「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第263回

支援が資金繰りから再生支援に移行する意味

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



2023年の中小企業の事業環境について「まだら模様」と表現されています。新型コロナウイルス感染症の蔓延により大打撃を受けた観光業や飲食業関連の企業は今、回復してきたインバウンドなどにより以前の勢いを盛り返しているようです。一方で2020年から21年にかけてのボトムは抜け出したもののコロナ禍以前の水準には戻れず、中には損益分岐点売上高も超えられない企業もあります。後者の企業にとって年末の資金繰りはとても重要ですが、ここで気になるニュースが飛び込んできました。今回はこの点について考えます。



軸足が資金繰りから再生支援にシフトする

2023年11月26日の日本経済新聞第1面に、金融庁の金融機関向け監督指針が2024年春に大きく改正され、金融機関が行うべき中小企業支援の軸が資金繰りから再生支援にシフトしていくと示唆する記事が掲載されました。確認のため金融庁のホームページを探しましたが、これに関係する情報発信はありませんでした(筆者が探した限りは見当たりませんでした)。


それにもかかわらずこの記事についてコメントしたいと考えたのは第1に、この記事の内容が実現する確率が非常に高い、ほぼ確実に実現すると考えたから、そして第2に、もしそれが実現した場合に中小企業、それも冒頭で資金繰りを考えなければならないと指摘した企業にとって大きな影響が及ぶと考えられるからです。


金融機関が行うべき中小企業支援の軸を再生支援にシフトさせる監督指針に記されるとは、どういう意味か?これまで金融機関の役割は融資することで、中小企業の財務状況・信用力が脆弱で融資できないなら、それは中小企業が理由なので仕方がないとのスタンスだったと考えられます。金融機関としては中小企業が自助努力でもって融資可能な状況になるまで待っていれば良いという姿勢です。令和元年12月に金融検査マニュアルが廃止されるまで、スコアリングによる債務者区分による融資判断がメインだった時代は特にそうだったと言えるでしょう。それが覆って、再生支援することに金融機関が責任を持つべきとの姿勢に変化すると考えられます。



経営支援に乗る企業と乗らない企業が峻別される?

こう言うと「金融機関が中小企業の経営改善支援や事業再生支援まで行ってくれるとは有り難い。是非とも我が社を支援し、ひいては金融支援もしっかりやってもらいたい。」そう考える企業経営者もいるかも知れません。しかし筆者はこのことを「融資が可能になるエスカレーターを金融機関が準備してくれる」という意味合いとして解釈するのは甘いのではないかと考えています。


ここで、企業の決算が実は金融機関の決算に影響することがポイントです。企業がお金を借りると貸借対照表の貸方に「借入金」が立ちますが、同時に金融機関の借方に「貸出金」が立ちます。後者は企業の「在庫」と同じ意味合いです。在庫には、事業に利用する在庫もあれば、利用見込みのないデッドストック(不良在庫)もあります。


同様に金融機関の「貸出金」には返済見込みがある良好な貸出金だけでなく、見込みのない不良な貸出金が混ざる可能性があります。この現象について従来は「仕方ない」との姿勢でしたが、金融庁は今後「貸出金が劣化したら良化させる努力を自ら払いなさい」と金融機関に指導すると考えられます。本腰を入れない金融機関にペナルティを課すことも考えているかもしれません。


この指導は、中小企業にどのように波及するか?支援に乗って自社事業の改善に積極的な企業と、他力本願な企業、ひいては「自社が改善しないのは金融機関の支援が足りないからだ。代わりに十分な金融支援で補って欲しい」と考える企業が峻別される可能性があると考えられます。前者には積極的な支援が継続され、努力が結実すれば金融支援が再開されるでしょう。


一方で後者は「力づくで」促される可能性があります。記事にも、企業の危機感が薄い場合は経営悪化の予兆段階で金融機関主導の事業再生に踏み込める案が示唆されていました。記事には「一定程度の損失を覚悟したうえで抜本策に乗り出す」とありました。金融機関の支援に応じない、自己改善意欲のない企業とは、償却損失を出して縁を切るように促すという意味でしょうか?実は、そのような解釈も不自然でないほど、段取りは整備されていると解釈できます。


今は正念場だと考えられます。




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本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


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なお、冒頭の写真は 写真AC から mamepan さんご提供によるものです。mamepanさん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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