「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第212回

事業改善のナッジ(成功のきっかけ)

落藤 伸夫 2022年6月13日
 



コロナ禍は収束せずにウイズコロナの時代に突入してしまい、半導体や材料・資材不足や燃料の高騰などから大打撃を受け、ロシアによるウクライナ侵攻により更に先が見通せない状況になりつつも、転業や新製品開発・新市場開拓などのイノベーションに踏み込むことが難しい企業が存在します。それでも持続化・起死回生を目指すなら事業改善を目指すしかありません。前回は「コスト削減・効率化」と「市場を増やし、顧客のすそ野を広げる」という方向性について考えてみました。今回は、取組をどうやってスタートできるかを考えてみます。



取組をスタートさせられない理由

「コンサルタントは良いよ。事業改善として『コスト削減・効率化を進めよう』もしくは『市場を増やし、顧客のすそ野を広げよう』と言っていれば良いのだから。しかし、それを実際に手掛ける経営者の身にもなって欲しい。コスト削減・効率化や市場の拡大、顧客裾野の延伸は、企業にとって永遠の課題だ。どう取り組めば良いのか、そう簡単に答えが出る訳ではない。だから始めることさえ、難しいのだ。」その通りだと思います。


例えば前回、コスト削減・効率化に向けたIT活用をご提案しました。日本の中小企業の多くがIT導入で遅れているため、これを導入することでコスト削減や業務の効率化を目指せる場合があるのです。一方で「そうか、IT導入が切り札になるのなら前向きに考えたい」と取組を始めようとすると現場担当者から反対があるかもしれません。


例えば「知り合いの職場でITシステムを導入したそうだが、今まで活用していた情報が扱えないので以前通りの手作業が残ってしまったそうだ。多少は手間が省けたようだが、不慣れな作業が加わったので神経を使う。以前の方が良かったと聞いている」と、自社で同じ問題が生じないか不安になっているのかもしれません。もしかすると経営者自身がそのような話を聞いて、二の足を踏んでいるのかもしれません。


このような疑念を抱いている人に「いや、それは限られた事例だ。ITを導入した企業はだいたい上手くいっている」と答えたとしても、納得し辛いでしょう。問題は統計的平均値ではなく「私の会社は成功するのか?私の仕事は楽になるのか?」だからです。



「楽な取組」ではなく「楽しく取り組む」を目指す

「IT導入で楽になる」というキャッチフレーズ。決して嘘ではなく、実際に大きな収穫が得られる場合がほとんどですが、それには「超えなければならない山」があることにあまり注目されていないような気がします。先程の「ITシステムを導入したが今まで活用していた情報が扱えないので以前通りの手作業が残ってしまった。手間が2重になった」も、超えるべき山だったのです。その会社は、ITシステム導入のため、これまでの手作業を分析し、使えるシステムを選択、導入後は仕事の手順や作業を変更するという山は超えましたが、導入したシステムでは扱えない仕事があったという山は越えられず、結果として大きな成果を得ることは出来ませんでした。このため「それまで払った努力は何だったんだ!」というネガティブな思いが表に出てしまったのです。


では、どうすれば良いのか?もう一息頑張って「導入システムでは扱えない仕事も合理的に処理する方法を考える。できればITシステムに統合する」という山を超えるのです。そうしたら倍加した手間と労力を超える成果が得られて「導入して良かった」と思えるでしょう。


事業改善(そしてイノベーションでも)に取り組むにあたっては、実は「超えたと思ったらまた山があった。いつまで山を超えなければならないのか」いう気持ちになることが多いと思います。というか、そのような状況がほとんどです。このような事態に「明日は楽(らく:手が抜ける)になることを目指して頑張る」という気持ちで取り組むと途中で萎えてしまうことが多いのです。それよりも「今日を、楽しく頑張る」という気持ちを持った方が、成功が得られる可能性が高いのです。


「問題に取り組むこと自体を楽しむのは難しい。なぜ自分だけが、そんなに苦労しなければならないのか?」そう思うなら、一緒に楽しみながら取り組む仲間を作りましょう。まず2つの世界で仲間を得ます。一つは同じく経営改善に取り組む他社の経営者、もう一つは社内で仕事する従業員や統括する管理職です。「今まで何度も経営改善に努めたが成功しなかった」という経営者の話を聞くと、これら2つの仲間を持っていなかった場合がほとんどです。これら2つの仲間を見つけることが事業改善のナッジとなり、達成に近付く原動力になります。




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なお、冒頭の写真は 写真AC から ieppei さんご提供によるものです。ieppei さん、どうもありがとうございました。




 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


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