よどみのうたかた

第33回

伊東市長の学歴詐称、騒動の本質は“市長への興味”

イノベーションズアイ編集局  経済ジャーナリストA

 

それにしても、伊東市(静岡県)は大変だ。学歴詐称問題を巻き起こす田久保真紀市長を巡る騒動は収まる気配も見えない。この調子でいけば、市議会百条委員会による刑事告発、市議会による不信任決議案の提出と可決、これに市長が議会解散で対応すれば市議選、市議選後に再び不信任決議が提出・可決すると、今度は市長選…といった地方自治法のフルコースとなる。

しかし、学歴詐称に関する疑惑というテーマや伊東市長という“主役”の立場を考えても、連日のように全国レベルで報道する価値があるようには思えない。

なぜこんなにも注目されるのだろうか。

その理由は、誤解を恐れずに言えばただ一点。“おもしろい”からだ。この現象をきちんと分析することはできないのだが、感覚的に感そうじられる。つまり、本題とは違うところが“庶民の興味”を惹きつけている、と。

実際に、本題である学歴詐称自体はいまや注目点ではない。田久保市長本人が自ら大学に出向いて除籍されていることを確認したと発表。事実関係は“卒業していない”と判明しているのだ。

じゃあなんなのか。

庶民は、その後の田久保市長の言動に引き込まれているのだ。

除籍を指摘する投書を「怪文書」だとして真偽を問う質問には答えず、市長には卒業証書をチラ見せした。しかし、その後調べたら除籍。一連のやり取りは何だったんだ、ということになる。ところが記者会見では「卒業証書は本物だと思っている」「一度卒業という扱いになってなぜ除籍になっているのか」などと発言。同席した福島正洋弁護士も「あれば普通に考えて偽物とは思わない」と同調した。この普通に考えたらあり得ない発言で“じゃあその卒業証書とやらはなんなのか”という新たな疑念が浮上する。

田久保市長の発言は、その後も次々と疑惑を生み出していく。卒業証書や在籍期間証明書、上申書とともに静岡地検に上申し、検察で調べてもらう、7月中に辞職する…などと表明するも、後日、「状況が変化している」などといてこれらを全て反故にした。市長続投を表明後は、市議会議長に卒業証書を見せた際は“チラ見せ”ではなく19.2秒だったと発言した。除籍を発表しているわけで、何秒見せようが卒業したことになるわけでもない。むしろ、偽造した私文書を行使した、と自白しているようなものではないのか。

そんな調子で、発言が励行されないどころか、毎回大きく変化し、その都度新たな疑惑を生み出していく。この様子が多くの人々の興味を惹きつけていると考えられる。

それに輪をかけているのが、田久保市長のキャラクターだ。ちょっと気になる美人だという人が多く、それも飲み屋での議論のテーマとなるのだが、市議や市民からこれほどまでに厳しい非難を受けているにもかかわらず、ケロッとしているという点が注目されている。その神経もまた普通ではないからだ。面と向かってあれだけ言われても動じず、ときより笑顔もみせる。これはなかなか理解が難しい。

というわけで、現下の伊東市の騒動は、ひとえに田久保市長の人となりによるところが大きい。その非常識な言動がマスコミを通じて拡散され、全国規模で庶民の怒りや疑念を駆り立て、絶大な関心となって伊東市に降り注いでいく。そして、巷の興味は今後どうなるのかに向かっていく。

逮捕や起訴、失職…

行く末をみんなが注目している。“厚顔で歴史に残る大ウソつき”との見る向きが多く、なにかなければ収まらないのだ。そしてそれらはいずれも伊東市政とは関係のないことばかり。市政とは関係のない全国的な興味は、まだしばらくこの騒動を手放さないだろう。

 

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