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「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?plus

第30回

専門家の助けを借りる

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
当社の事業性を評価してもらうことによって資金調達することを考える場合、中小企業診断士や税理士、その他のコンサルタントなど専門家の活用を検討するのも良いかと思います。「借金の手伝いをしてもらうのか?それは遠慮しておきたいな」という声も聞こえてきそうですね。しかし「事業性評価時代」となった今、専門家を積極的に活用する理由があります。

実を言うと、筆者自身、以前は、借入の支援について消極的な考えを持っていました。第一の理由として、以前は融資が「格付け」をベースに判断されていたことが挙げられます。とすると、融資の支援は、勢い、決算書の調製がメインになりますが、それは税理士の仕事でしょう。中小企業診断士としてご支援できることは少ないと感じていたのです。

第二の理由として、筆者が中小企業信用保険制度で保険金支払い審査をしていたことが挙げられます。これは、中小企業が倒産などで借入金を支払えなくなったので信用保証協会が代位弁済した場合に支払われる保険です。約30年の公庫キャリアの大半を保険金審査業務に携わったことで、安易な借入の怖さを身に沁みて感じました。

しかし、事業性の評価をベースにした融資判断が加わったことで、事情は大きく変わってきました。今までと違った形で専門家がご支援できる場面が出てきたのです。事業性評価を推進している金融庁も、このような専門家の関わりを歓迎しているようです。


強みを発見する支援

事業性評価融資の第1歩は、中小企業が持つ強みを金融機関に認めてもらうことです。しかし企業にとって、自分自身の強みを正確に判断するのは意外と困難です。冷静に、客観的に、他と比較することが難しいからです。そんな時、第三者である専門家の目を通して評価してもらうことが役立ちます。

専門家に評価してもらうと、時には、自分が意識していたのとは異なるポイントを強みとして指摘される場合があるでしょう。このような場合、「第3者は、やはり、我々ほどには我が社のことを理解していない」と考えてしまうと、せっかくの強みが生かされないままに放置されてしまう可能性があります。

自分の意見とは違うなと思っても、是非、専門家がなぜそれを強みとして挙げたのか、しっかりと事情を聞いてみてください。専門家は、あなたが「当たり前」と思っていることが実は世間では当たり前ではなく、希少性の高い価値を秘めていることを知っているかもしれません。新たな強みが発見できれば、しめたものです。強みは一つだけでなく複数あることで、複合的な輝きを持つようになるからです。


事業改善への支援

中小企業診断士など一部の専門家は、企業が強みを活かす方法を心得ています。例えば、製品の品質に絶大なる自信を持った企業があったとしましょう。優秀な品質は、事業を行う上で強力な「強み」となりますが、それだけでは「事業性」にはなりません。それが顧客に認められ、売上に繋がっていかなければ「事業性がある」と金融機関は判断できないからです。

品質が秀逸であるにもかかわらず収益があがらないのは、もしかしたら、顧客が求める納期を守ることが難しいからかもしれません。でも、その企業には高い品質を実現するマネジメント力はあるのです。その力を納期管理に応用できれば、顧客満足度が上がって売上に繋がるかもしれません。このような場合、マネジメントに強い中小企業診断士に依頼することで、企業の秘められた能力を「事業性」に結実させることができるかもしれません。


「事業性評価」への支援

現在、実は「事業性評価」には「共通認識」というものがありません。ある金融機関は、昨年に事業性評価が叫ばれるようになる以前から類似の取組みを行なってきたので自信を持って事業性評価をベースにした融資に取り組んでいるようですが、そうではない(たぶん大多数の)金融機関にとっては「何を、どう見て、どう判断することが事業性評価をベースにした融資なのか」について、確たる指針をもっていない状況のようです。

このような状況下、金融機関に事業性評価をベースにした融資判断をしてもらいたいと考えるなら、企業の方から「提案」をすることが効果的です。しっかりと自己分析した上でビジョンを明確化し、「我が社には、このような事業能力があり、将来性がある。その実現に向けて既に取り組んでいるし、着実に成果をあげつつある」ことを論理的に説明する事業計画書を作成するのです。専門家は、このような事業計画書の作成を支援することができます。


事業性評価の時代に入り、企業支援のあり方も大きく変わってきたと感じています。以前は、事業改善の支援と借入の支援は別物と捉えられていたことが多いと感じています。一方で事業性評価時代に入ると、両者をシンクロさせることが期待されるようになりました。以前にもご説明した「金融と経営支援の一体的推進」です。これから借入を考える場合には、専門家の助けを借りて事業改善も合わせて行うよう検討することをお勧めします。


 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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