。プロパー融資が近年までしっかり行われ、信用保証付き融資の残高に見合った残高があるような場合には適切なリスク分担が行われていると判断され、今までの取引スタイルを継続してもらえる場合が多いと考えられます。一方で、プロパー融資の残高が信用保証付き融資残高に大きく見劣りし、最近にはプロパー融資が行われず信用保証付き融資に頼っている場合などには、今回の見直し措置の対象と判断されるかもしれません。金融機関に「適切にリスク分担するように」との要請が発せられるのです。



金融機関がリスク分担を要請されるとは

 ここで、金融機関がリスク分担を要請されるとはどういう意味なのか、考えてみましょう。ある企業について、ここ数年、金融機関が「この企業は、債務者格付けではプロパー対応ができないので、信用保証協会が保証承諾した場合に限り対応することとしよう」という姿勢だったとしましょう。この見直しで、この姿勢を継続することは難しくなったということです。今後は「この企業は、現状は決して楽ではないが、企業努力を重ねることにより事業継続が可能だと考えられる。とするならば、申込みのあった金額について満額は難しいが、一部をプロパー融資で対応しよう。残りの部分は事情を説明して、保証協会に応援を要請しよう」というスタンスに変わらなければ、保証協会の承諾を得ることが難しくなる可能性があるのです。


 この変更は、金融機関にとって大きな負担になると思われます。今までは「この企業にはプロパー対応できないので、信用保証協会が保証承諾した場合に限り対応しよう」と決定したら、後は中小企業に「信用保証協会向けに申請書を提出して下さい」と依頼し、信用保証書が届くのを待っていればよかったからです。一方でこれからは、そんな企業にもプロパー融資が可能か、自ら判断しなければなりません。今までよりもはるかに多くの情報収集をして、分析をし、意思決定をしなければならないということです。



リスク分担が徹底されるか?

 このように、信用保証制度見直しの趣旨を徹底するとなると、民間金融機関の負担が増えるものと考えられます。「そんな負担、民間金融機関が進んで受けるとは思えない。なし崩しになってしまうのではないか。」筆者の周りでも、確かにそのような声が聞こえてきています。


 しかし、実は、伝家の宝刀があるのです。今回の見直しでは、金融機関が、信用保証付きで融資した中小企業にプロパー融資も合わせて行なっているかを公表するとともに、金融機関がリスク分担するよう促す役割を信用保証協会が担うべきことが「信用保証協会監督指針(金融庁が信用保証協会を監督する場合の方針を予め示したもの)」に明示されたのです。保証協会が万が一、今までと同様の取り扱いをしていると、金融庁からの指導が行われることでしょう。そうなれば、信用保証協会も放っておく訳には行きません。リスク分担は徐々に、しかし着実に進むと考えられます。



中小企業への影響

 このような状況になった場合、中小企業にはどんな影響があるでしょうか?これまでは信用保証協会に任せていた難しい案件を自ら判断しなければならないので、以下のような影響が出る可能性があると考えられます。


・提供を求められる資料が増える

・返事が遅い

・消極的な返事が増える(信用保証付融資のみの金融機関)



前向きに捉えて対応する(次回に続く)

「金融機関や信用保証協会の都合で中小企業にしわ寄せが来るのは許せない。そのような見直しは、断固撤回すべきだ。」そのような意見も、もっともだと思われます。しかし、この見直しは、実は「金融機関に、中小企業にもっと親身に対応し、信用保証に頼り切るのではなく、自らプロパー融資で支援できるようになって欲しい」という意図のもとに行われました。中小企業へのメリットを目指しているのです。先ほど挙げた影響は過度期の現象といえるでしょう。  とするなら、勧められるのは「中小企業の側で工夫して、この影響を排除する」ことです。もしこれが実現すれば、中小企業は今まで以上に資金調達できるようになる可能性があります。次回はこの点について、ご説明していきます。





<本コラムの印刷版を用意しています>

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙1枚のボリュームなのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達できる企業になるための方法をしっかりと学んでみてください。



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プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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