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第4回

金融と経営支援の一体的な推進

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
前回、中小企業に対する金融支援について、特に信用補完制度という仕組みに関する政府の問題意識について推察しました。一定の成果をあげているものの、コストがかかり過ぎてコストパフォーマンスとしては良いとは言えない状況にあると考えられているようです。今回は、その問題意識を基にして、今の中小企業向け支援策が最終的に目指すゴールや政策の全体像について推察していきます。

中小企業政策審議会企業力強化部会

2011年(平成23年)政府は経済産業省に設置している中小企業政策審議会に「企業力強化部会」を設置しました。7月に行われた、その第2回部会では「金融と経営支援の一体的な推進 」という資料が提示されています。
<資料:「金融と経営支援の一体的な推進 」>


金融と経営支援の一体的な推進

そこでは、中小企業信用補完制度(信用保証制度と、それをバックアップする信用保険制度の2つの制度を併せて、こう呼ばれています)が一定の成果をあげているもののコストがかかり過ぎる実態を改めて指摘して、その改善策として「中小企業への金融支援の場面で、必要とあらば経営支援も一体的に行う」という方向性を打ち出しています。それを実現していく方法として「地域一体型の自立的な支援メカニズムの創設」と「中小企業支援ネットワークの強化」を提案しています。


体制作り

「地域一体型の自立的な支援メカニズムの創設」とは、中小企業の財務経営力強化を目指して、これを支援する者(支援機関)と金融機関が連携を強化すると共に、地域金融機関に対して人材育成するよう動機付けていくことを意味しているようです(上述資料P.4)。信用保証を活用した融資などで金融支援を量的に拡大しても、中小企業が経営力、特に財務面での経営力が脆弱なままでは効果は現れず、逆効果になりかねないとの問題意識があるのかも知れません。

「中小企業支援ネットワークの強化」は、文字通り、中小企業を経営面から支援する機関が連携してその機能を強化することを目指すものです。このため全国で全国で約3,000の支援機関を設けると共に、これら支援機関を連携させて(ネットワーク化して)能力向上を図ると謳われています(上述資料P.17)。

2012年(平成24年)8月には「中小企業経営力強化支援法」が施行され、経営革新等支援機関の認定制度が創設されました。これまで既に経営団体や金融機関、税理士・税理士法人・中小企業診断士等が中小企業の支援事業を行っていましたが、これらを国が認定することで、支援事業の担い手をさらに多様化・活性化すると共に、中小企業に対して専門性の高い支援を行える体制を整備したいとの意図によるもののようです。
<資料:「中小企業経営力強化支援法について」>


中小企業金融支援政策のトレンド

以上の経緯からすると、中小企業に対する金融支援政策のトレンドをはっきりと見定めることができると思われます。今までは信用補完制度を活用して中小企業向け融資を量的に拡大することが政策の大きな柱だったと言えますが、その考え方はなくなったようです。逆に、金融支援は経営支援と一体的に行うという質的な支援策に重きが置かれることとなりました。

そのための体制作りは、皆さんもご存知のように、着々と進んでいます。企業力強化部会第2回部会資料では、設置する支援機関の数は約3,000とされていましたが、現在認定されている経営革新等支援機関の数は2万5,800を超えています(2016/12/26現在)。
<資料:「経営革新等支援機関認定一覧について」>


今、さしかかっている段階

そして今、「地域金融機関に対して経営支援強化を行うよう動機付ける」段階が強力に推進されていると言えるでしょう。昨年秋に発表された「平成 28 事務年度 金融行政方針」には、「日本型金融排除」が生じていないかについて企業にヒアリング等して実態把握すると共に、「優良な取組みを行っている金融機関を公表・表彰。これらを通じ、良質な金融サービスの提供に向けた金融機関間の競争を促す」としています。
<資料:「平成28事務年度 金融行政方針 概要」>

以上のように、現在の中小企業向け金融政策は、中小企業政策審議会企業力強化部会で2011年に提示された「金融と経営支援の一体的な推進 」をベースにしていると考えられます。「金融支援だけでは本当に中小企業を支援したことにならない。必要に応じて経営支援と一体的に行って初めて、企業体質を強化する本質的な支援となる」という考えに基づいているのです。現在、中小企業庁と金融庁は、この実現に向けて足並みを揃えて政策推進している段階だと思われます。

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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