つるちゃんの雑魚釣り紀行

第1回

那覇港で熱帯魚を釣って食べる

イノベーションズアイ編集局  編集アドバイザー 鶴田 東洋彦

 

辞書を引くと「雑魚」というのは、商品価値が低く、取るの足らない小魚の事を指すらしい。転じて「大したことがない人物」とか「つまらない者」の例え、とある。だが、釣り好きの立場から言わせてもらえば「ちょっと待て」と言いたい。本命よりも美味しい雑魚もいれば、引き味が強く釣って楽しい雑魚もたくさんいる。日頃、「ダメ社員」と言われた人が突拍子のない分野で強みを見せたり活躍したりする、まさに「雑魚魂」だと思う。そう、雑魚をバカにしてはいけない。ということで全国の漁港や港湾を訪ねて、釣り糸を垂らし雑魚と戯れながら世の中を眺める新連載「つるちゃんの雑魚釣り紀行」を始めたい。いざ出発!

いざ出発!と気負ってはみたものの、さてどの漁港から始めるかというと、これはなかなか難しい。日本の海岸線にある漁港は3000近く。貨物や旅客利用が主体の港湾となると、もう数えきれない。しかも、雑魚と言われる地魚は東京や大阪の魚屋にも並ばず、競りにもかけられず、地元の漁師だけが食味を知ってるような魚も多い。要は行って釣らなきゃわからない。

と散々迷った挙句に、連載スタートの場所に選んだのは日本の南端、沖縄の玄関口である那覇港ということに。国際コンテナ航路を含んで50以上の航路を持ち、周辺の40以上の島々の経済を支えるこの港は、今、拡張工事の真っ最中。とはいえ工事機材が積み上げられた港のはずれの防波堤には釣り人もちらちら。これはなんかいる!

とここまで書くと、つい最近の経験談のように聞こえるが、ここで釣り糸を垂らしたのは数年前の残暑が残る(沖縄はいつでも夏のようだが)秋の話。とはいっても景色も変わってなければ、防波堤も健在。そもそも那覇の港のはずれでどんな雑魚がかかってくるか、そっちの方に興味があるのではと勝手に解釈。第1回目は数年前を思い出して「那覇港で雑魚を釣る」ということで。

いきなり飛びついた目玉の大きな赤い魚】

那覇港で釣れた「雑魚」たち。本土では見られないような鮮やかな魚にびっくり

釣り好きは誰でもそうだが、一番胸がドキドキするのは第一投目ではないか。とりわけこの南国の碧い海。ここでは何が釣れるか見当もつかない。迷った末にテトラポットが沈んで、魚の気配が濃厚な埠頭のへり(へちという所)のあたりに、ゴカイを餌にした胴付き二本針をそっと落とし込んでみると。

いきなり飛びついてきたのは、目玉が飛び出したような赤い見たこともないような魚(写真の真ん中上)。とにかくウロコが硬い。そのあとは伊豆や和歌山あたりでもおなじみの縞模様のオヤビッチチャ、そうスズメダイ。防波堤の上からも泳ぐ姿はよく見える。

美味しいチョウチョウウオの姿煮

続いての強い引きは水族館でおなじみの白い体にイエローのストライプのひらひらした姿。チョウチョウウオ(写真の真ん中)が。さすがに南国沖縄の海は違うとびっくり。ついでに体の真ん中から白と黒の二色に分かれたり(写真真ん中の下)や色鮮やかなベラが上がってくるあたりでは、気分はもう水族館の捕獲員のよう。

2時間程度で釣りは切り上げて、早速、知人たちと獲物を料理。ちなみに最初に釣れた目玉魚はアカマツカサ。地元では「ミンタマアカイユー」といって、岩やテトラ脇の暗がりでよく釣れるらしい。ちなみに「ミンタマ」は目玉、「アカ」は赤色、「イユー」は魚という意味だとか。

食用にならないはずのスズメダイの方は、実は九州・博多の居酒屋や寿司屋で大人気の魚。縞模様のないほうが多いが、鱗をつけたまま塩味で焼いたのが「アブッテカモ」の名前で出てくる。どうやら「炙ったら鴨の味がする」(ほんとか?)というのが語源の郷土料理らしいが、この時はみんなまとめて煮付けで。

みんな美味!美味!とりわけ、チョウチョウウオの身がしっかりしているのにびっくり。箸をつけるのに抵抗はあったが、この写真の中では最も美味しかった。目玉魚のアカマツカサも鱗を剥がすのに散々苦労したが、身離れもよく大満足。ベラの類は、もともと身が水っぽいだけに、やっぱり一晩寝かせて塩焼きかな。でも白くきれいな身の色。旨味も十分でした。

釣りたてだから旨いんだろう、という理屈かもしれないが、那覇空港の真下、飛行機の音もひっきりなしのこの埠頭での釣りは満足の一言。釣れた魚もみんな雑魚ばかりだし。それにしても、こんな熱帯魚のような魚が泳ぐすぐそばで拡張工事が進む沖縄経済の勢いもすごい。

“熱気”を貰える場所、沖縄

いま、ちょうど1970年、沖縄返還前のコザ闘争を舞台にした公開中の映画「宝島」を見たばかりだが、政治問題は別に置くとして、あの当時の熱気のようなものが今は経済に向かっている感じだ。今月25日には沖縄を代表するビールメーカー、オリオンビールが沖縄の製造業として初めて東証プライムに上場、上場益は観光や海外事業に投資するとか。ホテル事業にも進出したオリオンの勢いは止まらない。

那覇の中心部でも高層マンションの建設は続き、大型のクレーンが立ち並ぶ。北部の今帰仁(なきじん)ではテーマパーク「ジャングリア」が稼働。琉球銀行によると、沖縄経済は今年も「底堅い個人消費と旺盛な設備投資意欲が続く」という。

もちろん観光客が落としていく恩恵が大きいかもしれないが、那覇空港に降りただけでも、そんな沖縄の熱気は伝わる。雑魚釣りは別として、観光でもゴルフでもいい。会社務めの人たちが“熱気”を貰うには最高の場所だと実感。ということで、第一回目は終了。次回はどこの港に行こうか、乞うご期待!

 

プロフィール

イノベーションズアイ編集局
編集アドバイザー
鶴田 東洋彦

山梨県甲府市出身。1979年3月立教大学卒業。

産経新聞社編集局経済本部長、編集長、取締役西部代表、常務取締役を歴任。サンケイ総合印刷社長、日本工業新聞(フジサンケイビジネスアイ)社長、産経新聞社コンプライアンス・アドバイザーを経て2024年7月よりイノベーションズアイ編集局編集アドバイザー。立教大学、國學院大學などで「メディア論」「企業の危機管理論」などを講義、講演。現在は主に企業を対象に講演活動を行う。ウイーン国際音楽文化協会理事、山梨県観光大使などを務める。趣味はフライ・フィッシング、音楽鑑賞など。

著書は「天然ガス新時代~機関エネルギーへ浮上~」(にっかん書房)「K字型経済攻略法」(共著・プレジデント社)「コロナに勝つ経営」(共著・産経出版社)「記者会見の方法」(FCG総合研究所)など多数。

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