「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第127回

事業計画のもと、会社の力を合わせる

落藤 伸夫 2020年8月31日
 



前回、事業計画の実行について考えました。計画は、もちろん、実行するために作成されたはずですが、実行されていない、それも最初から実行に向けた動きがないという計画も少なくありません。せっかく作った計画を張子の虎にしないためには、マネジメントを機能させることがポイントとなります。「話は分かったが、もっと具体的な『○○をすれば大丈夫』というノウハウはないか」というご質問を受けました。今日は、筆者が使っているいくつかの工夫についてお話しします。


会議を、事業計画の実行を促す仕組みとして活用する

事業計画を策定したのに実行されないのはなぜか?一つには「戦略の実行」というものの特殊性にあるのではないかと思います。例えば「年に一度行う展示会営業」は、日常とは異なる取組みをおこなうことを意味しています。他の時期なら顧客にアポをとって面談をしているのに、特定の時期だけは展示会ブース作りの打合せをするなどです。このため担当者も「展示会営業に向けて取り組んでいる」と明確に意識できます。

一方で経営戦略の実行は、さまざまな形態を取ります。出展する展示会数を増やし、今まで出展していなかった展示会のために準備していると「この形式は初めてだな。戦略対応だな」と分かりますが、いつも行っている仕事のバリエーションという場合もあります。アポ取りして面談する対象が今までは既存顧客だったが、これからは新規顧客に切り替えようとする場合には、「戦略実行だな」と兜の緒を締めてくれる営業マンもいますが、「これまで慣れた顧客ではなく、新規顧客を対象にするなんて面倒くさい」と感じる営業マンもいるでしょう。それが戦略対応であることが、忘れ去られてしまうのです。

このような状況下、どのようにしたら実行を促せるのでしょうか?それが戦略対応であることをしばしば、必要ならば日常的にアピールするのが一番です。ドラッカーは「計測される対象に、皆の意識が向く」と述べています。毎日の朝礼や日頃の職場会議で、今まではアポ取り数、面談数を把握しただけだったけれど、戦略実行時期には、それらに加えて新規顧客へのアポ取り数や面談数も発表させるようにすれば、自分たちが「新規顧客を獲得する」という戦略を実行する最前線にいることが認識されます。


会議で紙媒体を用い、貼り紙も活用する

人々の意識を戦略実行に向ける方法としてもう一つ、お勧めするのは紙媒体です。メールでも良いのですが、しっかりと意見を交わすのが難しいと感じる人が少なくありません。キーボードで文字を打ち込んで意見交換することが面倒に感じてしまうのです。メールで送った資料について会議の場でフォローすれば良いかというと、それも難しいのです。「読んだ?」、「読みました」、「どう思った?」、「自分も頑張らなくてはと思いました」という浅い会話で終わってしまうことが少なくありません。紙媒体は、深い会話を行うツールとして打ってつけです。先ほども申した戦略の進捗を示す数値・指標を掲載したペーパーを配った上で会議を行うことで、参加者に今は事業計画を実行する場面であることや、経営陣も進捗に大きな関心を抱いていることがアピールできます。

会議で紙媒体を見ながら確認・議論したとしても、その場が終わると忘れてしまうことが少なくありません。これを避けるために、最も重要な数値やそれを表したグラフを貼り出しておくことをお勧めしています。もし朝礼があるなら、皆で毎日確認することもできるでしょう。


新聞

会議や貼り紙を使いにくい企業は、新聞を発行できます。ある会社はフレックスを採用していたので、全体会議は月に1度しか開催できません。法的規制をはじめとして皆に伝えなければならないことが山ほどあるため、事業計画の実行について、あまり時間を割くことができません。このため新聞を発行して、事業計画の実行をアピールしました。仲間のインタビューなど関心を引く記事とセットで伝えることで、今までなかなか浸透させられなかったメンバーにも計画実行に意識を向けられました。


以上、従業員が計画の実行に関心を持ち、取り組むよう促す方法について考えてみました。「なんだ、知っていることばかりではないか」仰る通りと思います。一方で、その「知っていること」を実践できないことが、計画の実行を阻んでいることを忘れてはなりません。筆者が見てきた現場でも、実行できていた現場ではこれらのうち1つもしくは2つを実践していた一方、実行できていない現場は「何もやっていない」ということがほとんどでした。事業計画の実行は、実は「雨垂れ石を穿つ」の世界であることを忘れないでください。



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なお、冒頭の写真は写真ACからえんまなさんご提供によるものです。えんまなさん、どうもありがとうございました。


 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


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