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「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第236回

事業性評価への対応(事業改善の事業性)

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



前回に引き続き、中小企業への金融支援において関心が高い事業性評価を考えていきます。前回は事業環境をベースにした事業性評価を考えたので、今回は企業の事業改善をベースにした事業性評価を考えます。年末に資金調達を考える企業は、これら情報を盛り込むことで、金融機関の門戸を開けられる可能性があります。



金融機関の事情と事業性評価(事業環境ベース)

金融機関は融資支援ができる先か否かを決める際「この企業は借入金を返済できるか否か」を基準に判断しています。毎年の決算が黒字で利益と減価償却を合計すれば返済できるなら支援可能と考えるでしょう。一時的に利益が減少あるいは少額の赤字でも、全額を返済可能な現預金を保有していれば可能と判断できるかもしれません。そのような現預金がなくても、万一には肩代わりして支払ってくれる資産ある保証人のある場合や、処分・換金すれば返済に回せる不動産等がある場合には、折り返し融資を行う形で支援可能と考える可能性があります。


一方で、これらに当てはまらない企業への支援について金融機関は、消極的にならざるを得ません。返済を受けられない(貸倒れ)の可能性が顕著に高まるからです。貸倒れにより資金が不足し、顧客から預かったお金(顧客サイドでは預金)を求めがあっても払い出しできなかったり、依頼先に送金できない状況に陥ると、金融機関としての存在意義を失ってしまいます。企業が不調に陥った理由がコロナ禍やロシア・ウクライナ戦争等の外的要因でも、困難であることに変わりはないのです。


では、このような企業への支援は全く不可能なのか?前回、事業性評価により門戸が開かれる可能性についてお話をしました。金融庁は、融資審査で利用する情報の拡大により事業性評価が可能と示唆しています。これまでは貸倒れなどの過去実績と個社の決算などの定量情報、事業の将来性などの個社の定性情報をもとに評価したが、今後は地域経済や産業変化などの足元の情報、不動産価格予測など将来の情報を反映可能になったのです。中小企業が事業環境を分析して「これまで苦しかったが潮目が変わってきた。この波に乗る資金が調達できれば飛躍できる」と考えて、その情報を金融機関に提示することで、事業性を評価してもらえる可能性が高まるのです。



事業改善により「事業性」を高める

一方で「我が社の事業環境は特段、改善していない。それを主張しても金融機関が我が社に融資可能と考えてくれるとは思えない」と考える企業は多いと考えられます。コロナ禍はここに来て第8波となる兆しですし、ロシア・ウクライナ戦争も継続しており、世界的な物資の高騰が収まるとも思えないのです。今年後半になって急速に進んだ円安も、多くの事業者の足枷になっています。


では、企業には資金調達できる方策が全くないのか?まだ残されていると考えられます。「自社の事業性が高まった」と金融機関に伝え、その情報でもって事業性評価してもらうのです。「直近決算までは売上が低迷、損益分岐点を下回った。また値引きをしたので粗利率も低下、赤字が膨らんでしまった」けれども、今期は「新しい市場に踏み込んだ」、「新しい顧客を開拓できた」、「既存顧客に買ってもらえる新しい商品を準備した」、「付加価値をつけて単価・利益率を向上させた」等の策を講じて売上・利益が回復したことを伝えるのです。


「それは担当者に伝えたが、結果的には融資可能との判断には至らなかったようだ。」事業性を高める取組を行い成果が出ていることを見える化して提供したでしょうか?経営者から口頭で伝えられただけでは、金融機関は判断することはできません。融資できるか否かの判断は担当者だけが行なっている訳ではなく、担当者の上司である融資役席や支店長等の合意を得る必要があるからです(これまでの経緯や融資残高によっては、さらに本店審査部や担当役員の合意も必要となる場合があります)。金融機関は、これら多くの関係者を巻き込んでの意思決定を「りん議(担当者が融資して良いかを伺う書面を作成、関係者に回していき各々が合意したら印鑑を押す。最終的に判断すると決められた者(決済権限者)が印鑑を押すことで最終決定とする)」でもって行なっています。担当者が「社長ヒアリング結果」を記載しただけでは関係者は納得し難いでしょう。企業が提出した文書が添付されていると、納得してもらえる可能性が高まります。


「事業性を評価してもらうためには文書化が必要だと理解したが、一人では難しい。誰かと相談したい」と思われるなら、地域の「よろず支援拠点」などにご相談ください。StrateCutionsでもご相談に乗っています。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>




なお、冒頭の写真は 写真AC から ラッキーエース さんご提供によるものです。ラッキーエース さん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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