「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第170回

「実行確実性」を示す

落藤 伸夫 2021年7月19日
 



今週はオリンピックが始まるのに準備万端という気がしません。コロナ禍の中でオリンピックを行うには相当の覚悟と準備が必要なのに感じられないのです。企業でいえば、コロナ禍により経営基盤が弱体化してしまった中、大きな仕事に着手すべき時が来た。この仕事を上手くこなせるか否かで社運は天と地ほど差がついてしまうのに、材料の確保や機械設備の運用計画、人員配置などは手付かずという状況に例えられると思います。


オリンピックはヤキモキして注視するしかありませんが、現状を打破するために事業改善・再構築を目指して戦略計画を立てている企業者は、似たような罠に陥らないようにしましょう。先週、どうすれば戦略計画を生きたものにできるかを考えました。今週はそのうちの1番目、実行確実性を示すことについて、考えてみます。



最適な戦略を明快に説明している

前々回に戦略計画とは「今までとは違うことに取組むことを、無謀ではなく『価値あるトライ』にできる内容が書き込まれた計画」とご説明し、「価値あるトライ」にする方法として、「転業で、過去の顧客を新事業に引き寄せる」あるいは「製品の利便性を飛躍的に高める」方法を、ご説明しました。今回は同じことを別のアプローチでご説明します。


例えば東京から大阪までいく場合に、新幹線、在来線、高速バス、自家用乗用車で高速道路利用、一般道利用などがあります。旅行の目的や人数、かけられる予算などにより最適な経路が異なります。3トンの荷物を運ぶならトラックのレンタルが最適解でしょう。同様に企業が「新製品を開発する」などの新しい取組みを行う場合、どの経路(戦略)を選ぶかは非常に大切です。何がなんでも、全てを自社開発する方法しかないと思い込むと、思わぬ罠に嵌り失敗するかもしれません。最適な戦略を選び関係者が理解できるよう明確に示すことが大切です。大阪に行く場合を例にすると、社長は新幹線を考えているが経理部長は高速バス、製造部長はトラックを考えているようでは成功は覚束きません。



実行すべき行動を明らかにする

次にポイントになるのは、実行すべき行動を明らかにすることです。東京から大阪まで新幹線で行く場合、メンバー全員が東京在住歴1年以上であるならば「午前10時に東京駅に集合」と声がけすれば良いでしょう。しかしこのイベントのために初めて東京に来る人がいるなら、宿を聞いてそこから東京駅までの経路を一緒に確認するのが、それも口頭でなく地図を見ながら確認した方が確実でしょう。企業でも初めての取組みなら同様に「あなたはどんな行動をとるべきか」をしっかりと確認しておかなければ、必要な行動が執られなかったり、想定とは全く別の行動がなされる可能性があります。


戦略実行時にアクションプランを確認することには、もう一つの意義があります。企業で経営戦略を行う場合、現場担当者が「戦略行動」にだけ携わっていることは稀で、多くの場合、普段の行動と併行して行なっているでしょう。例えば既存顧客のご用聞きをしている営業担当者に、新規顧客開拓が求められている場合などです。このような場合、得てして戦略行動は後回しになり、担当者からは「既存顧客の求めに応じるだけで精一杯だった」との言い訳の言葉を聞くことになります。


しかし忙しい中でも時間を割いて戦略行動を執らなければ会社の命運は危うくなるでしょう。このような場合に確実に実行してもらうため、行うべき行動を明確に示すアクションプランが役に立つのです。「今週はアクションAを必ず行う。必達だ!」と宣言すれば、担当者の強く意識付けられます。それでも実行できなかったら、その原因が突っ込んで議論されるでしょう。例えばセクション内で助け合うなどして、確実に実行されるよう促していきます。



実行・実現の理由がある(モチベーション)

もう一つ、実行を確実にする要素として「実行・実現の理由」が挙げられます。いわば「モチベーション」ですが、そういうと単に「やる気」と解釈される場合があり筆者はあまり使っていません。「私が実行して約束した成果を出さないと、とても困ったことになる」という意識を皆に強く持ってもらうことを意味しています。


「なるほど、ノルマやボーナスで釣るのだな。」他にもあります。例えばある製造業企業が受注生産する場合、期限に完全な製品を納めれば料金100%を受け取れるが、1日遅れたら90%の支払い、以降1週遅れると支払いも10%削減され、10週以上遅れるとペナルティーが課されるとします。このような場合には、ノルマやボーナスで釣るよりも、事情を説明した方が動機付けとなるでしょう。誰でもペナルティーの戦犯にはなりたくありません。


経営戦略の場合も同様のことがいえます。戦略を実行し成果を出す大切さ、あるいは出せなかった場合のことの重大性をしっかり説明することで、何よりの動機付けとなる場合があります。ビジョンの共有が大切なのです。




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なお、冒頭の写真は写真ACから mybear さんご提供によるものです。mybear さん、どうもありがとうございました。


 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


HP:StrateCutions

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