穏やかなることを学べ
筆者:イノベーションズアイ編集局 編集アドバイザー 鶴田 東洋彦

英国の文筆家アイザック・ウォルトン卿が著作「釣魚大全」の最後に記した一言「STUDY TO BE QUIET」の直訳である。開高健がロンドンでこの言葉が書かれた銅プレートを探し出し紹介したことで広く知られることになった。開高から聞かされた井伏鱒二は「“静謐の学習”とでも言えるな」と語ったそうだが、含蓄のある言葉である。ピューリタン革命の最中の17世紀、妻や子を病気で亡くしながらも、湖や渓流に釣り糸を垂れ、故事伝承を紡ぐように書きとめ、この言葉で結んだ名作の結び。穏やかとは程遠い喧噪の日常で記されたこの言葉は、混沌とした今の社会情勢だからこそ、噛みしめるべきではないか。忙殺されてもなお、穏やかに森羅万象を見つめる。仕事時間が全てではない。喧噪の中にあっても「穏やか」な思いを抱かせるコラムを綴っていきたい。
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第29回 政府の“地域金融強化プラン”で試される地銀・信金の真価 ~22年ぶりの包括的政策、地方...
毎年、松の内が空けるこの時期になると脳裏に浮かぶのは1996年から始まった金融不安のことだ。個人向け住宅ローンを専門に扱うために金融機関が設立した住宅金融専門会社(住専)が過剰な不動産融資を抱えて相次いで破綻、連鎖して銀行や証券会社などがドミノ的に崩壊した時代である。金融や財界担当の記者として年末年始も忘れ、銀行や証券会社が崩壊してくのを這いずり回るように取材した記憶は今でも消えない。
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第28回 中国の台湾統一のハードル、上がった可能性も ~中国特使の目前でベネズエラ襲撃、トラ...
台湾を恫喝しながら南、東シナ海で力による一方的な現状変更を試みる中国の行動、一方で中国に追随する形で核・ミサイル開発を急速に拡大する北朝鮮。トランプ政権の行動は国際秩序の下で決して許されるものではない。だが、乱暴な言い方が許されるならば、こと「東アジアの安全保障」という意味に関しては、今回のベネズエラに対するトランプ政権の行動が、一定の楔を打ち込んだようにも思える。
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第27回 許されぬ中国戦略爆撃機の示威的飛行 ~ロシア軍機とともに日本列島沿いに東京方面へ~
中国の戦略爆撃機が、日本列島沿いに東京方面へ向かう異例の飛行を実施。核巡航ミサイル搭載可能な機体による示威行動と相次ぐレーザー照射事件を踏まえ、日本の抑止力と「専守防衛」を問う。
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第26回 “助けることが難しい命”を助ける ~難病“拘束型心筋症”に対する補助人工心臓の新た...
極めて重篤で治療法が限られる「拘束型心筋症」に対し、東京女子医科大学が国内初となる新しい補助人工心臓(LVAD)手術に成功。心臓移植を安全に待機できる可能性を切り拓いた最新医療の現場をレポートする。
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第25回 日本攻撃で露呈した中国政権の脆さ ~深刻な経済危機、若者の失業率は20%近くに~
高市首相の「存立危機事態」発言を受け、中国政府の過剰反応と内政不安が浮き彫りに。経済危機や若者失業率20%超の背景も解説。
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第24回 常軌を逸した中国の暴走 ~高市首相の“有事”発言に執拗な抗議続く~
高市首相の「存立危機事態」発言に対し、中国が異例の強い抗議を連発。台湾有事、日中関係、米国の対応、そして高市政権への影響を読み解く。
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山本由伸、大谷翔平、佐々木朗希――ドジャース連覇の裏にあった日本人選手の輝き。映画『フィールド・オブ・ドリームス』にも通じる、野球が結ぶ“心の故郷”を描く。
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高市早苗政権の支持率が高い。主要メディアの世論調査でも軒並み60%台の後半、読売新聞に至っては71%。石破内閣発足時の34%の倍以上の数字であり、第一次安倍内閣を超えて歴代5位の数字である。中でも驚くべきなのは18歳から39歳までの「若年層」の支持率だ。石破内閣が15%と史上最低水準だったのと比較して、80%という記録的な数字を示している。
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第21回 泥船の石破政権、ついに幕引き ~国民不在の党内抗争、もはや許されぬ事態に~
泥船も沈むときはあっけないものだ。「関税問題の収束が一つの区切りと考えた」。9月7日の退任会見で、質問をけん制しながら、長々と繰り返した石破茂首相だが、“雪崩を打った”ような自民党議員の総裁選前倒しへの賛同の動きに観念したのが本音だろう。権力闘争の結果は、時に残酷である。
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第20回 日本政治の“漂流”を招いた石破政権 ~国益かかる関税問題、トランプ政権に見透かされた...
