「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第168回

「戦略計画」とはどんな計画か

落藤 伸夫 2021年7月5日
 



多くの中小企業にとって2020年は、新型コロナウイルス感染症の蔓延で事業活動が制約されるなど散々な年でした。半年前に2021年を迎えるにあたり「今年前半にはコロナ禍は沈静化し、春過ぎるあたりにはV字回復できるだろう」と期待していた経営者・企業人も多かったことでしょう。しかし半年経ち、その期待は裏切られました。東京では3回目の非常事態宣言が解除されても「まん延防止等重点措置」となっており、それで収束すると思いきや、リバウンドを心配する状況です。


このような状況で、時が過ぎるのを待ち、事業環境の回復から自社の業績も自然に元に戻ると期待するのは、あまり良い策とは思えません。自らの手で現状を打開するのが上策と考えられます。「今までとは違うことにトライする」ことで、自ら血路を開いていくのです。今回は、この点について考えてみましょう。



事業再構築における「戦略計画」

これまで中小企業は、例えば現事業を止めて新事業に乗り出すという大きなリスクは避けるのが定石でした。このため「今までと違うことにトライする」は、多くの企業にとって、今まで体験したことのない取組みだと考えられます。これを成功させるにはどうすれば良いか?


前回、新たな試みを成功させるために「戦略計画」がポイントになるとお話ししました。戦略計画とは、耳慣れない言葉かもしれません。「調べてみても、よくわからないぞ」という声も聞こえてきそうです。筆者は「戦略計画」は、形式ではなく内容だと考えています。「今までとは違うことに取組むことを、無謀ではなく『価値あるトライ』にできる内容が書き込まれた計画」です。


「抽象的に過ぎて、よく分からない」との声が聞こえそうですね。戦略にはある意味、無数の方法がありますが、今年、話題になっている「事業再構築」から考えてみましょう。ある飲食店が惣菜販売に舵を切ったとします。今までの飲食店営業での売上・利益の目処は立ちますが、惣菜販売は、提供する「もの」は似ているとはいえ、顧客の購買動機や場面が全く違うので、そう簡単には売上・利益目処は立たないでしょう。そのような事情でか「チラシを作って店頭で配布したり、近所に配達する。それで足りなかったらキャンペーンを打つ。次はTVコマーシャルを検討する。できることは何でもやる」という計画をよく見かけますが、戦略的とは言えません。


この場合「飲食店での顧客の半分を惣菜店に引き寄せて売上をあげると共に、これら顧客の来店頻度を高め、口コミで顧客を広げて売上に繋げる」方法を探ることで、戦略的な取り組みを企画できるかもしれません。例えば、飲食店で誕生日によく利用されたメニューを再現、それを自宅で楽しめるようパッケージ化して誕生日に届けるサービスを準備して、以前の顧客にアプローチします。過去に誕生日で利用してくれた日時が分かっているなら、企画する1ヶ月前に案内状を送れます。実際に利用したお客には割引券を送って来店を促します。「お友達を紹介してくれたら半年以内のホームパーティー利用の割引チケット」を配布、顧客の幅を広げると共に、もともと年に1度しか使わなかった顧客に2度、3度とホームパーティー利用する理由を作ってもらいます。アンケートから惣菜やホームパーティーで一緒に利用する商品をリサーチ、自社では対応できない商品も一緒に提供できる他店と連携できます。これは、ダイレクトメールを送ることができる対象者を増やすことにも繋がります。



製品に込められた「戦略計画」の例

戦略性は、事業再構築の例で挙げたようにアクションに込めるだけでなく、製品にも込めることができます。その代表例はアマゾン社が提供しているKindleです。Kindleが以前にSONYが発売していた電子書籍リーダー、Librieに触発されて開発されたことを知る人は少なくないでしょう。しかし今や電子書籍リーダーとしてLibrieを思い出す人はほとんどなく、Kindleが一般的です。なぜ、そうなったか?それはLibrieは書籍を電子機器に保存し閲覧することに集中していたが、Kindleは電子書籍を購入することにまで徹底的にこだわったからです。アマゾンは、顧客が簡単に電子書籍を購入できるようKindleに通信回線(3G)を搭載しました。「これをやればコストはかかるけれど、顧客はこちらを選ばざるを得なくなる」という要素を製品に加えておくことで、新製品開発を戦略的な取組みにしたのです。


「中小企業は資源が少ないので、戦略を考える暇はない」との声を聞くことがあります。前段は正しい指摘ですが、後半は間違っています。「戦略なく、リアルな資源を浪費しながらPDCAを回すのは難しい」が正しい指摘です。では、どうすれば良いのか?まずは戦略計画を立てましょう。「これをやれば顧客はこちらを選ばざるを得なくなる」策を考え、計画に盛り込むのです。それが中小企業の生き残る道だといっても、過言ではありません。




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なお、冒頭の写真は写真ACから 實悠希 さんご提供によるものです。實悠希 さん、どうもありがとうございました。


 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


HP:StrateCutions

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