「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第171回

「確実に成果が出る計画」にするには

落藤 伸夫 2021年7月26日
 



起死回生のため戦略計画を立てたのに、それを「生きた計画」にしなかったので成果が得られず最悪の結果に陥ってしまった企業は少なくありません。先週は、生きた計画にする方法として「実行確実性」を考えました。今回は「確実に成果が出る」側面を考えてみます。



成果を正しく定義する

成果として「新製品を開発する」や「新事業に乗り出す」等を示す経営戦略に出会す場合があります。売上・利益等の数値計画は必須なので、それなりのものは掲載されていますが、新製品や新事業の実現と売上・利益等の関連性が明確に示されていない計画です。経営者は「新製品あるいは新事業が実現できれば我が社は窮地から抜け出せる」と考えたのかもしれませんが、それだけでは、窮地から抜け出せる可能性は極めて少ないのです。逆に、それが更なる窮地に追い込む場合さえあります。

ある、自社製品開発を目指していた製造業経営者の相談に乗っていた時のお話しです。自社の高い技術力を生かせる新製品を開発するため、類似製品を生産していた企業の製造責任者だった人物を顧問に迎えたそうです。そして既存製品にはない高スペックを実現する試作機が完成しました。その報告を受けて筆者は「もうすぐ製品化ですね」と喜びを分け合いましたが、1年経っても製品化の発表がありません。理由を聞くと「顧問がゴーサインを出してくれないから」だそうです。結局、製品化はそれから約半年後でした。1年半の遅れが当社の業績回復に暗い影を落としたのは、言うまでもありません。


せっかくの新製品開発がなぜ「起死回生」に繋がらなかったのか?戦略計画の成果を「新製品の実現」と定義したからだと考えられます。計画は、PDCAサイクルを回しながらゴール実現を目指すツールです。「新製品による業績の回復」と定義していたら、予定時期に業績が回復できないことに「なぜだ?」と問題意識を持ち、対応したでしょう。しかしその会社は「新製品の実現」と定義したので、顧問が「製品化は待ってくれ」と言った時、待つことに疑問を持ちませんでした。筆者が「待っている間に資金は流出、他の受注に集中もできず、会社は傷むばかりだ」と警告しても、なす術はなかったのです。



売れる・利益が出るロジックを示す

確実に効果が出る計画にするもう一つのポイントは、売れる・利益が出るロジックを明確に提示することです。「売上計画や利益計画ではないのか?」いいえ、それらは数値計画で、求められているのは売れる、あるいは利益が出るロジックで、別ものです。例えば利益が出る体質になるため売上を毎年5%増加し、3年後に黒字化する計画を立てたとしましょう。数値計画を立てただけで満足したのでは「死んだ計画」になってしまいます。売れる・利益が出るロジックが示されていないからです。


ある自動車販売店の例で考えてみましょう。当該販売店の隣町は人口が増加傾向にあるベッドタウンでした。郊外で自動車は必須なので社長は当初、「ナンバープレートが遠隔地名(もとの住所)の自家用車所有者は、黙っていても買換え期に自社を使うだろう」とのんびり構えていましたが、数年経っても自社の売上は伸びませんでした。こちらから打って出なければなりません。そのため売上拡大のロジックとして「近隣住宅地でのローラー作戦」を考えました。車を所有する住戸へアンケートを持参して訪問、車検時期の3ヶ月前に来店すれば景品を提供するクーポン券を同封してカタログや提案書を送付して買い替えを促しました。5%売上増とは月に3台、新規顧客から売れること。そのために30人の来客が必要と計算、毎月300軒を訪問することとしたのです。



市場の存在を示す

確実に効果が出る計画とするポイントの3番目は、アプローチできる市場の存在を示すことです。先ほどの自動車販売店の場合は、市場の存在を証明することは簡単でした。隣町の成長は有名で、統計を見れば人口増加を確認できたからです。競合もそう多くはなく、訪問できる住戸が十分に存在することは、容易に納得できました。


一方で、大都市などで同業種が乱立して競合状況にある場合は工夫が必要です。「当店から半径1km以内に3万人が住んでおり、市場としては十分だ」と説明しても、今まで同じ状況で十分な売上が立たなかったのです。人口を伝えても「十分な市場がある」とは認めてもらえないでしょう。この場合「当店が満足な売上をあげるためには1日に30人のお客様が必要、お客様は10日に一度、当店を利用してくれるとして、300人のコア顧客が必要」と置き換えられるかも知れません。「当社アプリを登録しお買い得情報を閲覧してくれる人が1,000人いれば、そのうち300人は利用してくれる」と分かれば、アプリ登録してくれる1,000人の存在でもって市場を示せます。


計画の成果は自然には生まれません。しっかりと仕組むことで実現できます。ぜひ、それを考えてみて下さい。




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なお、冒頭の写真は写真ACから fujiwara さんご提供によるものです。fujiwara さん、どうもありがとうございました。


 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


HP:StrateCutions

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