「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第142回

資金繰り表を作っていますか

落藤 伸夫 2020年12月14日
 



とうとう2020年の師走も半ばとなりました。コロナ禍は1年間、世間を騒がし続け、自粛が始まった3月から今に至るまで、経済活動に大きな影を落としています。特に、体力を消耗し尽くしながらも年末需要に期待していた飲食業などに従事する皆さんにとって、週末なのに予約ゼロが報じられるなど、試練の年末となりました。

中小企業団体によるアンケート等によると、一部の企業は、これまでに行った資金調達のおかげで何とか年末を乗り越えていけるとのこと。一方で多くの企業が資金調達の必要がありながらも、春夏と違って今は融資に応じてもらえず、困惑しているようです。年末は資金繰りが厳しい時期なので、この状況は本当に辛いです。今回は、この状況での対応方法を探っていきます。



普段でも資金繰りが難しい年末

年末はお金の出入りが忙しく、普段でも資金繰りに十分な注意が必要な時期です。その理由は多数ありますが、代表的なものとして以下のようなものが挙げられます。

・取引量が増加する

年末は忘年会シーズンだったり、クリスマス需要、年末年始商戦などにより取引量が増加します。普段よりも余計に仕入れなければならず、従業員の残業代やアルバイト等もかさんでいきます。

・年末特有の支出が存在する

年末は先ほど述べた仕入や人件費などの他、ボーナスや年末調整の還付金など年末特有の要因で支出が増加します。また、法人税・消費税等の仮払いや年払い会員費などが約定、もしくは最初の加入時期等の関係で、この時期に巡ってくる企業も少なくないことでしょう。

・掛払い(クレジット・キャッシュレス払い)の増加

年末は売上が増えると言いながら、それが現預金の増加に必ずしも繋がらないことが、企業にとって「痛い」ところです。BtoBビジネスの企業であれば掛売りが普通なので入金はまだ先ですし、BtoCビジネスでもクレジットカード払いに加えて最近ではキャッシュレス払いが浸透してきたため、入金が遅れ気味となっています。

このような状況から、多くの企業にとって年末は資金繰りが多忙になっています。金融機関からの融資の他、社長からの融資などで対応している企業が多いでしょう。



つまり勘が働きにくい時期

取引が増加し、年末年始特有の支払いがあり、掛払いによる入金の「ずれ」があるとは、資金繰りについて、いつもの勘が働き難くなるという意味です。普段なら定常的なキャッシュの動きなので勘が働きますが、年末年始は、それが難しいのです。売上が膨らむ一方で一時的な支払いも多く、客単価が増えた分、お客様はクレジットカードを使うようになって掛売りが増える、などの現象がキャッシュの有り高の把握を難しくしています。支払を一つ忘れると、計算が大きく狂う場合もあります。

「残高試算表を見れば分かるのではないか?」はい、残高試算表を正確に読み取る力があれば、資金繰りを把握できます。しかしそれは、売上と売掛金・買掛金そして経費等として計上されている項目をうまく合算できる人です。また損益計算書では売れ残った在庫分の仕入れ支出は費用計上されず、在庫として資産計上されています。在庫を見て「本来は費用とすべき○○円が、ここに隠れている」と把握しなければなりません。税理士なら自然に分かりますが、会社経営者には難しいでしょう。そもそも残高試算表はリアルタイムではなく「ずれ」があるので、残高試算表に頼るのは危険かもしれません。



資金繰り表の作成を! 

皆さんは「黒字倒産」という言葉をご存知でしょう。黒字でも資金が不足してしまうことがあり、それに手当てしないと倒産に至る可能性があるのです。

勘も働かない、残高試算表からも読み取ることが難しいとなると、資金繰りをどうやって的確に把握すれば良いのか?資金繰り表を作成するという方法があります。特に現預金の出入りが激しく、手元資金(自己資本)の少ない中小企業にとっては必須の資料といえます。普段とは異なる現預金の動きを刻々と捉えていく資金繰り表は、中小企業にとって大切な羅針盤となります。

また資金繰り表は以前にもご説明したように、コロナ禍の中、借入金が増え、新たな融資を受けにくくなった中小企業が新たな資金を必要とする時、金融機関が事業性を見極める大切な材料となります。ある金融機関関係者は「資金繰り表があれば相談に乗りやすいが、持参する企業は少ない」と嘆いていました。年末年始に向けて自社の資金繰りを守り、そしていざと言う時に資金調達できるよう、資金繰り表の作成を強くお勧めします。




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本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。



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なお、冒頭の写真は写真ACから oldtakasu さんご提供によるものです。oldtakasu さん、どうもありがとうございました。




 
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


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