「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第137回

コロナ特別長期保証の審査支援体制

落藤 伸夫 2020年11月9日
 



日本政策金融公庫が事業性評価を行う「コロナ特別長期貸付」に引き続いて、信用保証協会による「コロナ特別長期保証」をご提案しているところです。コロナ特別長期保証は、コロナ特別長期貸付と同様、借入時点ではコロナ禍の影響などにより融資は難しいと判断されてしまう中小企業に、長期的な視野で、将来に実現するだろう事業性をベースに融資を行おうとするものです(それが「長期」という名称の由来でもあります)。


これまでの信用保証付き貸付では、審査は金融機関と信用保証協会が各々行なっていました。では、コロナ特別長期保証では、事業性評価を誰が行うか?筆者は、事業性評価による審査は金融機関が行い、信用保証協会はその妥当性確認により審査する形式を提案しています。すると「金融機関の中には事業性評価できないものがあるだろう。その場合は、どうするのだ?」という意見があると思います。今日はその点について、考えてみます。


行政・諸機関との連携・制度活用

金融機関の中には、人的資源が少ないことや、これまでノウハウを積み重ねるチャンスがなかった等の理由で、事業性評価の推進に困難を感じているところがあると考えられます。筆者が提案する仕組みでは、信用保証協会が妥当性確認をする中で指導・フォローすることを期待していますが、白紙に近い状況だと、それでも「コロナ特別長期保証に取り組むことは難しい」と感じる金融機関が出てこないとも限りません。それは、当該金融機関の顧客である中小企業が「コロナ特別長期保証」を利用できないことを意味し、由々しき事態です。


このため行政には、現在ある支援制度を利用して金融機関の事業性評価をサポートするよう提案します。中小企業庁は「認定支援機関による経営改善計画策定支援事業」を行なっており、活用できるでしょう。当該制度は、事業計画書を策定し、モニタリングしてもらうことで実効性のある取組みを行おうとする企業に、専門家報酬の一部が支援される制度です。適切に作成された事業計画書は、金融機関にとって、事業性評価に取り組む上での効果的支援となるでしょう。また同様の制度を商工会議所などの機関と連携する形で用意している地方公共団体が少なくありません。これらも利用できるようにすると共に、事業性評価による融資が可能な状況かを検討したり、可能な場合、中小企業として必要な対応を教示するなど、きめ細かい支援にも取り組むよう期待しています。


公庫による協調審査制度の創設(中小企業事業)

企業から情報提供があったとしても、特に事業規模や借入額等が比較的大きな企業について、「事業性評価による審査そのものに不安がある」と感じる金融機関があるかもしれません。地方の地域金融機関の中には、地域を支えてきた企業がコロナ禍で大きなダメージを受けてしまい、事業性評価による融資が必要になったにもかかわらず、過去にこれほど大きな事業性評価案件の審査経験がなかったため、対応しきれない状況もあり得るのではないかと考えられます。この障害に対処できなければ、金融機関にとっても企業にとっても、そして地域全体にとっても、マイナスの影響を及ぼすと考えられます。


この事態に対処するため、日本政策金融公庫(中小企業事業)との協調審査制度(コロナ特別代理貸)を提案します。これは、地域金融機関が中・中堅企業から事業性評価を前提とした融資申込みを受けた場合に、審査が困難と考えられる場合は、金融機関の判断で公庫(中小企業事業)に協調を申し込み、申込額の一定割合について公庫資金の代理貸とする一方で、審査について公庫と協調できる制度です。その、民間金融機関融資分を「コロナ特別長期保証」の対象とします。公庫が事業性評価による審査を行い、地域金融機関は面談などで同席、審査プロセスや結果を共有することで、適切な事業性評価を行うと共に、ノウハウを身に付けることを目指します。現在、日本公庫(中小企業事業)は、事業性評価の実績を最も積んできた機関の一つで、そのノウハウは膨大です。民業補完を目指す日本公庫には、このような民業支援もメニューに入れてもらいたいと考えています。


金融機関再編に新たなパラダイムを

現在、地方の民間金融機関、特に銀行の統廃合による再編成が検討されているようです。筆者としては、以前にも分析した通り、それは事業性評価の推進による中小企業支援にプラスの影響もマイナスの影響も及ぼし得るので、総論として賛成・反対を論じたいとは思いません。それよりも、事業性評価の推進による中小企業支援にプラスの影響が出る制度を提案します。それが、今回の「コロナ特別長期保証」です。これは、「新たな信用保証制度の提案」という衣を纏いながら、実は中小企業向け金融システムの再編を提案するものです。信用保証協会には「事業性評価の妥当性を審査する」という役割、日本公庫には「事業性評価ノウハウ伝授の伝道師になる」という役割を新たに与え、その軸のもとに地域金融機関が自らの役割を再定義する金融システムを提案します。


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なお、冒頭の写真は写真ACから craftbeermania さんご提供によるものです。craftbeermania さん、どうもありがとうございました。

 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


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