連日の猛暑や豪雨情報、甲子園の熱戦などでつい忘れられがちだが、この8月初めにトランプ政権が発動した相互関税に、日本政府は未だに翻弄されて続けている。日米が関税負担を軽減する措置で合意したと主張する石破茂首相だが、米側の連邦官報には、日本はまだこの合意内容の文書が記載されていない。1ヶ月近くも異例の事態が続いているのだ。
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第19回 「問われる石破首相の気概」「未来永劫続かぬトランプ政権、逃げている場合か」
世界が再び「弾圧と戦争」の時代に向かう中、日本のリーダーに問われるのは確固たる外交姿勢と行動力です。石破首相の国際感覚の鈍さや、トランプ政権への過度な配慮が浮き彫りになる中、今こそ日本の進むべき道と気概が試されています。本コラムでは、その課題を鋭く問います。
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第18回 「目に余るトランプ政権の大学圧迫」「“知の集積地”を破壊する愚行」
トランプ政権がハーバード大など名門大学への圧力を強め、留学生排除や助成金凍結に踏み切る中、学問の自由と民主主義の危機が問われている。
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第17回 瀬戸際の民主主義と日本に求められる行動 ~レフ・ワレサ氏の説く連帯の重要性~
世界的に民主主義が約40年前の水準に後退し、権威主義が台頭する中、トランプ政権の登場が分断を加速させた。ポーランドの民主化を牽引したレフ・ワレサ氏は、現在の民主主義の弱体化を、人々の無関心と政治家の自己保身に原因があると指摘。日本も例外ではなく、ワレサ氏は「米国と共に後退するのではなく、欧州や他国と連帯すべきだ」と訴える。今こそ議論と連帯を強化し、民主主義を守る行動が求められている。
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榎本武揚は幕末から明治にかけて蝦夷共和国の建国や外交・教育で活躍し、日本の近代化に貢献した。しかし、幕府から新政府へ転じたことで福沢諭吉らに「変節者」と批判された。本稿では榎本の功績を再評価し、彼の忠誠の対象が武士道ではなく日本の発展にあったことを探る。現代の政治にも通じる彼の大局観を見直すべきではないかと問いかける。
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近年、職場で「発達障害かもしれない」と悩む若手社員が増えています。本コラムでは、職場で見られる“グレーゾーン”の問題に焦点を当て、誤解を避けながら企業がどのように対応すべきかを解説します。DE&Iの推進やピアケアの導入など、企業の最新の取り組みにも注目します。
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政治家というのは、往々にして誤算するものだと思う。昨年、発生した韓国での尹錫悦大統領による戒厳令の発令とその後の収監、シリアでのアサド政権が崩壊とロシアへの亡命、という二人の大統領の信じがたい誤算を目の当たりにして、改めてそのことを痛感した。
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松の内が過ぎたこの季節、必ずと言って思い出す光景がある。薄っすらと積もった雪の上に、重なり合うように散った紅の花弁。横に佇む年配の婦人に「やはり椿の花弁は綺麗ですね」と話しかけると、やんわり「山茶花ですよ」と正された景色の記憶だ。もう20年ほど前だろうか、取材で京都の会社を訪問した後に訪ねた蹴上の山あい、南禅寺に近い社(やしろ)、日向大神宮の境内だったと思う。
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いきなりこんな表現をするのは無粋だとは思うが、どんな年齢になろうと、新鮮な発見には感激する。それが身近な場所であればなおさらだ。そんな気持ちを味合わせてくれたのが、東京・立川市にある「南極・北極科学館」という施設である。
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先日、書棚の隅に積んでおいた小説「渚にて」を、久しぶりに読み返してみた。もう何十年ぶりだろうか。イギリスの新聞記者ネヴィル・シュートが1959年に著したこの作品は、翌年、映画化もされ大きな話題となったが、核戦争の恐怖をテーマに書かれたものの中で、これほど秀逸な作品はないことを、今、この時代を過ごしてきて改めて実感した。今はもう黄ばんだ文庫本だが、貴重な一冊である。
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もうずいぶん昔のこと、自動車業界を担当していた記者から聞いた逸話である。「イタリアには教皇が二人いるんですよ。誰だと思いますか」。もちろんイタリアで教皇といえばローマのヨハネ・パウロ二世を指す。だが、彼によると、パウロ二世は「南の教皇」であり、もう一人「北の教皇」がいるというのだ。
