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第238回

事業再構築補助金活用での資金調達難

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 



年末を迎え、今年のまとめとして事業再構築補助金について考えているところです。前回は、申請をしても採択されない問題について考えました。事業再構築によって売上をあげ、利益を実現していく構図が上手く描けていない計画書、あるいは審査員に納得してもらえない計画書は、採択される可能性が極めて低いようです。今回はその次の段階、採択はされているがその実行に係る資金(つなぎ資金)を金融機関から借りることができない現象について考えてみます。



つなぎ資金が調達できない理由

事業再構築補助金は採択されたけれど、つなぎ資金は調達できない企業を拝見すると、原因として大きく2つ挙げられます。


第1は、日頃から金融機関と関係性を築いていない(借入経験がない)ことが挙げられます。事業再構築補助金の対象になるのは「これまで手掛けていない分野への進出など、斬新な策を行うための費用」で、採択を受けた企業の多くは今までとは異なる事業への転換(転業)などを計画に盛り込んでいるでしょう。一方で転業は、金融機関にとっては「過去の事業を廃業して、新しい事業を立ち上げる」という位置付けです。つなぎ資金の申込みは、不確定要素(リスク)が高い「創業資金」に準じて審査されると考えられます。


この状況でも、つなぎ資金を申し込まれた金融機関が、その企業と長年にわたって融資取引があり「社長は熱心に働き、返済を怠ることはない」あるいは「時流を敏感に察知し、ビジネスに生かしている」、「顧客・従業員との関係性も良好で、新事業でも顧客になってくれる・熱心に働いてくれる」などの感触を持っていれば、前向きに検討してくれる可能性があります。


一方で借入経験がなければ、金融機関はそのような情報はありません。信用保証を申し込まれた信用保証協会も事情は同じです。すると、高リスクが前提の創業資金では、あまり大きな与信は期待できないでしょう。一方で補助金の支援を得て行おうとする事業再構築事業は、比較的多額のプロジェクトが前提でしょう。こうやって両者の歯車がかみ合わず、つなぎ資金の申込みが断られてしまうのです。



収益の時間軸が金融機関と整合しない場合

一方で、今まで関係性を維持していた金融機関からも、つなぎ資金の融資を断られた事例もあります。こちらは、収益の時間軸に問題あることが多いと感じています。事業再構築の取組は、例えば既存事業は整理せず新分野への進出を図るだけでも「新ビジネスを確実に立ち上げる」、「安定軌道に乗せる」、「収益をあげていく」というステップを経て実現していきます。立ち上げステップには多大な費用が掛かり(この支援を補助金に期待する)、安定化ステップでは運転資金が必要となり、収益化ステップになってやっとキャッシュがインフローになるという順序です。よほどの資金的裏付けがなければ、資金繰り破綻のリスクが高い取組ともいえます。


例えば先細りの既存事業のまま営業を続けると2025年末に資金繰りが破綻すると考えられるとしましょう。それを脱するため事業再構築を行うのですが、取組のため資金が必要になるので2024年末までしか資金繰りがもたない(短縮化された)とします。にも拘わらず再構築に係る事業から資金繰りがプラスになる収益が得られるのが2025年末ならば、金融機関が「事業再構築補助金のつなぎ資金融資は難しい」と考えても不思議ではありません。事業再構築を実施しても企業が活気を取り戻す前に破綻する可能性が高いと考えざるを得ないからです。


では、どうすれば良いか?事業再構築の立ち上げ・安定化ステップを素早くクリアし、例えば2023年末には再構築事業のキャッシュがインフローになり、2024年夏には会社全体としてのキャッシュがインフローになる計画を立てると、金融機関は納得できるかもしれません。


「金融機関の審査に都合が良いように、数字を書き換えるのだな。」それは全く意味がありません。例えば既存事業の顧客に、新事業でもお得意様になってもらえる戦略を立て、立ち上げ期早々に取り込むアクションプランを立てられるかもしれません。実行可能・実現可能な計画が金融機関の納得を引き出すだけでなく、自社の事業の早期確立に貢献します。「そのような計画を立てるにあたって、誰かと相談したい」と思われるなら、地域の「よろず支援拠点」あるいは取引金融機関などにご相談ください。StrateCutionsでもご相談に乗っています。




本コラムの印刷版を用意しています

本コラムでは、印刷版を用意しています。印刷版はA4用紙一枚にまとまっているのでとても読みやすくなっています。印刷版を利用して、是非、資金調達する方法をしっかりと学んでみてください。

<印刷版のダウンロードはこちらから>





なお、冒頭の写真は 写真AC から craftbeermania さんご提供によるものです。craftbeermania さん、どうもありがとうございました。


 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。


Webサイト:StrateCutions

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