よどみのうたかた

第32回

どうする猛暑対策 迫られる仕事や生活の変化

イノベーションズアイ編集局  経済ジャーナリストA

 

今年も猛暑だ。筆者が住んでいる静岡市では昨年7月に史上初めて40度を越える気温を観測したが、今年は8月6日に国内歴代2位タイとなる41.4度を記録した。駿河湾に面している静岡は、内陸に比べると冬は暖かく夏は涼しいのだが、昨年あたりからはそうも言えない状況だ。静岡でも、メディアや行政が連日のように熱中症アラートの発出を伝え、不急不要の外出を控えるよう促している。

しかし、仕事もあるし買い物とか通院みたいなことは取りやめるわけにもいかない。せめて仕事については、コロナ禍で培ったノウハウを活かして可能な限りリモート化するという手もありそうだが、コロナ禍時のように徹底して外出を避けるというムードはない。

身の危険を感じるような暑さの中で、夏の全国高校野球、いわゆる甲子園大会が8月5日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕した。

甲子園のある兵庫県では、7月30日に丹波市で国内観測史上最高(当時)となる41.2度を記録したばかり。外出自体が憚られるようなこの高温かつ炎天下での試合だけに、選手はもちろんだが、観客席を埋める応援団や父兄、その他の観客も危険にさらされることになる。

筆者も、この甲子園大会の予選にあたる静岡大会の決勝を静岡市内の球場(草薙球場)で観た。その際は気温33~34度、湿度80%弱で、甲子園に比べればまだましだが、それでも長時間そこにいることには不安を感じた。

もちろん、大会関係者もいろいろと配慮している。近年は、試合の時間も午前中で、試合中にも水分補給や休憩のための時間が確保されている。それにしても、2時間程度炎天下にいるのはやはり危険なことだ。

そうした問題意識は多くの人がもっている。「死者が出てからでは遅い」との声もある。

じゃあどうするのか。これがなかなか難しい。

時期をずらせばいいようにも思うが、夏の甲子園は春の甲子園と秋の地方大会の間に設定されており、全国各地で行われる予選大会などの都合からも変更は困難だという。学校が夏休みになるこの時期を逃すと、予選などを日程的に消化し切れないという話もある。

時期が動かせないなら、球場を涼しくするという手もありそうだ。例えばドーム球場で開催するのはどうか、と。これについては、ドーム球場のスケジュールとの兼ね合いが課題となる。それは何とかできそうだが、それ以上に「高校球児やファンは“甲子園”に強いこだわりがある」(関係者)という。他の球場にするとなると大きな抵抗が予想されるとも。

ならば、甲子園をエアコン完備のドーム球場にしてはどうか。それは球場の運営会社の問題で、理由は伏せるが「無理だろう」との見方が超有力だ。それ以前に、甲子園で行われるのは全国大会なので、地方の予選大会はどうするのかという問題もある。

できない理由を考えるのではなく、どうすればできるのかを考えるべきなのだが、どうやらいろいろと難しいことは確かだ。とりあえずのところは現行の、せめて時間をずらし、休憩もいれて…ということらしい。しかし、このまま続ければそのうち何か起きそうだ。

ちなみに、甲子園大会が開幕した8月5日には群馬県伊勢崎で41.8度という国内の史上最高気温を記録した。その後も各地で40度超えが続いている。

猛暑で大気中の水分量が増えることから、豪雨被害も増えてきた。100年ほど前までに骨格が整ったといわれる日本の河川の堤防などは、近年の豪雨に対応できる設計にはなっていないことが多いともいう。

今年6月1日から、企業には熱中症対策を強化することが義務付けられた。冷感グッズや飲料の配布といった取り組みも始まっている。ただ、猛暑はこれからますますひどくなる可能性がある。農業や社会インフラなどの分野では、さらなる高温への対応が迫られつつある。コロナ禍ではないが、仕事や生活もそれこそゆでガエルになるまえにスタイルを大きく変えなければならなそうだ。それも、そう遠くない将来に。

そう思っていても、秋が来れば変革への危機感は薄れてしまいそう。困ったことだ。

 

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