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第247回

危機時に必要な朝令暮改を実現する

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



2023年の4月を迎え、新年度がスタートした企業が少なくないでしょう。「2年以上も続いたコロナ禍の影響を払拭すべく、気持ちを新たに取り組むことにした」と考える経営者も多いと思います。そのような経営者から時折聞くのが、「方針を立てて実行に移してみたが、思ったようには実行できず、期待した成果も得られない。このため方針を変えざるを得なくなったのだが、従業員から『朝令暮改ではないか、もう指示には従えない』と反旗を翻されてしまった。どうすれば良いのか?」という切実な悩みです。今日はこの点を、考えていきます。



危機時に生じがちな朝令暮改

2019年までは平穏・安定的に事業を行ってきた企業も、2020年のコロナ禍以降、事業環境の劇的変化に見舞われています。東京の観光地にほど近い、ビジネスビルと住宅が混在する街に立地する和風飲食店はコロナ禍のため、近隣のビジネス街からのお客も、国内の熱烈なファンも、海外からのインバウンド顧客も来店してもらえなくなってしまいました。このため事業再構築補助金を活用して和風飲食店で提供していたメニューを惣菜店として提供できる小売店に事業転換、近隣住民をターゲットにすることでなんとか事業を継続できました。


さりとて事業転換したらすぐに安泰とはいきません。当初は「コロナ禍前は近隣のビジネスパーソンだけでなく、関東一円あるいはもっと遠くからも名指しで来店してくれるファンもいたほど名が知れた店だったので、その料理が自宅で手軽に食べられると知ったら近隣住民は関心を持ってくれるだろう。惣菜としては高級高価なラインナップでポジショニングしよう」と狙いました。確かに新規開業の惣菜店として立ち上がりは早かったのですが、損益分岐点を超える売上はなかなか実現しませんでした。


少しでも売上を増やすためにお客様を観察し、競合の様子を探ってみると、普段使いしてもらうには価格を引き下げ、メニューも和風だけでなく洋風も取り入れた方がリピートされるだろうと考えました。日々メニューを変え、材料まで変えと対応していると、店頭に並ぶ商品は当初とはガラリと変わったという印象です。



朝令暮改はダメなのか?

この企業例について「まさに我が社と同じだ。顧客や競合を観察して少しでも売上増加に繋げる工夫をすると、どんどん新しいアイデアを試していかなければならない。しかしこうすると負担を強いられた従業員から『朝令暮改だ!』と反対が起きてしまう。どうしたものか」とお感じになっている経営者は多いことでしょう。


ではどうしたら良いのか?少なからぬ企業は混乱や反対等を避けるため「既存商品の味を改善し、価格を下げよう」と考えるでしょう。これは一つの目標に向かって絶えず改善していくPDCAアプローチです。


一方で、この惣菜店がとったのは「OODAアプローチ」です。OODAとは「Observe(観察)」、「Orient(方向づけ)」、「Decide(意思決定)」そして「Act(行動)」の頭文字による造語で、方向性を一つに定めず、状況に応じて最適な方向性・対応を選ぼうとするアプローチです。OODAは変化の速いVUCA(Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguityの頭文字を取った造語。社会やビジネス等の未来予測が難しい状況を示す)時代で強みを発揮する手法と言われています。VUCA時代に事業を行うには試行錯誤し、反応を感知して適切な方向性・対応方法を探る必要があるからです。このように考えると惣菜店の対応方法は間違いではなく、逆に時代に適しているさえ考えられます。



経営理念で朝令暮改に「芯」を込める

「しかし従業員から朝令暮改と謗られるのでは実行できない。」この事態に、OODAに「芯」を込めることで対応できるかも知れません。経営理念を定め、OODAをその実現に向けた取組と位置付けることで「究極目標・目的を実現するため、頻繁な方針変更も敢えて行う」と示すのです。


「なるほど、経営理念を掲げることで従業員がOODAに取り組んでくれるなら光明が差してくる。しかし我が社はどんな理念を掲げ、どのようにしてOODAに取り組んでいけば良いのか?一人で考えるのは難しい。誰かと相談したい」と思われるなら、地域の「よろず支援拠点」あるいは取引金融機関などにご相談ください。StrateCutionsでもご相談に乗っています。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。


<印刷版のダウンロードはこちらから>





なお、冒頭の写真は 写真AC から 紺色らいおん さんご提供によるものです。 紺色らいおん さん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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