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英国ロンドン郊外のコスフォード空軍博物館といえば、第二次世界大戦中の現存する航空機が多く展示されていることで有名だが、そこに「ビルマの通り魔」「地獄の天使」と、おどろおどろしい表現で展示されている日本機がある。三菱重工業が開発した「100式司令部偵察機(100式司偵)」、連合軍が「ダイナ」と言うコードネームを付けた日本陸軍の双発機である。
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かつては、地域のコミュニティの担い手であった自治会、町内会、婦人会、青年団といった地域団体も、社会環境の変化で存在感を薄めている。日本の都市基盤の整備が「ファーストプレイス」「セカンドプレイス」に集中、結果的に都市のドーナツ化、長時間通勤が当たり前のような社会となったのは否めない。「サードプレイス」の存在が阻害される状況だったのだ。
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沖縄戦が終結して間もなく79年。当時の沖縄県知事、島田叡(あきら)について詳しく知ったのは、産経新聞の西部代表として博多に赴任してからである。「死を賭して」赴任した知事として名前だけは頭にあったが、その生き様に強く感動したのは那覇の奥武山公園の顕彰碑を前にしてからだ。昨今の政界、地方自治の混迷の深さ、相次ぐ企業不祥事などに触れると、改めて島田の責任感、使命感の凄さに感嘆せざるを得ない。
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もう藤の花も終わりだが、先日、ゴルフを共にした友人から庭の藤棚の見事な写真を見せてもらって、改めて感激した。日本原子力発電(日本原電)の広報担当者として原子力の理解に努め、現在は退任している友人だが、藤の花には一家言ある様子。「2月に出来るだけ花芽を残してツルを剪定するのが美しく咲かせるコツ」という。原子力広報の激務の中で、心の癒しが藤の花だったと言う。
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「まちライブラリー」と言う小さな私設の図書館が今、全国で拡大している。大学や会社の事務所、喫茶店、極端に言えば自宅という日常の生活空間に自分の本や寄贈本などを置いて、自由に読んでもらう。こんな発想から始まった小さな図書館が、着実に一歩一歩、地域のコミュニティ形成を促している。
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吉原遊郭の遊女となる「美登利」と、仏門に入る「信如」の淡い恋と別れを描いた樋口一葉の「たけくらべ」。物語は、修行のため信如が寒い朝、美登利の住む姑楼を離れるところで終わる。その別離の場面を強く印象づける花が水仙である。
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大げさではなく、ジャズという音楽は麻薬のようなものだと思う。その魅力に取りつかれたら、もう離れることが出来ない。そんな気がする。現にこの原稿もジャズを聴きながら書いているし、毎晩、飲んで遅く帰った夜でも、必ずボリュームを絞って流す。もう中毒のようなものだろう。
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先日、居酒屋で友人の一人から「何か言うことが年寄り臭くなったな」と言われて、我ながら妙に納得した。確かに話を始めると、何かにつけて「あの頃は・・・」といった前置きが多いような気もする。だが、ここ数年だろうか、齢を重ねるごとに、取材の現場にいたあの頃、そして熱心に応じてくれた経営者の顔が目に浮かんでならない。
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幸いなことに、自宅のマンションの前が桜並木である。窓からその枝を眺めても、まだ蕾は固く、残念ながら膨らみ始めた様子はない。ただ、もう数週間も待てば窓一面に花霞が広がるだろう。そう想うだけでも、心は和む。コラムの初回でいきなり花の話と言うのも気は咎めるが、その歴史を鑑みても我々の誰もがみな思いを寄せる花と言えば、まず桜を除いてないだろう。ということで桜への思いを、春の訪れとともに綴ってみたい。
プロフィール

イノベーションズアイ編集局
編集アドバイザー
鶴田 東洋彦
山梨県甲府市出身。1979年3月立教大学卒業。
産経新聞社編集局経済本部長、編集長、取締役西部代表、常務取締役を歴任。サンケイ総合印刷社長、日本工業新聞(フジサンケイビジネスアイ)社長、産経新聞社コンプライアンス・アドバイザーを経て2024年7月よりイノベーションズアイ編集局編集アドバイザー。立教大学、國學院大學などで「メディア論」「企業の危機管理論」などを講義、講演。現在は主に企業を対象に講演活動を行う。ウイーン国際音楽文化協会理事、山梨県観光大使などを務める。趣味はフライ・フィッシング、音楽鑑賞など。
著書は「天然ガス新時代~基幹エネルギーへ浮上~」(にっかん書房)「K字型経済攻略法」(共著・プレジデント社)「コロナに勝つ経営」(共著・産経出版社)「記者会見の方法」(FCG総合研究所)など多数。